アドラー心理学 III~劣等感は成長のエネルギー~

今回はまず劣等感についてです。劣等感には、 「持って良い劣等感」と「悪い劣等感」があるとアドラー心理学では考えます。そのうえで、「劣等感を味方につければ自分を成長させるきっかけになる」としています。ただ、劣等感をこじらせると肝心な時に課題にきちんと向き合えず、逃げてしまい、さらに落ち込み負のスパイラルにはいってしまう恐れもあります。つまり、「劣等感は付き合い方次第でできるだけ味方につけよう」と考えています。 そこで、アドラーは普段我々が何気なく使っている「劣等感」という言葉を三種類にわけて考えています。

① 劣等性 器官劣等性ともいわれ、持病や身体的な特徴に基づくもの  客観的に観察される「人との差異」

② 劣等感 理想や目標と現実とのギャップ、本人が引け目を感じていること

➂劣等コンプレックス  自分がいかに劣等であるかをひけらかすことで、自身の課題を避けようとする姿勢です。過度な劣等感であり、アドラーは「ほとんど病気」と指摘しています。

これとは逆に「優越コンプレックス」もあり、自分の過去の実績や知り合いの偉大さをひけらかすことですが、これも自分に対する劣等感をこじらせた結果起こるものとしています。 私の言葉に言い換えると「現状認識を正しくしたうえで、理想と現実のギャップを意識し、努力の方向性を見極めるのが重要」ということになるでしょうか。改めて言われると「わかっちゃいるがそれができたら苦労がないよ」という事にはなりすね。難しいことです。 ともかく、こうしてライフスタイルとライフタスク(5つあり、仕事、交友、愛、セルフタスク、スピリチュアルタスクからなる)において、解決すべき問題点を自分を見つめなおし、探し出すところからアドラー心理学は始まります。そして、その課題の解決方法が勇気づけという発想です。ですから、アドラー心理学は「勇気の心理学」ともいわれます。次回は勇気づけに関してお伝えしたいと思います。

参考 現代臨床精神医学 金原出版株式会社 大熊輝雄   

 「Der Sinn des Lebens(生きる意味)」 アルフレッド・アドラー 

嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え ダイヤモンド社 岸見 一郎

勇気の心理学 Discover 永藤 かおる

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アドラー心理学 II ~自分を変えるのに手遅れはない~

アルフレッド・アドラーの有名なエピソードがあります。

弟子のイギリス人 マーチン・ロスがアドラーに質問します。

マ「何歳になったら性格を変えるのに手遅れですか?」

ア「死ぬ1、2日前かな」

アドラー心理学ではいつでも「人間は自分を変えることができる」 と捉えています。そのため、自分を表す言葉に性格やパーソナリティといった言葉を使わずライフスタイルと日本語では訳されることが多いようです。

ライフスタイルは「自己と世界の現状および理想についての信念の体系」と説明されます。以下の要素から成り立っています。

① 自己概念

② 世界像

③ 自己理念

ライフスタイルを変えるには、自己概念、世界像について自己理想と照らし合せて適切な目標を設定して実行することが大事といわれています。 私が、前回にもお伝えした日本人がアドラー心理学に向いていると考えているのはまずこの根幹をなす発想です。仏教の教えに近いと考えています。

死の直前までライフスタイルを変えられる、 言い換えれば

「死の直前まで自己研鑽をすべきである」

というのは、キリスト教的な教えより、輪廻転生を提唱する仏教的な教えのように感じます。輪廻転生を繰りかえし、いつかは、解脱して理想的な環境で学問を学びたい、そのために自己研鑽を常にして徳を積み重ねたい。仏教の精神、教えの根源に近いと感じています。

そして、これは認知症治療のこれからのキーワードになると私が考えている「認知症は治療から予防に」「No(脳)エイジング」にも重なるところが大いにあります。

ライフスタイルについて説明を加えないと理解しにくいのは

②世界像

についてです。これは、世間、男性、女性、周りの人々など様々なことを「○○である」と認識すること。よく使われる日本語で言うと、常識や固定概念、イメージになるでしょうか。この世界像は非常に定義が難しいと私は考えています。

