熱中症

今年も梅雨の時期を迎え、気温や湿度の上昇により熱中症のリスクが高まってきました。

認知症(アルツハイマー病)の患者の多くに、低体温症の傾向が観られます。なぜそうなるか。その原因は脳にあり、脳の視床下部の体温調節中枢が巧く働かないことにあると考えています。低体温、水分不足により体感が低下することで熱中症を起こしやすくなるのです。

今年の夏も酷暑と予想されますが、認知症(アルツハイマー病)の患者の介護にあたる方々は、室内の温度調節やこまめな水分補給に気を配り、熱中症に十分に注意してください。

これは簡単ですが、しかしとても重要なことです。

カテゴリー: その他 | コメントする

少子高齢化

厚労省の調査によれば、2025年には65歳以上の5人に1人は認知症になると言われています。今後も高齢化が急速に進む中、認知症患者も予想の域をはるかに越えて急増すると私は考えている。

認知症患者が増加すれば、若い世代に経済的且つ大幅な介護の負担がかかることとなり、日本の将来は方途に迷うことになる。現実的な問題として、介護職の処遇改善が図られなければ、今後益々介護の担い手が減少していくであろう。

少子高齢化の現実が日本の将来の現実像を示している。日本人としてこの現実を厳しく受け止め、将来を見据えて考えていかなければならない。

 

カテゴリー: その他 | コメントする

透明な脳 ~第七章 鉄剤療法の作用機序

かつて脳の神経系統は、血管網のように綿密に繋がっていると考えられていたが、今日では、ニューロンという脳細胞の単位に分かれていて、神経伝達物質の分泌によって必要な部分が連結されることが分かっている。その神経伝達物質の生合成に必要な補酵素がビタミンB6である。また、そのエネルギー源となるのが、コエンザイムQ10とクエン酸第一鉄である。

ちなみにビタミン剤の大量投与は、これまでもアルツハイマー病患者に対して行われてきたが、著しい効果が報告されたことはない。わたしが考案した療法の特徴は、これまで一般的だった投薬に加えて、クエン酸第一鉄を投与することである。

自著「透明な脳」より

カテゴリー: その他 | コメントする

透明な脳 ~第七章 鉄剤療法

アルツハイマー病の治療法はまだ確立されていない。しかし、対処療法となると皆無ではない。わたしのクリニックでは対処療法として鉄剤ビタミンの投与を採用している。これはわたしが開発した療法で、簡単に言えば、ビタミンB6とコエンザイムQ10からなる脳代謝改善薬とクエン酸第一鉄を患者に投与するものである。

この鉄剤療法は、これまで有効な治療法もなければ、症状の改善もなかなか難しいとされてきたアルツハイマー病の新しい療法として注目され、英国の医学雑誌「ランセット」でも紹介された。

自著「透明な脳」より

カテゴリー: その他 | コメントする

介護の実態

テレビや新聞、雑誌などで介護の実態を取り上げた番組や記事が増えている。その理由は、認知症特にアルツハイマー病を根本的に治療する薬が見つからないからである。進行を一時抑えたとしても、最終的には、会話が出来なくなり、独り歩きも不可能となる。そして、床から起き上がることも不可能となる。

認知症が進むと、自然発生的に介護の問題が、家族の上に重く圧し掛かってくる。経済的負担を考慮すると、入所できる介護施設は限られており、更には、重症患者を手厚くサポートする介護施設は少ないと言われている。

結局、最後は家族しかないのである。近年増え続ける老老介護の重くて暗い情景が、忍び寄る超高齢化社会を物語っている。

残された道は超早期発見であろう。「私だけは大丈夫」と過信せず、少しでも体の変化を感じたら、早目に認知症専門医に診てもらうことをすすめる。

カテゴリー: その他 | コメントする

透明な脳 ~第五章 消えていく脳⑦

「老人になると幼児に戻っていく」などとよく言われるが、アルツハイマー病などにより、脳が学習によって身に付けた習慣や知識を失っていくと、きわめて幼稚な行動が現れることがある。精神医学では退行現象と呼ばれるもので、口に指を近づけると、自然にそれをくわえたり、歩行が困難になった時に、背中を丸めて小さくなってしまうといった行動様式がそれである。これらは霊長類のもっとも原始的な姿にほかならない。

記憶が生活のなかでいかに重要な役割を果たしているかを知るには、アルツハイマー病で海馬が機能しなくなった人の行動様式を観察すればことたりる。皮肉なことに、私はアルツハイマー病を研究するなかで、人間がもともと持っている能力の素晴らしさを再認識した。精巧な脳の万能性を見せつけられたとでも言おうか。

自著「透明な脳」より

 

