芸術療法のエビデンスと運動療法としてのヨガ②

こちらに関しましては、杏林大学医学部精神神経科教授の古賀良彦氏が

御講演された内容をまとめた記事から一部抜粋させていただきます。

ぬり絵は下絵に色をぬるという、一見するとシンプルな遊びだが、実は意外に広範囲の脳を使う。例えば下絵を眺めているときは、視覚野のある後頭葉や、色や形の記憶が保存されている側頭葉を使い、「何色でぬるか」「どこからぬるか」など、作業プランを立てているときは、前頭葉にある前頭連合野が働く。もちろん実際に色をぬるときは、同じく前頭葉にある運動野によって、手の動きがコントロールされる。
古賀氏はこのことを裏づけるデータとして、脳が活動状態にあるときに出るP300という脳波に着目した。そしてぬり絵をする前とした後では、ぬり絵をした後の方が、脳のより広い範囲でP300が出現することを明らかにし、あらゆる世代のストレス対策や脳のアンチエイジングにぬり絵を勧めている。

加えて古賀氏は、NIRS(近赤外線スペクトロスコピー)という、脳血流中の酸化ヘモグロビン濃度を計測する特殊な装置を用いて、ぬり絵をしている最中の脳の活性状態も捉えている。酸素は血液によって運搬されるが、血液中では酸素は酸化ヘモグロビンの形で存在している。脳が活発に活動している部分ほど、大量の酸素を必要とするので、酸化ヘモグロビンを多く含んだ血液が集まってくるが、NIRSではその集まり具合を測定する。
ぬり絵開始直後から30秒後までのNIRSの画像を見ると(中略)ここでは主に前頭部を中心に見ているが、ぬり絵を始めてわずか15秒後には脳に変化が現れ、30秒後には酸化ヘモグロビンが集まっている部分、すなわち脳が活発に働いて、酸素をよく消費している部分がかなり増えている。古賀氏は認知症の人にぬり絵を継続的に行ってもらうことで、記憶や認知といった脳の高次機能に、どのような変化があるかも調べている。
実験では東京都内の病院に入院中の中程度~重度の認知症患者6名に、1ヵ月間、週に4回程度ぬり絵をしてもらい、ぬり絵を始める前と1ヵ月後に、認知症の診断に一般的に用いられる知能検査「改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)」を実施した。その結果、被験者の平均得点はぬり絵開始前は12点だったのに対し、1ヵ月後の検査では14点に上がっていた。これは統計学的な有意差には及ばないがぬり絵を行わなかったグループ(同じく中程度~重度の認知症患者)では、1ヵ月の間に13点から12点へと得点が低下し、認知症の症状が進行していることがうかがえる。古賀氏は「病院など外部からの刺激が少なくなりがちな環境では、どうしても認知症が進行してしまうケースが多いが、1ヵ月間ぬり絵をしただけで、このような変化が見られたのには非常に驚いている。認知症に対する治療法が確立されていない現在、認知症患者に対するぬり絵の可能性は、十分に期待できる」とその効果を高く評価している。
また被験者のワーキングメモリも改善された。ワーキングメモリは、人間の知的活動のベースとなる重要な脳の機能で、例えば人が何かを考えて行動しようとするとき、過去の記憶の中から必要な記憶だけを引き出して、参照したり判断したりするのは、このワーキングメモリの働きである。実験では「知っている野菜の名前をできるだけ多く言ってください」という問いに対し、野菜の名前をいくつ答えられるかを調べた。ぬり絵を行ったグループは、ぬり絵を始める前の回答数は6個以下で、1点にも満たなかったのに対し、ぬり絵を1ヵ月間行った後では1. 85点と得点が伸びていた。一方、ぬり絵を行わなかったグループは、1ヵ月間でワーキングメモリが低下した。
古賀氏御本人もおっしゃっているように、結果に有意差がないですが、

ぬり絵の一番お勧めできるところは、ぬり絵そのものの効果に加え、準備や片づけが簡単なぬり絵は、負担が少なく毎日続けやすい。古賀氏は「脳のアンチエイジングは『毎日続けること』がとても大切。その点でもぬり絵は奨励できるとされています。

 

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