特に、元号が平成から新元号に変わる今年などは、「平成は○○の時代だった」などという総評が増えるでしょうが、どの側面からみるかによってがらりと変わるでしょう。現代社会は、アドラー心理学が生まれた100年前と比べ、飛行機などの交通手段、インターネットの発達などにより常識や固定概念、などがかなり相違している人たちとのコミュニケーションをとる機会が増えていると考えられます。これはアドラー心理学用語を用いると世界像の多様化になります。

この世界像の多様化に伴う共通認識の齟齬が、日々の日常で多く起こっており、今後もさらに増加すると私は思ってます。そこに意識を向けていないと相手を理解したり、相手との関係性を把握しにくかったり、環境が整わなかったりと、アドラー心理学の根幹である、対人関係の悩みが解決しないことになります。

抽象的な言葉が続いたので、例を出して説明しますと、外国人旅行者を 接客する際には、言語や文化が違う(世界像の齟齬がある)事を念頭に置いて自己概念を自分の意志で変えて(英語を覚えたり、アプリなどを利用する、文化を知ろうとする)自己理想を実現しようとする(どんな人とも協力し合える関係、外国人旅行者にも満足される接客)。これが、アドラー心理学に書かれている「ライフスタイルは自分の意志で変えられる」実例だと私は考えています。

つまり、2020年の東京オリンピックの一つのテーマである「おもてなし」といってもいいのではないでしょうか。日本人にはもともと根深い精神ではありますが、関係性が構築されていない外国人旅行者にはそういう気持ち、スタンスで向き合えるが、逆に関係性の深い恋人、家族、友人、上司、部下には自分のことをわかってほしい気持ちが強いがために(最近よくメディアで使われる「承認欲求」)対人関係で悩みが多く出ているのではないでしょうか。

ライフスタイルは、8-10歳までに形作られ、それに影響を与えるもの(影響因子)としては

① 身体的特徴

② 劣等感

③ 環境(家族関係、兄弟関係、文化)

がかかわるといわれています。

次回には、劣等感についてもう少しお伝えできたらと考えています。

参考 現代臨床精神医学 金原出版株式会社 大熊輝雄   

 「Der Sinn des Lebens(生きる意味)」 アルフレッド・アドラー 

嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え ダイヤモンド社 岸見 一郎

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アドラー心理学 I ~人間の悩みはすべて対人関係である~

以前デール・プレデセン医師の著書「アルツハイマー病 真実と終焉」

という本について当ブログでもご紹介させて頂いたのですが、有難い事に評判がよく、他にもおすすめの精神科・心理学領域の本はないかという御要望を多数いただきました。ですので、時折話題になった精神科・心理学関連の本を御紹介しエッセンスだけでもお伝えできればと思います。

今回は、数年前から話題になりましたアドラー心理学について。

名前だけは聞いたことがあるという方が多いのではないでしょうか?一時期本屋さんで関連書が山積みにされていました。「嫌われる勇気」「勇気の心理学」「人生の意味の心理学」などの題名で色々関連書があります。これからはアドラー心理学に沿ってその考え方をご説明していきます。

アドラー心理学はまず、悩みの根源を知って幸せについて考えることから始まるといわれています。幸せと悩みは対極にあるような存在と考え、幸福感を遠ざける悩みを発想の転換により消すことが目標となります。

アドラー心理学では、「ヒトが抱える悩みはすべて対人関係である」と考えています。

例えば、会社や学校に行きたくない→苦手な人がいる、自分の意見が言えない→嫌われるのが怖い、やせたい→他人と比較して醜い自分が嫌だ、子育てがうまくいかない→親子関係に自信がない

など、『私たちの悩みには、必ず他者がかかわってくるので、対人関係が改善されれば悩みが解決し、幸せにより近づく』と考えているのがアドラー心理学です。対人関係は次の4つの要素に影響を受けるので、どれかが変われば影響を受けて自然と変化が生じます。

  1. 自分(自分の捉え方や行動)
  2. 相手(相手の捉え方や行動)
  3. 関係性(恋人同士、上司と部下といった関係)
  4. 環境(職場や住まいなど)

しかし、相手の考え方を変えるのは至難の業ですし、関係性を完璧にコントロールするのは難しい。理想の環境を追い求めるのも限界があります。つまり、対人関係を好転させたいときに即効性があるのは、自分の意志で自分自身を変えること「まず自分が変わること」が重要としています。

