認知症専門医として20年以上の臨床経験と6000件を超える症例から、認知症の早期発見への手がかりとして、以下の段階を経て軽度認知障害から認知症・アルツハイマー型認知症へ進行していく経過を説明します。
段階A
1. 新しいことへの学習意欲が低下する。
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2. 度忘れが現れはじめる(あまり自覚するほどではない)。
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3. 度忘れの頻度が多くなり、歳のせいかと不安になり始める。
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4. 度忘れが高じて何事においてもミスが増えるが、本人はまさかと否定する。
段階B
1. はっきりと自覚し、自分は忘れっぽくなっていると体感する。
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2. 会社の上司や家族に忘れっぽさを指摘される。
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3. 複雑かつ込み入った学習や情報が頭に入らない。
段階C
この段階で家族や上司も物忘れ外来を受診するよう本人に促す。診察の結果、この段階においては軽度認知障害と診断される方が多い。
一般的には、この段階では「まず心配しなくてもよい、経過をみましょう」と言われるだけです。なぜなら、簡易心理テストやMRIの所見なども、ほぼ正常と診断されるからです。
当院では、提携している病院において、認知症の鑑別診断には必須であるMRIとRIの検査を受けて頂くことになります。脳血流(3D-SSP;大脳表面の血流を表示する)と脳の糖代謝(PETではありません)の所見によると、段階A-2で認知症・アルツハイマー型認知症の方向へ進行する所見が現れます。よって、当院ではこの段階で治療を開始します。治療法としましては、鉄剤とビタミン、コエンザイムQ10の併用治療です。 段階Aの1,2のように早い段階であれば、改善されるケースも多々あります。認知症の診断が下されてからでは、治療効果も低いと経験的に感じています。