今回は認知症予防についての最新のエビデンスをお伝えしたいと思います。当クリニック認知症専門外来の質問、第二位になります。2019年に世界保健機関(WHO)は認知症と認知機能を予防するための具体的な介入方法をまとめた初のガイドラインの公開を開始した。
認知症リスクは生活習慣改善により減らせるとして、WHOは各国に対応を求めている。
新しいガイドラインによると、運動の習慣化、禁煙、アルコール摂取の抑制、健康的な食事、血圧・コレステロール・血糖値のコントロールにより、認知症の発症リスクを減らすことができる。身体にとって良いことは脳にとっても良いことが示されている。
「今後30年間で、世界の認知症の有病者数は3倍に増加すると予測されています。認知症のリスクを減らすために、できることを今すぐ実行すべきです」と、WHO局長のテドロス アダノム氏は言う。
認知症は、アルツハイマー病や脳卒中など、脳に影響を与えるさまざまな病気や傷害から生じ、記憶、思考、行動、理解、計算、学習能力、言語活動、判断に影響を与える。
認知症は、世界中で5,000万人が罹患しており、毎年約1,000万例が新たに発症している。認知症を発症し、脳がダメージを受けてしまうと、元の状態に戻すのは多くの場合で困難だ。
患者だけでなく社会が負う経済的負担も大きく、認知症による社会的費用の損失は2030年までに年間220兆円に膨れ上がると予想されている。公衆衛生上の問題として急速に拡大している。
食事と運動を改善すれば認知症リスクは減らせる
WHOが公開している「認知症と認知機能低下のリスクを減らすためのWHOガイドライン」の主な内容は以下の通り――。
運動・身体活動には認知機能低下を予防する効果がある (推奨グレード:強)
65歳以上の成人は、週に合計150分以上の中強度の有酸素運動をするか、週に合計75分以上の強度の高い活発な運動をするべき。有酸素運動は10分以上続けて行う必要がある。
栄養バランスの良い健康的な食事はすべての成人に勧められる (推奨グレード:条件付き)
野菜や果物、雑穀や玄米などの全粒穀類、マメ類、ナッツ類を十分に食べ、野菜と果物は1日に400g以上を食べることが推奨される。
1日に2,000kcalを摂取している人では、糖類の摂取を5%未満に、脂肪の摂取を30%未満に抑える。脂肪の多い牛や豚などの動物性食品を抑え、食塩の摂取量を1日5g未満にするのが理想的。
ということで、まずは、運動と食事の習慣改善が重要ということでした。次回はさらに細かい生活習慣についてお話ししていきたいと思います。
今回も御一読いただき誠にありがとうございました。
文献1)2019年5月30日 生活習慣改善協会
2)大熊 輝雄:現代臨床精神医学第12版 金原出版株式会社