このあたりの発想は、CBT(認知行動療法)にも取り入れられていて、現代の精神療法にも応用されている重要な考え方になります。

アルフレッド・アドラー(1870年2月7日―1937年5月28日)は、約100年前に御活躍されたオーストリア出身の精神科医ですが、ジークムント・フロイト、カール・グスタフ・ユングといった今でも心理学の初期に学ぶ超有名な心理学者達と並んで評される現代パーソナリティ理論や心理療法を確立した一人と言われています。

このアドラー心理学は、現代社会においても大変重要な考え方になりますし、日本人向きの心理学と私は考えていますので、また次回もその理論をお伝えできればと考えております。

 

参考 現代臨床精神医学 金原出版株式会社 大熊輝雄

「Der Sinn des Lebens(生きる意味)」 アルフレッド・アドラー

嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え ダイヤモンド社 岸見 一郎

勇気の心理学 Discover 永藤 かおる

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認知症予防と脳トレ「MCIカラーリング」

MCIカラーリングとはMCI(軽度認知障害)カラーリング(塗り絵)で、文字通り軽度認知障害の方をターゲットにアルツハイマー病への進行予防を目的としています。

MCIカラーリングでは、通常の塗り絵と違い、日常目にする、利用するものを写真に撮り、それを加工し塗り絵にし、見本である写真を見ながらカラーリング(塗り絵)することで、以下の効能・効果を考えております。

  1. アルツハイマー病で早期に障害されやすい空間認知能力を鍛える
  2. 日常よく目にする物を題材にすることで、物品呼称をしやすくし、ADLの低下を防ぐ
  3. 医師が毎回お題をお渡しし、自宅でトレーニングいただくことで、昨年11月20日にブログでお話しした「キョウヨウ」にしていく
  4. 細かな色・陰影の変化まで見本を忠実に再現することを促すことにより通常の塗り絵より注意力・集中力を養ってもらう
  5. MCIカラーリングを通じて、医師・患者様・ご家族様の共通の話題となり、コミュニケーションツールとなる
  6. 自宅での脳トレの一番の問題点である、「いいことでも続かない」を防ぎ、医師、ご家族様が患者様を励ましサポートするので継続しやすい
  7. 季節の催し物などを取り入れているので見当識障害の予防に期待できる
  8. 平成30年11月2日のブログにある、ぬり絵は視覚野にある後頭葉や色や形の記憶が保存される側頭葉、作業プランを立てる時に前頭葉にある前頭前野、手の動きをコントロールする運動野など広範囲の脳を使うことにより、脳血流の活性化を促す

以上のような効能・効果が期待できると愚考しております。

種類としましても、果物、日用品、文具、風景、動物、植物、季節の催しなど各種ご用意しており、現在のところかなりの好評を頂いております。MCIカラーリングについてご説明し、お渡しすると「宿題でたな。頑張らないと。」と患者様、ご家族様が笑顔でお話ししている場面を多く見かけ、宿題があると思うことへのマイナスイメージは全くなく、逆に家でやることができてて安心しているように見受けられます。やはり「キョウヨウとキョウイク」の重要性と現状での不足を痛感する次第であります。脳のアンチエイジングには毎日続けることが最も大切だといわれています。

今後、このMCIカラーリングをはじめ、ご家庭で気軽に毎日継続できる脳アンチエイジングに係る治療法「NOエイジング」を開発、ご提供できたらなと考えております。ご興味を持たれた方は是非当クリニックにご連絡ください。

 

文献1)一宮 洋介:認知症の臨床<最新治療戦略と症例>

2)大熊 輝雄:現代臨床精神医学第12版 金原出版株式会社

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超音波治療でアルツハイマー病改善、世界初の治験へ

このニュースは昨年から新聞に掲載されていましたが、新年に朝の情報番組で特集されてからさらに話題になりました。産経新聞 平成30年6月19日掲載記事から

 

超音波を脳に照射してアルツハイマー病の悪化を防ぐ新たな治療法の実用化に向け、今月中に臨床試験(治験)を始めると東北大の研究チームが19日、発表した。超音波を使った認知症の治験は世界初。軽度の患者が対象で、早ければ5年後の実用化を目指す。

