今だからこそ読んでほしい、認知症専門医がおススメする名著④ 『アルツハイマー病 真実と終焉』

今回も、認知症専門医がおススメする、デール・ブレデセン氏の著書、『アルツハイマー病 真実と終焉』(ソシム、監修者:白澤卓二氏・訳者:山口茜氏)。その中から一部を抜粋してご紹介いたします。

何度か当ブログでもエッセンスをお伝えしていましたが、この機会に、一度拝読頂ければ幸甚です。少しでも見やすく、理解しやすいように時折箸休め的な挿絵を入れております。原著にはない挿絵なのでご注意ください。

最も強力な危険因子「ApoE4(アポイーフォー)」

また本書が未来の分かれ目となる、非常に特殊な、第2のグループがいる。

それは、ApoE4(アポイーフォー)と呼ばれる遺伝子多型(対立遺伝子:アレル)を持つ人々だ(ApoEはアポリポタンパクEの短縮形。アポリポタンパクは脂質、例えば脂肪を運ぶタンパク質)。

ApoE4は、最も強力なアルツハイマー病の遺伝的危険因子として知られ、その保有者は、やがて自分に訪れると聞かされてきた悲惨な末路と、健やかで喜びに満ちた未来の分岐点に立っている。

ApoE4をひとつ保有している(つまり、片方の親から受け継いだ)場合は、アルツハイマー病にかかる生涯リスクは30%に上昇し、2つ保有していれば(つまり、両方の親から複製した遺伝子を受け継いだ人では)、優に50%以上になる(論文により50〜90%と諸説ある)。

これに対し、このアレルがひとつもない人のリスクは、わずか9%である。そしてApoE4を持つ大部分の人は、DNAに潜むこの時限爆弾について何も知らない。通常は、アルツハイマー病が発病して遺伝子検査を受け、初めて知ることになる。それは確かに仕方のないことだ。アルツハイマー病に予防法や治療法がない限り、たいていの人は、ApoEの状況を知りたいとは思わないだろう。

事実、ノーベル賞受賞者のジェームズ・ワトソン博士(DNA二重らせん構造の共同発見者)が、2007年に自身のゲノム配列を解析しているが、ApoE4を保有しているかどうかは聞きたくないと語っている。何も打つ手がないのに、なぜ衝撃的な知らせに身をさらさねばならないというのか、と。

しかし、今やApoE4の保有者ですら、アルツハイマー病のリスクを減らすプログラムがあるのだ。

もっと多くの人が遺伝子検査を行ってApoEの状況を判定し、症状が出るずっと以前から予防プログラムを始めていれば、認知症の有病率を劇的に減らす可能性がある。

私の切なる願いはまさにこれが起きることであり、本書で、特にApoE4保有者の方々には、状況は絶望的ではないと知っていただきたい。ApoE4を保有していたとしてもアルツハイマー病の予防対策を講じて、低下した認知機能を回復できるのだ。

「40歳を超えた人々」にも認知機能の低下の可能性が…

さらに本書で人生が変わると思う、おそらくあまり知られていないグループがいる。

40歳を超えたすべての人たちだ。

歳を重ねるにつれ最も心配になるのは、認識能力を失うことだ(そう、脳の老化についていえば、下り坂はだいたい40歳から始まる)。

愛する人からの手紙を読んで、理解すること。映画を観たり、本を読み、筋書をたどること。身の回りの出来事を認識し、世界の中で自分の居場所を意識すること。他人に頼って食事や着替えを行い、移動させてもらったり風呂に入れてもらうといった、単なる原形質の塊にはならず、日常の基本的な生活機能を果たせること。人生の出来事と、それにかかわる大切な人々を記憶にとどめること。こうした、私たちを人間として定義するものを失えば、意味のある人生を生きるという、人間としてのアイデンティティーそのものが消えてなくなってしまう。

そのようなことが将来に潜んでいるかもしれない、と強く意識している方全員にお知らせしよう。息を大きく吸って、実感してほしい。

認知機能の低下は、少なくともほとんどの人が対処できる。早い段階にいる人はなおさらだ。幸運なことに、私たちは人間らしさをこれっぽっちも失わずにすむ。これまでに何を聞かされていたとしても、アルツハイマー病は絶望的でも回復不可能でもない。その逆だ。初めて、アルツハイマー病が希望と一体になったのだ。

理由は、ある根本的な発見にある。

アルツハイマー病は、脳で行われるはずのないことが起きている結果ではない。細胞の増殖が制御不能になってがんが生じたり、アテローム性のプラークが血管に詰まって心臓病が起こるといったこととは違うのだ。アルツハイマー病は、脳の拡張シナプスネットワークに本来備わっている健全な退縮プログラムから生じる。しかし、このプログラムは暴れまわっているような状態だ。

1940年のクラシック映画『ファンタジア』の『魔法使いの弟子』の部分で、ミッキーマウスが箒(ほうき)に魔法をかけて、水の入ったバケツを運ばせようとすると、やがて箒(ほうき)が暴れまわる事態になる。これと同じように、アルツハイマー病では、箒(ほうき)ではないが、正常な脳の清掃プロセスがおかしくなっているのだ。

当院ではここにとりあげたAPOE4遺伝子を生まれつきもっているかわかる遺伝子検査を希望の方には実施しています。保険診療外検査になります。詳しくは当クリニックまでご連絡ください。詳しい説明をさせて頂きます。

今回も御一読いただき誠にありがとうございました。

文献1)デール・ブレデセン『アルツハイマー病 真実と終焉』

(ソシム、監修者:白澤卓二氏・訳者:山口茜氏)

2)大熊 輝雄:現代臨床精神医学第12版 金原出版株式会社

3)幻冬舎 GOLD ONLINE 新刊書籍を試し読み

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