精神科

うつ病

うつ病ってどんな病気?

うつ病とは?

うつ病は、①憂うつな気分、②気力がない、③考えがまとまらない、などといった症状が2週間以上ほとんど毎日続く病気です。これらの症状に加えて不眠、食欲の低下、体がだるい、肩が凝る、頭が重たいといった身体の症状が現れることが多いです。体調不良を主訴に病院を受診され、血液検査や心電図、脳のMRIなどの検査を受けても大きな異常が見つからないことが普通です。その結果、異常なしと判断され、適切な治療を受けることなく病気が長引いてしまうこともあるので注意が必要です。また生涯で1回だけかかる場合と、2回以上繰り返す場合があります。

うつ病の患者さんはどのくらいいるの?

一生涯でうつ症状が比較的重い大うつ病性障害にかかる率は約15%といわれています(米国国立精神衛生研究所の調査)。女性は男性よりもかかりやすく、おおよそ25%にもなります。つまり非常に多い病気だといって間違いありません。ところが先ほど述べたように内科的な検査では異常が見つからないため、気のせいであるとされたり、病気ではないと考えられたり、周囲の理解を得るのが難しいことも確かです。また大うつ病性障害にかかる平均年齢はおおよそ40歳くらいで、すべての患者さんの約半分は20歳から50歳の間に発病しています。

日本ではうつ病は、100人に約6人がかかる病気です

日本では、100人に約6人が生涯のうちにうつ病を経験しているという調査結果があります。また、女性の方が男性よりも1.6倍くらい多いことが知られています。女性では、ライフステージに応じて、妊娠や出産、更年期と関連の深いうつ状態やうつ病などに注意が必要となります。

うつ病は気分障害の一つです

うつ病は、気分障害の一つです。一日中気分が落ち込んでいる、何をしても楽しめないといった精神症状とともに、眠れない、食欲がない、疲れやすいといった身体症状が現れ、日常生活に大きな支障が生じている場合、うつ病の可能性があります。気分障害には、うつ病の他に、うつ病との鑑別が必要な双極性障害(躁うつ病)などがあります。うつ病ではうつ状態だけがみられますが、双極性障害はうつ状態と躁状態(軽躁状態)を繰り返す病気です。うつ病と双極性障害とでは治療法が大きく異なりますので専門家による判断が必要です。

発症の原因は今のところわかっていません

発症の原因は、正確にはよくわかっていませんが、感情や意欲を司る脳の働きに何らかの不調が生じているものと考えられています。うつ病の背景には、精神的ストレスや身体的ストレスなどが指摘されることが多いですが、辛い体験や悲しい出来事のみならず、結婚や進学、就職、引越しなどといった嬉しい出来事の後にも発症することがあります。なお、体の病気や内科治療薬が原因となってうつ状態が生じることもあるので注意が必要です。

脳のなかで起こっていること

脳はたくさんの神経細胞が互いに連絡を取りながら活動しています。1つの神経細胞の中は電気信号が伝わります。一方ある神経細胞と別の神経細胞の隙間はシナプスと呼ばれ、この間の連絡は神経伝達物質とよばれるアミン(アミノ酸からできている)によってなされます。うつ病の患者さんでは、このアミンのうち、ノルエピネフリンとセロトニンの量の調節が何らかの原因でスムーズに行かないのではないかと考えられています。その他、大脳視床下部から下垂体、下垂体から副腎や甲状腺に至る経路(神経内分泌系)にも何らかの異常があるのではないかと考えられています。

うつ病にかかりやすいタイプってあるの?

ストレスや過労などが引き金になって病気になりやすいことから、日常の生活でこれらを抱え込んでしまうタイプがうつ病になりやすいのではないかと思われます。以下のような方々は要注意です。物事に打ち込むのも大切ですが、必ず休憩をとるようにしましょう。

うつ病になりやすいタイプ
  • まじめで几帳面、完全主義で仕事を人任せにできない
  • 凝り性で融通が利かない、人からの評価がとても気になる

逆にこれらの傾向からうつ病にかかりにくくするヒントを得ることができます。うつ病にならないためにどんなに忙しくても必ず休憩をとること、気分転換をする手段を身に着けること(散歩や体操、カラオケなど気楽にできるもの)などです。

うつ病の症状は?