人間の脳には、血液に混じって外部から異物が侵入するのを防ぐ仕組みがあり、投薬によるアルツハイマー病の治療を妨げてきた。超音波にはその制約がなく、治験で効果が認められれば革新的な治療法につながる。

治験では患者の頭部にヘッドホンのような装置を付け、こめかみ付近から左右交互に超音波を断続的に照射。患者5人で安全性を確認した後、40人を対象に3カ月ごとに照射し、1年半かけて効果などを調べる。

使うのはチームが見いだした特殊な超音波で、脳を刺激する効果がある。照射すると脳内に新たな血管が生まれ、血流が改善。アルツハイマー病の原因物質の一つとされる「アミロイドベータ」というタンパク質の生成を抑制し、症状の進行を抑えるという。

アルツハイマー病を人工的に発症させたマウスの実験では、3カ月後でも健常なマウスとほぼ同等の認知機能を維持した。手法が安価で簡易なのも特徴だ。

下川宏明教授(循環器内科学)は「少しでも有効性が認められれば、世界的な朗報だ。将来は重症な患者や、脳卒中による認知症患者にも対象を広げたい」と話している。

 

まとめますと軽度のアルツハイマー病患者において

超音波治療で脳を刺激→脳の血管が新たに生まれ、血の流れが良くなる

→アミロイドベータの生成を抑制→症状の悪化を防ぐ

という理論になります。

前回ご紹介したメリスロンの論文と手法は違えど、目的、理論、最終目標は同じになります。昨年度からブログで申し上げている通り、認知症は治療から予防の時代になろうとしています。平成が「認知症治療の時代」なら、新たな元号は、まさに「認知症予防の時代」になるのではないでしょうか。次回には、時代のテーマである「認知症予防」に対しての当クリニックでの新たな取り組みについてお伝えしたいと思います。

 

文献1)2018年6月19日 産経新聞記事

2)大熊 輝雄:現代臨床精神医学第12版 金原出版株式会社

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新年早々の大ニュース「眩暈の薬で認知機能改善」

平成最後の年は、認知症患者様に携わっているご家族様、医療関係者にとって明るいニュースがいくつも話題になるという、今後に期待を抱かせる幕開けになりました。まずは、なんといってもこのニュース、一番問い合わせも多かった眩暈のお薬の話題から始めたいと思います。

平成31年1月8日、産経新聞から

忘れてしまった記憶を薬で回復させる実験に成功したと、東京大や北海道大などの研究チームが発表した。記憶を回復させる効果がある薬の発見は世界初という。アルツハイマー病などの認知症の治療に役立つ可能性がある。米科学誌電子版に8日、論文が掲載された。

チームは20代を中心とした健康な男女計38人に100枚程度の写真を見せ、約1週間後に覚えているかを調べる実験を実施。めまいの治療薬として使われている「メリスロン」を飲んだ場合と、飲まなかった場合で正解率を比較した。

その結果、薬を飲むと、忘れていた写真を思い出すケースが増え、正解率は最大で2倍近く上昇することが判明。忘れた写真が多かった人ほど効果があり、見たかどうか判別が難しい写真で正解率がより高まる傾向があることも分かった。

この薬は脳内の情報伝達に関わる「ヒスタミン」という物質の放出を促進する働きがある。この効果で記憶を担う神経細胞が活性化し、忘れた記憶の回復につながったとみている。

記憶が回復する仕組みを詳しく解明し、認知症の研究成果と組み合わせることで、アルツハイマー病などの新たな治療法につながる可能性がある。

チームの池谷裕二東大教授(薬理学)は「記憶回復のメカニズムが分かったので、今後はより効果の高い薬の開発につなげたい。認知症患者らの生活の質を高められる可能性がある」と話している。

翌日から早速いろいろ問い合わせがあり、当クリニックでも論文を取り寄せたり、販売元の製薬会社に話を伺ったり致しました。まずは、この論文に関しまして製薬会社は一切かかわっておらず、人的・金銭的な関連は全くないとのことでした。その上で改めて、メリスロンを認知症治療に臨床の現場で使用できるのかというと、まずは、認知症には適応がなくあくまで眩暈症の適応の薬であることが大前提ですが、中枢性眩暈にも末梢性眩暈にも使用できる非常に副作用が少ない薬である事は確認できました。また、この論文では、メリスロンを通常用量よりも多く使用しているので、この論文と同等の用量では処方はできないことになります。それを踏まえたうえで、現時点で、メリスロンが認知機能改善に効果がある機序としましては、脳もしくは海馬に対する血流増加が一番に考えられます。元々メリスロンは、耳の奥にある内耳という機関に対する血流増加が眩暈にたいする効能の機序と考えられており、内耳以外にも脳血流を増加する可能性も考えられていましたが、それを立証する一つのデータであると考えています。

