芸術療法のエビデンスと運動療法としてのヨガ①

当クリニックの前院長 今川正樹が提唱した『芸術療法』について説明させていただきます。芸術療法その目的は、「海馬の可塑性:成体海馬神経新生(AHN)」にあります。詳しく説明しますと、「海馬」は、学習・記憶、空間認知機能を担う脳部位です。特に歯状回では生涯にわたり新しい神経細胞が生まれる(神経新生)など、他の脳部位とは一線を画しています。Cajalの提唱(1928)以来、成体の脳の神経細胞は増殖しないと考えられてきましたが、1965年のAltmanの仮説を証明するGageらの研究でヒトの海馬歯状回、脳側室下帯においても神経新生が起こると報告されました。海馬で新たに生まれた神経細胞は増殖、分化、生存期を経て新たに神経ネットワークに組み込まれ記憶形成に関するなど重要な役割を果たすと考えられています。これを「海馬の可塑性:成体海馬神経新生(AHN)」といいます。

このAHNは加齢やストレスにより減少し、認知症やうつ病を招くとされています。AHNは、運動や豊かな環境、ストレスの少ない精神状態、抗うつ薬などで促進されます。うつ病治療においては、低下したAHN改善を標的とした治療薬の開発が進んでいますが、認知症治療においては、先日このブログ「アルツハイマー病の新薬について」でご紹介したエーザイの新薬の記事にあるように、脳内のアミロイドβを減少させることが主眼で、AHNについての効果は不十分、不透明です。ですから当クリニックでは、非薬物療法である「芸術療法」に取り組んでいます。

そのうちの一つが、「季節に沿ったお題を出し、絵と文章もしくは俳句などを作成いただく」ことになります。認知機能において重要な見当識(時間、場所)を意識したうえでいわゆる「絵日記」を書いていただきそれについてお話しすることで、童心に返っていただき、心豊かな様態を再現し、AHNの促進を期待しています。これは、心理検査の一つであるバウムテストの結果が改善している患者様が大勢いらっしゃることからも効果を期待できると愚考しております。ただ、やはり絵日記のような創造性が高いものは苦手になっている患者様も大勢いらっしゃいます。思い返せば、筆者も夏休みの宿題の絵日記はいつも後回しにしておりました。(筆者に絵心がないことも大いに関係しますが。)そういった方のお気持ちが非常にわかるので、最近取り組んでおりますのが「塗り絵」をしていただく「芸術療法」です。

 

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