精神科

適応障害

適応障害ってどんな病気?

適応障害とは?

適応障害は、精神疾患の中のストレス障害の一種で、多くは日常で起こるストレス因子が原因になります。ストレスに対応できない不適応反応として、気持ちが落ち込む(うつ)、過度に物事が心配になる(不安)、自暴自棄になるなど普段とは違う行動を起こす(行動障害)などの症状が出てきます。その結果、一般的な日常生活や社会生活、職業・学業的機能において支障をきたす病気です。
日常生活の中で起こった出来事や環境に対してうまく対処できず、心身に様々な症状が現れて社会生活に支障をきたす状態をいうので、ストレスの原因が明確であることが定義上重要となります。

どんなストレスが原因となるの?

例えば仕事や家庭でのトラブル、身体の病気など日常で起きうるストレスが原因の代表になります。職場不適応も適応障害の1つと考えられますが、人間関係、仕事の量・内容、交代制勤務・休憩の有無などの勤務形態、オフィスの環境なども原因となりえます。これらに対する個人の体質・素質による適応能力の違い、私生活の環境なども原因として捉える必要があります。ストレス因子は単一とは限らず、複数が重なっていることもあります。

どんな経過をたどるの?

はっきりと確認できる社会心理的ストレス因子に反応して、そのストレス因子の始まりから1~3カ月以内に、情緒面や行動面の症状が出現します。それらの症状は、ストレス因子と接した時に予測されるものをはるかに超えた苦痛の反応、もしくは社会生活、職業や学業的機能における著しい障害です。一方でストレス因子(または引き起こされた結果)が消失すると、6カ月以内に症状が改善します。ストレス要因が消失せず長期にわたって続く場合には、症状も6カ月以上持続します。多くの精神障害、例えば気分障害や不安障害なども、関与の程度はさまざまですが発症にストレスが関わっていることはよくあることです。しかしすでにそれらの診断基準を満たしている場合は、適応障害とはされません。また適応障害が、状態の変化に伴いこうした他の精神障害の診断基準を満たせば適応障害の診断は変更されます。こうしたことは日常診療ではしばしば経験されることです。このように他の精神疾患の前触れとして適応障害をきたしている可能性もあります。

適応障害の症状は?

症状はゆううつな気分、不安感、頭痛、不眠など、人によって様々ですが、仕事や学業などを続けたり、対人関係や社会生活を続けることに問題のある状態となります。これらは一般的には正常な人にも現れる症状ですが、適応障害の場合はそれを超えた過敏な状態となります。適応障害には、大きくわけて①情緒的障害と②行為の障害があります。

①情緒的障害


抑うつ気分や涙もろさ、また絶望感などの「抑うつ気分」と、取り越し苦労、心配症など「不安症状」があり、これら両者を伴うものもあります。

②行為の障害


普段と違った行動をとるようになり、社会的規範や、規則を守ることができなくなります。公共性が欠如した、反社会性の行為が認められることもあります。例えば、けんか、家庭内暴力、自傷行為、問題飲酒、無謀運転、責任の不履行などです。学校や会社などでいえば、常習欠勤、遅刻、ひきこもりなどがあります。

もちろん、情緒的障害と行為の障害の両方を伴うことはあります。これらの症状以外にも、社会的な心理ストレス因子に対する不適応反応として頭痛・動悸・眠気などの身体的愁訴がみられることもあります。これらの症状で生活機能の低下や、業績・学力の低下、場合によっては就業・就学そのものが不可能になる場合があります。

どうやって治すの?