うつ病でなくてもさまざまな身体の病気で“うつ症状”が出ることがあります。例えばインフルエンザで高熱が出ている時、誰も明るい気分になれません。ですから、まず最初に一般的な診察と検査を行って原因となる身体の病気がないことを確認します。その上で、以下の9つのうち5つ以上(1か2が含まれること)が2週間以上続いており、他の精神疾患でない場合うつ病と診断されます。


①憂うつな気分がほとんど毎日続いている

②何に対しても関心がない、喜びも感じられない気分がほとんど毎日続いている

③食欲がなくなり、体重が減る。逆に食欲が増進し、体重が増加する

④寝つきが悪い、眠っても途中で目が覚めてしまう、逆に眠りすぎる

⑤焦ってイライラしたり、元気がなくじっとしている

⑥疲れやすくなったり、気力が減退する

⑦自分を何の価値もない人間だと思ったり、とても罪深い人間だと思い込んだりする

⑧思考力や集中力がなくなり、何かを判断したり決断したりすることができない

⑨死について繰り返して考える。自殺したいと繰り返し思ったり、どうやって死のうかと考えたりする

気分が落ち込む、楽しめない、悪いほうにばかり考えてしまう、一日中気分が落ち込んでいる、何をしても楽しめないといった自覚症状が続いている場合、うつ病の可能性があります。気分が落ち込むような明らかな原因が思い当たらないことも少なくありません。また、原因と思われる問題を解決しても気分が回復せず、日常の生活に大きな支障が生じることがあります。うつ状態では、物事の捉え方が否定的になります。そのため、自分がダメな人間だと感じてしまうこともあります。そして、普段なら乗り越えられる問題も、実際よりもつらく感じてしまうという悪循環が起きてしまいます。イライラしたり、焦る気持ちも出てきます。重症になると「死んでしまいたいほどの辛い気持ち」が現れることもあります。うつ病かなと思ったら、早めに専門家に相談することが大切です。

周囲の人にもわかるうつ病のサイン

うつ病では、自分が感じる気分の変化だけでなく、周囲からみてわかる変化もあります。周りの人が「いつもと違う」こんな変化に気づいたら、もしかしたら本人はうつ状態で苦しんでいるのかもしれません。

  • 表情が暗い
  • 自分を責めてばかりいる
  • 涙もろくなった
  • 反応が遅い
  • 落ち着かない
  • 飲酒量が増える

身体に現れるうつ病のサイン

うつ病の精神症状に気づく前に、身体の不調が現れることもあります。

  • 食欲がない
  • 性欲がない
  • 眠れない、過度に寝てしまう
  • 体がだるい、疲れやすい
  • 頭痛や肩こり
  • 動悸
  • 胃の不快感、便秘や下痢
  • めまい
  • 口が渇く
うつ病の治療法
うつ病は、しっかりと休養をとることが大切です

うつ病の治療を考える前に、まず、心身の休養がしっかりとれるように環境を整えることが大事です。職場や学校から離れ自宅で過ごす、場合によっては、入院環境へ身を委ねることにより、大きく症状が軽減することもあります。精神的ストレスや身体的ストレスから離れた環境で過ごすことは、その後の再発予防にも重要です。うつ病の治療には、医薬品による治療(薬物療法)と、専門家との対話を通して進める治療(精神療法)があります。また、散歩などの軽い有酸素運動(運動療法)がうつ症状を軽減させることが知られています。

休養は「頑張りすぎる」うつ病の患者さんの特性を考慮した治療方法のひとつ

休養は疲れたから休むという意味以上に、うつ病の方がもちやすい「限界を超えてもがんばってしまう」という特性を考慮に入れた重要なひとつの治療なのです。うつ症状が強い時期にうつ病になった原因を、本人が深く考えるのは避けた方がよいでしょう。うつ病になると何事も否定的に考えてしまうので、よい解決法が見つかるよりも、自己否定、悲観的考えを強化してしまう危険性が高いからです。休養を優先しましょう。

薬物療法

主に使われる治療薬は抗うつ薬です。抗うつ薬は、継続して服用する必要があり、服用を開始してもすぐに効果が現れません。主治医の指示に従い、自分の判断で薬の量を増やしたり減らしたり中断したりせず、焦らずに服薬を継続してください。副作用を最小限にするためにも、主治医との良いコミュニケーションが大事です。また、うつ病では様々な身体の症状も現れますので、その症状に応じた治療薬を併用することもあります。

自殺を防ぐ

うつ病による自殺は多く、自殺を防ぐことはうつ病の治療過程で大変重要なことです。典型的なうつ病の方は、他人を責めずに自分を責め、それが自殺の動機となりえます。また疲れきっている現状から逃避したい、消えて逃れたいと考えることもあります。急性期だけではなく活動性が戻り始めた回復期でも自殺防止は重要な課題で、周囲の協力が必要です。急性期や前期回復期のうつ病の方は、まだ考えが混乱していることがしばしばあります。ですから絶対に自殺をしないという明確な約束は自殺防止に有用なのです。自殺企図があった場合や自殺の危険性がきわめて高い場合は、精神科の閉鎖病棟へ入院することもあります。入院によって100%自殺が防止されるわけではありませんが、自宅にいるよりは危険性ははるかに小さくなります。

