脳血管性認知症とは?
脳血管性認知症は脳に血液を送り込む血管の異常により、脳の一部で血の巡りが悪くなったり出血を起したりした結果、神経細胞が死んでしまうために認知症状が出る病気です。
脳血管性認知症の患者さんはどれぐらいいるの?
現在、認知症の中でアルツハイマー病に次いで第2位の頻度で起きます。アルツハイマー病とあわせて半分以上の認知症の原因となっています。
なぜ脳血管性認知症になるの?
脳に血液を送り込む血管が詰まったり(脳梗塞)、破れて出血したり(脳出血)して起きますが、起きやすい部位があります。アテロームという血管内の沈着物からできた血栓が、血管の細くなった先で詰まることや、血管が固くなって内腔が狭くなることで血液を十分に送れなくなる事(動脈硬化)で起きてきます。ラクナといわれる小さな梗塞巣が広く広がる型(多発梗塞性認知症)、ひどい動脈硬化により広い範囲の神経が徐々に死んでいく型(ビンスワンガー病)、あるいはある特定の部位が脳梗塞になることで起きる型があります。
脳血管障害の症状の特徴は?
脳血管性認知症はまだら状の症状や手足の麻痺が特徴
アルツハイマー病と脳血管性認知症の症状進行の違い
症状があるところとそうでないところがある。
麻痺
手や足などに神経症状がある。
脳血管性認知症の治療は?
脳血管性認知症は何よりも基礎疾患(高血圧、糖尿病など)を治療し、脳血管性障害を予防することが大事です。二次予防としてさらなる脳血管性障害を起こさぬよう、抗血小板薬と抗凝固薬が用いられます。また、薬物治療と同時に症状の進行を少しでも抑えるためにリハビリテーションを行います。
脳血管性障害を防ぐ抗血小板薬と抗凝固薬
血液中には血液を固まらせる役割を果たしている血小板がありますが、抗血小板薬は血小板が特に動脈で凝集して脳に血栓ができるのを防ぐ薬です。一方の抗凝固薬は、静脈内での血栓ができるのを防ぐ薬です。脳血管性認知症では、これらの薬を用いることで原因となる脳血管性障害を進行させないことが唯一の治療法になります。
リハビリテーション
障害を可能な限り回復治癒させ、残された能力を最大限に高め、身体的・精神的・社会的にできる限り自立した生活が送れるように行うのがリハビリテーションです。人の機能は使わないと衰えてしまいます(廃用性障害)から、最近では発病後すぐにリハビリテーションを行うことがよいといわれています。リハビリテーションには、さまざまなものがあります。
根気強く、すぐに改善が認められなくても、リハビリテーションを続けることが大切です。
『老化によるもの忘れ』と『認知症によるもの忘れ』の違い
老化によるもの忘れ
- 体験の一部分を忘れる
- 新しい出来事を記憶できる
- ヒントを与えられると思い出せる
- 時間や場所など見当がつく
- 日常生活に支障はない
- もの忘れに対して自覚がある
認知症によるもの忘れ
- 体験全体を忘れる
- 新しい出来事を記憶できない
- ヒントを与えられても思い出せない
- 時間や場所などの見当がつかない
- 日常生活に支障がある
- もの忘れに対して自覚がない
原因疾患の比較
認知症のタイプ | 病変 | 特徴 |
---|---|---|
アルツハイマー病型認知症 | 脳全体が縮む | 全体的に低下 |
脳血管性認知症 | 血管が詰まったところから先の脳細胞にダメージ | 階段状に低下 症状がまばら |
前頭側頭型認知症 | 前頭、側頭葉が縮む | 無頓着 時として非社会性 |
レビー小体型認知症 | 後頭部にも縮みが及ぶ(ものを見る中枢) | パーキンソン症状 幻視 |
認知症を疑う日常生活の変化
- 人に会う約束を忘れる、待ち合わせの時刻や場所をよく間違えるようになった
- スケジュールを立てる、料理を手順どおりに作るなどの段取りや仕事が出来なくなった
- 買い物をしたとき、小銭を出さずにお札で払うことが多くなった
- 同じ献立ばかり続くようになった、味付けが明らかに変わった
- 老人会など近所の人たちとの交流が急に減った
- 大事なものをしまった場所や、しまい込んだこと自体を忘れることが多くなった
- 午前中に話したことを午後には覚えていないことがある
- 孫の名前を時々混同するようになった
- 鍋に火をかけたことを忘れてよく焦がすようになった
- 同じ服を何日も着ているようになった
- 食品など、同じものを何度も買ってくることが増えた
- 理由がはっきりしないのに痩せてきた
- 電話をしたことを忘れ、同じ内容の電話をかけてくるようになった
家族が認知症に気づいた変化の発生頻度
家族が異常に気付いてから受診までの期間は3分の2が2年以上
- 同じことを何度も言ったり聞いたりする(45.7%)
- ものの名前が出てこなくなる(34.3%)
- 置き忘れやしまい忘れが目立った(28.6%)
- 時間や場所の感覚が不確かになった(22.9%)
- 病院からもらった薬の管理ができない(14.3%)
- 以前はあった関心や興味が失われた(14.3%)
※その他、ガス栓の締め忘れ、計算の間違いが多い、怒りっぽくなったなど
認知症の人のために家族ができる10ヶ条
- 見逃すな「あれ、何かおかしい」は大事なサイン。
- 早めに受診を。治る認知症もある。
- 知は力。認知症の正しい知識を身につけよう。
- 介護保険など、サービスを積極的に利用しよう。
- サービスの質を見分ける目を持とう。
- 経験者は知恵の宝庫。いつでも気楽に相談を。
- 今できることを知り、それを大切に。
- 恥じず、隠さず、ネットワークを広げよう。
- 自分を大切に、介護以外の時間を持とう。
- 往年のその人らしい日々を。
(認知症の人と家族の会、2008より引用)