カテゴリー: その他 | コメントする

透明な脳 ~第五章 消えていく脳⑥ アルツハイマー病の症状

アルツハイマー病の症状として、すでに退職して数年経っている人が、ある朝突然ネクタイを締め鞄を下げて会社へ向かうというようなことも珍しくない。会社を退職したという記憶が脳からすっぽりと欠落していて、しかも海馬が機能していない場合こういうことが起こり得る。しかし、家を飛び出してみても会社へ行き着く道順が分からない。結局、道に迷って家族や警察に保護されることになるのである。

さらにアルツハイマー病の症状が進むと、「異食」や「不潔行為」が現れることがある。「異食」というのは、生ゴミや輪ゴムなど、食品ではないものを食べる行為である。「不潔行為」というのは、トイレではないところで大便をして、それを自分の身体に塗ったりする行為である。ここまで病状が進行すれば、家庭での介護は難しい。

アルツハイマー病の症状をあげれば、それだけで一冊の本が書けそうだが、病状のメカニズムは同じだ。すなわち正常な脳が徐々に崩れていくことによって、人間としての特性を失っていくのがこの病気である。記憶力は言うまでもなく、記憶力に依存している思考力や判断力、観察力、想像力など人間の根本的な能力が喪失してしまうのだから、見方によっては非常に残酷な病気だ。

自著「透明な脳」より

カテゴリー: その他 | コメントする

透明な脳 ~第五章 消えていく脳⑤ アルツハイマー病の症状

わたしのクリニックには約200人のアルツハイマー病患者が通院しているが、介護している人から患者たちの症状を聞いてみると、共通した症状があることがわかる。先に述べたように、食事をしたことを忘れる症状はその代表的なものだが、夕方になると「そろそろ自宅へ帰ります」と言い置いて、家を出ていくケースがよくある。自分の家に帰るといっても、現在住んでいるところが自分の家なのだから、ほかに帰る家があるわけではない。

なぜこんな症状があらわれるのか、原因はいろいろ想定できるが、人生の一時期の記憶が欠落しているうえに、海馬の機能障害で、新しい記憶が定着しないことがあげられる。つまり現在住んでいる家が自分の家であるという認識がなくなり、長期記憶として保存されている昔に住んでいた家が、現在の自分の家だと錯覚しているのだ。また、場所や空間を認識する脳の機能が障害をきたしていることがこうした幻覚を引き起こす可能性もある。

自著「透明な脳」より

カテゴリー: その他 | コメントする

透明な脳 ~第五章 消えていく脳④

脳にある海馬が一時的に記憶を蓄えた後、それを長期保存するために、脳のほかの部分へ情報を伝達することはすでに述べたが、海馬が機能を失ったとなると、記憶を一時的に保存することすらできなくなる。

たとえば、アルツハイマー病になって海馬が機能しなくなると、初対面の人は記憶に残らない。そのためその人に再会しても、すでに面識がある人だと分からない。本人はそのことに気付いていないので、会うたびに「はじめまして」と挨拶をしたりする。また、自分が食事したことも忘れて、食後すぐに「ご飯はまだか」と食事を要求することもある。

海馬が損なわれると、脳に入ってきた情報がそこで遮断されてしまうので、新しいことが覚えられない。そのためにある時点から、時間がストップしたような状態になってしまう。実際には海馬が徐々に衰えていくから、それに従って段階的に記憶力も劣っていくことになるのだが、完全に新しいことが記憶できなくなれば、世界そのものの受け止め方が変わってしまう。

自著「透明な脳」より

カテゴリー: その他 | コメントする

外来患者と家族の気持ち

外来のクリニックに患者と家族が来られる場合、家族は患者を診てもらい、且つ患者の診断を知りたい気持ちで来られる。さらに診断された病気が今後良くなるのかどうかを聞いてくる。患者、家族が良くなることを希望するのは当然のことであろう。

私の外来患者の大半は認知症であり、その中でもアルツハイマー病(AD)の患者が多く、患者も家族も進行を抑えて欲しい気持ちで一杯である。特に患者は大きな不安を背負っている。薬だけ出して、悪くなれば歳が歳だけに仕方が無いと言う医師もいるであろう。考えてみれば、改善する疾患とそうでない疾患があるのは仕方のないことである。しかしながら、認知症を専門とする私の臨床経験からすれば、患者も家族も一秒たりとも生きて欲しいという気持ちで一杯である。その根源には命の厳粛さがあるのだろう。

産声をあげた時から自明のことであるが、成長し大人になり、社会の組織で生産的に働き、結婚と同時に次世代に繋ぐ子供を産み育て、この役目を終えると老化の途を歩むことであろう。これが自然界の大原則であって、日本語の言う寿命であろうと私は考えている。

ADの患者とその家族、さらに専門の医師、看護師、介護やサポートを担う者が連携し、この病に立ち向かうことが重要だろう。

 

カテゴリー: その他 | コメントする