うつ病と認知症(特にアルツハイマー病:以下ADと呼称)との関連性は以前から周知のことである。病理学的詳細は今回省略するが、今回は臨床の観点から、うつ病からADに進んでいく過程を具体的に、私見を含め述べてみたい。
当クリニックにうつ病で来院される患者(若年層が多数を占める)の主訴の多くは、体がだるい、何もしたくない、目覚めが悪い等である。通常、このような症状があれば精神科医は「うつ病」と診断するだろう。そして、抗うつ剤を処方し、処方通りに服用していれば症状も改善されるだろうと医師は告げるであろう。ところが、中には薬への反応が悪く、一向に症状が改善されない患者もいる。結果的には病院を転々とする場合が多い。
話は変わるが、私の臨床経験から述べると、ADの患者の中にも、うつ病或いはうつ状態を合併しているケースが多々ある。このような場合、うつ病が先行しているのか、軽度認知障害の極手前にあるのか、鑑別は難しいと考えている。仮に、ADに進んでいく過程にある患者がうつ病と診断され、数年にわたり漫然と抗うつ剤のみ服用していたならば、患者はどうなっていくだろう。知らず知らずの間にADが進行していく恐れもあるだろう。
日本の社会では誰もが様々なストレス(家庭、会社、育児、また食生活、大気汚染、地球温暖化、少子高齢化等)にさらされている。日本では、うつ病とADがマスメディアに近年大きく取り上げられている。ストレス社会が生み出したうつ病とADは前述の通り深い関連性がある。とりわけ、患者の気質がこれらの疾患の根幹であろうと、患者を診ながら感じることがある。
夏の高校野球のはつらつさ 2013/8/18
今川正樹