認知症診療に携わらせていただいて、すごく実感していることの一つが、「お年を召されていくとヒトは、どんどん子供のようになっていき、やがて赤子のようになっていく」ということです。
例えば、アルツハイマー病の初期から、衰えていく日常生活能力を順に記しますと
- 金銭管理
- 一人で買い物
- 新しい場所に行くのが困難
- 料理、食事の用意
- 電話(頻回にする、もしくは電話にでれない)
- 季節にあった服を選べない、着替えが一人でできない
- 入浴を嫌がる
- 排泄のトラブル
もちろん、患者様によって多少のずれはありますが概ね、皆さん同じ経過をたどります。逆にしていくと、赤子から小学生、思春期くらいまでの成長と一致する部分も多く見受けられます。これらを踏まえ筆者の中では、認知症とは単なる短期記憶の障害ではなく、「ヒトが仲間と一緒に暮らしていくために、サルからの進化過程で手に入れた社会性の基盤」が欠落していく疾患という風に愚考しています。
以前にもブログでお話ししましたが、アルツハイマー病の周辺症状、特に易怒性に最近よく使われる抑肝散という漢方薬などは、昔から赤子の夜泣きによく使われていたというのは非常に合点がいくところです。
以上のことから筆者は、軽度認知障害とアルツハイマー病の境界くらいからアルツハイマー病に進行するのを予防するためには、子供時期でいう小学校のような存在が必要ではないかと愚考しております。