適応障害の各症状に対しては、薬を使い症状を和らげることを目指します。同時に原因となっているストレス因子を明らかにしていきます。そのストレス因子に対しての対処法の助言や、周囲の環境調整を行います。

薬物療法

ひどい不安や抑うつ、不眠などに対し、薬を飲んで症状を軽くする事は大切です。対処的に抗不安薬・抗うつ薬・睡眠導入剤などを用います。症状が楽になると、視野が開けストレス因子へ対応する余裕が生まれます。ただ、根本的なストレス因子の解決のための補助的な役割にとどまります。

ストレス因子への対処

仕事や学業上のストレス、本人や近親者の重い病気の告知や看病、経済的な問題、家庭内の夫婦間や親子間の問題など複数のものが重なっていることが多く、話し合ってストレス因子を整理することで問題点がはっきりしてきます。同じ状況にあっても1人1人にかかるストレスが異なるのは大切な点です。ストレス因子が明らかに環境的なこと(環境要因)もありますし、個人のストレスに対する抵抗力の低さ(個人要因)が主な原因となることもあります。環境の調整を図ることが可能な状況であれば、状況の改善には職場の管理者や学校の担任、家族や周囲の関係者への働きかけを行い、ストレスを軽くする具体策を話し合うなどの対策が必要となります。また同時に本人へのカウンセリングを行い、ストレス因子への対処能力を高めたり対処法を考えたりすることも大切です。必ずしもストレス因子は短期間で除去できるとは限りませんので、こうした本人の対処能力を引き出し新しいもののとらえ方ができることは再発や慢性化しないために重要です。

対処のポイント
  • 早めに精神科を受診すること
  • 環境調整を行うこと
  • ストレスへの対処方法を獲得すること
  • ストレスをためない

困難な状況に適応するには、相応のエネルギーが必要です。自身のストレスをかえりみずに、無理に適応しようとしてガス欠にならないことが大切です。気分転換や、適度な休養をとること、相談相手を見つけて話をすることなどで、ストレスをためない上手な工夫が日頃の生活に求められます。

精神科

  1. アルツハイマー病型認知症

    アルツハイマー病型認知症

    日本人で一番多い認知症です。脳が徐々に萎縮し直前の事が思い出せない等から始まります。来年度新薬の発売が期待されています。

  2. 脳血管性認知症

    脳血管性認知症

    日本人で二番目に多く、高血圧、糖尿病、脂質異常等の生活習慣の乱れ等が原因とされ、脳の血管の異常から起こる認知症です。

  3. レビー小体型認知症

    レビー小体型認知症

    日本人で三番目に多い認知症で、一般的な物忘れに加えて、特徴的な症状は、①幻視、②注意・認知機能の変動、③パーキンソニズムです。

  4. 前頭側頭型認知症

    前頭側頭型認知症

    アルツハイマー病と同じ神経変性疾患ですが、脳の前頭葉や側頭葉に限局した萎縮がみられます。認知機能の障害よりも行動面の問題が目立ち、家族による介護が困難となります。

  5. うつ病

    うつ病

    ①憂うつな気分②気力がない③考えがまとまらない等の症状が2週間以上ほぼ毎日続く病気です。不眠、頭が重たい等の症状もでます。

  6. 適応障害

    適応障害

    日常生活の中で起こった出来事や環境に対してうまく対処できず、心身の症状で社会生活に支障をきたす状態(不登校、会社に行けないなど)、ストレスの原因が明確である事が重要です。

  7. 発達障害

    発達障害

    注意欠如・多動症(ADHD)、広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)、コミュニケーション 障害(吃音)、学習障害、チック症、などが含まれます。不登校の原因で最も多いと考えられています。

  8. 統合失調症

    統合失調症

    統合失調症の症状は、①陽性症状(幻覚・妄想、自我障害)、② 陰性症状(欠陥症状)、③ 認知障害の 3 種類になります。いずれか 1、2 種類の症状だけの人もいます。

  9. 不安

    不安

    不安が強く起こる疾患は多種ありますが、ここでは頻度の多い、①全般性不安障害②社会不安障害をご説明します。パニック障害(広場恐怖)は心療内科のページで詳しく説明いたします。

  10. 不眠症・睡眠障害

    不眠症・睡眠障害

    睡眠障害は、不眠症状のあるもの、睡眠中に呼吸の障害がみられるもの、過眠症状のあるもの、睡眠覚醒リズムの障害があるもの、睡眠中に異常行動を起こすもの、などに区分けされています。

  11. アルコール依存症

    アルコール依存症

    依存症は、日々の生活や健康、大切な人間関係や仕事などに悪影響を及ぼしているにも関わらず、特定の物質や行動をコントロールできない状態です。