今後様々な観点から研究が進み、この研究で使用されたメリスロンの用量も保険適応内で使用できるようになるのではと期待しています。

いずれにせよ、この「脳・海馬への血流の増加」は、今後の認知症治療の重大なテーマになると考えており、それは以前から当クリニックで先駆けて取り組んでいたこととも合致します。

この観点から次回にも新年のニュースをお伝えしたいと思います。

 

文献1)2019年1月8日 産経新聞記事

2)大熊 輝雄:現代臨床精神医学第12版 金原出版株式会社

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新年のご挨拶

明けましておめでとうございます。

昨年6月に、今川クリニックの院長に就任いたしまして、おかげさまで無事に新たな年を迎えることができました。これも皆様のご支援、ご指導、ご協力の賜物と感謝しております。本当にありがとうございました。

新しい年を迎えまして、今後さらに患者様、ご家族の皆様のお役に立てるよう努力して参る所存です。とくに、おひとり、おひとりにあった認知症治療、不眠治療そのほかメンタル不調でお困りのすべての方への治療のあり方を工夫して参りたいと思っております。クリニックの雰囲気、治療のあり方、などなど改善すべきことがございましたら、遠慮せずにお申し出ください。

また、平成31年4月より月曜日、火曜日午後も診療を始めます。これまで月曜日、火曜日の午後が休診だったため、皆様にご迷惑をお掛けし申し訳ありませんでした。月曜日、火曜日午後の診療開始に当たりまして、これまでご協力頂きました皆様に感謝いたします。

本年もよろしくお願い申し上げます。

平成31年1月5日

今川クリニック 院長 福本 素由己

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年末のご挨拶

寒気厳しき折柄 あわただしい師走となり、何かとご多用のことと存じます。

皆様のご家庭では、すでに年末の準備がすすみ、一年で最も楽しみな時に備えておられる事と思います。

今年は、6月に前院長今川正樹が、医学と仁の道にその人生を捧げ全うされ、6月から院長が交代し、その後も診療時間の変更など、患者様やご家族様に多大なるご迷惑をお掛けしたことを心よりお詫び申し上げます。
また、小さな診療所で行き届かない事や患者様の期待や信頼に添えなかった事も少なくなかった事をお詫び申し上げます。私達の力だけでは限りがございますので、地域の中核病院(住友病院、関西電力病院、北野病院、大阪病院、日生病院様など)や、地域の調剤薬局様やケアマネージャー・訪問看護師・介護施設とも連携をはかり、患者様のご期待に応えられるよう努力してまいります。当クリニックにご協力いただく全ての医療関係者の皆様にもこの場を借りて感謝の気持ちを述べさせていただきます。

また、平成最後の年を迎えるにあたり、少しでも患者様、ご家族様に寄り添えるよう、11月にはアンケートを実施させて頂き、多くの方にご協力頂きましたことを心より感謝しております。大変多くの有難い貴重なお声を頂きましたので、少しでもご要望に応えられるよう院長以下、スタッフ一同一層身を引き締めて診療に従事させて頂く所存であります。

どうかこの年末年始の機会に、ご家族やご友人と共に健やかな時を優しいお気持ちでお過ごしいただけたらと願っております。

皆様のご健康とご家庭の平安と益々のご活躍を期待して、年末のご挨拶に代えさせていただきたく思います。

良い年をお迎え下さいますようお祈りいたします。

平成30年12月28日

今川クリニック 院長 福本 素由己

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今川正樹先生を偲んで 後篇

脳の透明性について、今川先生の著作「透明な脳」から引用させて頂きますと、母胎の中で脳が形成されて、環境ホルモンなどの影響もなく、健全に成長する可能性を秘めた脳を、今川先生は「透明な脳」と呼び、その「透明な脳」の状態を取り戻すために編み出された治療法が鉄剤療法であるとのことです。この著作の中で特に印象的な文章が、