精神療法

精神療法には、支持的精神療法と呼ばれる基本的な治療法に加えて、認知行動療法や対人関係療法などのより専門的な治療法があります。

その他の治療法

その他のうつ病の専門的治療法として、高照度光療法、修正型電気けいれん療法、経頭蓋磁気刺激法などが用いられる場合もあります。

大事なポイント!重要な判断は延期

うつ病の方は、「会社にとって自分はまったく不必要な人間だ」「私は夫に迷惑ばかりかけるだめな妻だ」と、実際以上にネガティブに感じてしまいがちです。立派な実績があり辞める必要のない会社を辞めてしまったり、離婚を決断してしまったりすることがあります。せっかくうつ病が回復しかけても、早まった決断をしたために悩み後悔して、回復が遅れるという状況になってしまいます。

十分回復するまで、人生に重要な決断は可

能なかぎり延期するようにします。うつ病は、一部の難治なものを除くと、回復する可能性の高い病気です。脳に変形や変性などの器質的な後遺症を残すこともありません。しかし、自殺や自殺を図ったことによる後遺症や、早まってしてしまった大きな決断は、その後の人生に長く影響を与え続けます。このような状況にならないように、周囲の人も注意、協力することが大切です。

治療の不安や疑問は主治医に相談しましょう

治療を進めるうえで不安や悩みがあれば、主治医に相談しましょう。主治医と何でも相談できる関係をもつことはうつ病治療の第一歩です。場合によっては、主治医以外の専門家の意見を聞くことも可能です。これをセカンドオピニオンといいます。複数の専門家の意見を聞くことが、納得のいく治療を受ける手だてになることもあります。

精神科

  1. アルツハイマー病型認知症

    アルツハイマー病型認知症

    日本人で一番多い認知症です。脳が徐々に萎縮し直前の事が思い出せない等から始まります。来年度新薬の発売が期待されています。

  2. 脳血管性認知症

    脳血管性認知症

    日本人で二番目に多く、高血圧、糖尿病、脂質異常等の生活習慣の乱れ等が原因とされ、脳の血管の異常から起こる認知症です。

  3. レビー小体型認知症

    レビー小体型認知症

    日本人で三番目に多い認知症で、一般的な物忘れに加えて、特徴的な症状は、①幻視、②注意・認知機能の変動、③パーキンソニズムです。

  4. 前頭側頭型認知症

    前頭側頭型認知症

    アルツハイマー病と同じ神経変性疾患ですが、脳の前頭葉や側頭葉に限局した萎縮がみられます。認知機能の障害よりも行動面の問題が目立ち、家族による介護が困難となります。

  5. うつ病

    うつ病

    ①憂うつな気分②気力がない③考えがまとまらない等の症状が2週間以上ほぼ毎日続く病気です。不眠、頭が重たい等の症状もでます。

  6. 適応障害

    適応障害

    日常生活の中で起こった出来事や環境に対してうまく対処できず、心身の症状で社会生活に支障をきたす状態(不登校、会社に行けないなど)、ストレスの原因が明確である事が重要です。

  7. 発達障害

    発達障害

    注意欠如・多動症(ADHD)、広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)、コミュニケーション 障害(吃音)、学習障害、チック症、などが含まれます。不登校の原因で最も多いと考えられています。

  8. 統合失調症

    統合失調症

    統合失調症の症状は、①陽性症状(幻覚・妄想、自我障害)、② 陰性症状(欠陥症状)、③ 認知障害の 3 種類になります。いずれか 1、2 種類の症状だけの人もいます。

  9. 不安

    不安

    不安が強く起こる疾患は多種ありますが、ここでは頻度の多い、①全般性不安障害②社会不安障害をご説明します。パニック障害(広場恐怖)は心療内科のページで詳しく説明いたします。

  10. 不眠症・睡眠障害

    不眠症・睡眠障害

    睡眠障害は、不眠症状のあるもの、睡眠中に呼吸の障害がみられるもの、過眠症状のあるもの、睡眠覚醒リズムの障害があるもの、睡眠中に異常行動を起こすもの、などに区分けされています。

  11. アルコール依存症

    アルコール依存症

    依存症は、日々の生活や健康、大切な人間関係や仕事などに悪影響を及ぼしているにも関わらず、特定の物質や行動をコントロールできない状態です。