胎児が母体から離れ、第一声の鳴き声を発する時、それが初めての肺呼吸であり、胎児ではなく独りの人間として、この地球上に現れた瞬間でもある。その瞬間から新たな人生が始まり、長くて遠い茨の道を歩んでいくのである。
太古の昔、水生動物は酸素の運搬にCu(銅)を利用していた。その後、陸上(植物)における進化が酸素を多く生み出し、酸素の効率を活かす為、水生動物は苦闘の末、陸上動物として陸に這い上がった。進化の過程で、何故このような苦闘を演じることになったのか。それは、陸に上がる為には、Cu(銅)ではなくFe(鉄)を必要としたからである。すなわち、酸素のやり取りは進化の産物である。
さて、周知のことではあるが、私たちの心臓は死ぬまで止まらない。心臓は酸素を運ぶ血液を全身へ送り出す大きな役割を担っている。心臓から送り出された血液は動脈を通り、毛細血管を経て静脈を通り心臓に戻ってくる。血管は動脈と静脈の二つに分類され、動脈は酸素を豊富に含んだ血液を全身へ運ぶための血管であり、一方、静脈は血管の末端で集めた炭酸ガスを心臓へ送り肺に戻す役割を担っている。これらの循環は人も含めて高等動物にとって必要不可欠な仕組みである。
次回は、青年期を過ぎ生命の峠を越えた人の血管(動脈)がどう変化するのか、「動脈硬化」という医学的用語を用いて書いてみたいと思う。
桜咲く青空の一片の雲
2015/3/24 今川 正樹