(前略)脳というものは、これまでに述べたように科学的な発達の法則に従って成長していく。その到達点を予測することなどとてもできない。脳のなかに蓄えられた知識と経験が、想像力により脳の中で新しい世界の再生産を行う。実のところ私はこれこそが芸術をいわれるものではないかと考えている。(以下略)」

おそらくこのお考えをもとに、患者様にお題を伝え、絵と文章から、いわゆる絵日記を完成させるよう宿題として出す芸術療法へと昇華させて、施行されていました。この30年以上前からされていた二つの取り組み(鉄剤療法、芸術療法)は、現在アルツハイマー病の研究、臨床に関わる世界中の医療従事者の中で重要と考えられています。特に、最近テレビに取り上げられ話題となったUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)のプレデセン博士のReCODEプロトコルの中核を担う考え方であり、今川先生の先見の明に感服いたす所であります。

 私生活では、天文学や歴史、文学にも造詣が深く、詩集「脳の比喩」などを出版。またユニークな視点から、自らのカメラで風景を捉えた写真を多数遺しています。生涯を通じて、あらゆる分野で感性を磨き続けてきた粋人でもありました。

詩集「脳の比喩」に収載されている一編の詩「脳の比喩」から一部を抜粋させて頂きます。

 

限定された空間は宇宙の舞台

数十億光年の彼方に在る物質ドラマ

人間の眼差しがかけて来た情念の歴史が

ここに渦巻いている

螺旋状に進化した脳髄の先端で

 

アンデルセンの物語

その中心へと辿れば

アウストラロピテクスの頭蓋骨が

眠っている

 

今川先生には、お元気でまだまだいろいろお教えを頂きたいと思っておりましたのに、こんなにも早くお別れすることになるとは痛恨の極みです。先生のこれまでのお導きに心より感謝し、安らかに永遠の眠りにつかれることをお祈り申し上げます。

 

医療法人臨研会 今川クリニック

院長  福本 素由己

 

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今川正樹先生を偲んで 前篇

今川先生と初めてお会いしたのは、私が大阪大学大学院博士課程4年目の時でした。今川先生が体調を崩され、その間クリニックをお手伝いさせて頂いたのがきっかけでした。それを機に、今川先生の下で認知症治療について学び8年ほどになります。何よりもまず患者様を第一に考えられた今川先生は、20186月、病魔が御身体を襲う前日まで、クリニックにて臨床に従事しておられました。臨床家の鑑であり、医学という分野のプロフェッショナルとして理想的な人生であったと尊敬しておりますが、ご家族の皆様はもっとゆっくり家族としての時間を育みたかったであろうと思います。ご家族のご心中をお察し申し上げますとともに、謹んで哀悼の意を表し、心からのご冥福をお祈り申し上げます。

 今川先生は、昭和20年兵庫県に生まれ、昭和47年神戸大学医学部をご卒業されました。卒業後は神戸大学大学院博士課程において博士号を取得。有馬病院精神科勤務を経て、昭和54年兵庫県立尼崎病院(現:尼崎総合医療センター)神経科(平成4年より精神科に呼称変更)に副医長として勤務、昭和56年より医長になられ、平成12年までの長きにわたり、兵庫県阪神地区における中核病院にて地域医療に大きく貢献し、兵庫県からその多大な功績に対し表彰も頂いております。

その後、平成12年に今川クリニックを開設。開設以降のご活躍は皆様もよくご存じの通りで、広く地域医療に貢献され、関西全域から患者様が来院されるのはもちろんのこと、関東、東海地方や、中四国、九州地方の患者様からも御高診を求められる素晴らしい臨床医でした。

 研究者としても偉大な功績を多数残されていますが、中でも1992年英国の医学雑誌「The Lancet」に掲載された鉄剤によるアルツハイマー病患者の治療例などは高く評価され、その後のアルツハイマー病研究・治療法に大きな影響を与えました。

また、日本精神神経学会、日本認知症学会、日本老年精神医学会など多数の学会に所属し、専門医・指導医として、特にアルツハイマー病の早期診断と治療、後進の指導に精励されておられました。その指導を受けた一人として、深く印象に残っているのは、脳の透明性という概念と、芸術療法でした。後篇へ続く

 

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