今だからこそ読んでほしい、認知症専門医がおススメする名著⑥ 『アルツハイマー病 真実と終焉』

不動産の所有者が認知症になってしまったら?|さいたま市浦和エリア ...

今回も、認知症専門医がおススメする、デール・ブレデセン氏の著書、『アルツハイマー病 真実と終焉』(ソシム、監修者:白澤卓二氏・訳者:山口茜氏)。その中から一部を抜粋してご紹介いたします。

何度か当ブログでもエッセンスをお伝えしていましたが、この機会に、一度拝読頂ければ幸甚です。少しでも見やすく、理解しやすいように時折箸休め的な挿絵を入れております。原著にはない挿絵なのでご注意ください。

アルツハイマー病は「脳の防御反応」!?

また、アルツハイマー病の主要な定説に、異論を唱える発見もある。この深刻な病が、正常で健康な脳のプロセスがおかしくなった結果であることを示すのは、脳はなんらかの損傷、感染、その他の攻撃(色々な種類を説明しよう)を受け、身を守るよう反応する、という発見によって明らかになった。

この防御メカニズムには、アルツハイマー病関連のアミロイド産生も含まれる。そう、読み違えたわけではない。何十年も悪く言われ続け、誰もが除去しようとしてきた、まさにそのアミロイド自体が、脳の防御反応の一部だったのだ。それ故に、アミロイドを除去しようとしても、アルツハイマー病患者にはあまり有用でなかったのも不思議ではない。

したがって、現在の定説とは逆で、アルツハイマー病であるといわれるものは、実際のところ防御反応であり、防御の対象を具体的に言うと、3つの異なるプロセスー炎症、栄養素とシナプスを支えるその他分子の欠乏、毒物への曝露―である。

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毒物の代表例として、水銀が挙げられている。

これについては、本書の第6章でより詳細に述べるが、今のところは、このシンプルなメッセージを強調させていただきたい。アルツハイマー病に、3つの異なるサブタイプが存在する(そしてしばしば、これらサブタイプが組み合わさっている)という認識は、アルツハイマー病の評価法、予防法そして治療法に深遠な意味を持つのだと。

この発見はまた、認知機能の喪失や、軽度認知機能障害、主観的認知機能障害の捉えがたい状態を、本格的なアルツハイマー病に進行する前に、もっとうまく治療できることも意味する。

本書の第7章では、認知機能低下の理由や、そのリスクとなるものを特定する検査を学ぶ(自分でアルツハイマー病になるようなことをすでに行っているかもしれない)。

検査は必要だ。というのも、認知機能を低下させる要因は往々にして多岐にわたり、他の人の要因とは異なる可能性が非常に高いからだ。だからこそ、これらの検査で各人に個別化したリスクプロファイルが手に入り、治療を最適化するにはどの要因に対処すればよいかがわかる。

それぞれの検査の背景にある論理的根拠も教えよう。つまり、その検査で評価した生理的パラメータ[身体の生理状況により変化する数値]が脳機能とアルツハイマー病にどうかかわるのか? ということだ。本書の第7章ではこの〝認知機能検査〞に含まれる検査をまとめ、背景にある基本理念を解説する。

本書の第8章と第9章は、検査結果に応じて行うべきことの解説になる。認知機能の低下を回復し、将来のリスクを下げるために対処しなければならない基本事項―炎症/感染、インスリン抵抗性、ホルモンと必要栄養素の枯渇、毒物曝露、喪失した、あるいは機能不全になった脳の結合(シナプス)の交換と保護―を考察する。これは「万人に効く」アプローチではない。リコード法は、検査結果に基づき、1人1人にオーダーメード化される。

つまり、その人固有の生理機能に最適化するため、リコード法のバージョンは、すべて他の人とは異なる。もちろん、リコード法に効果があるということ、認知機能の低下を予防し回復させるというまさにこの事実こそが、独創的かつ斬新だ。しかし、それは個別化に焦点を合わせて初めて実現する。

今後の医療は、東洋医学の核心に近づく可能性も

本書の第10章〜第12章では、最高の治療結果を出して維持する秘訣を解説する。ここでは、うまくいかなかった場合に行う別の方法を提示し、認知機能の回復を成功させるだけでなく、このアプローチに向けられてきた疑問や批判に対応する。

19世紀現代医学の到来により、医師は、例えば、高血圧やうっ血性心不全、関節炎といった具合に病気を診断し、高血圧には降圧薬というように、万人に効く治療薬を処方するよう訓練されてきた。これは今、ゆっくりと変化しており、がんの精密治療では腫瘍の遺伝子プロファイルにより処方薬が決められるようになっている。

個別化医療を強く求める動きの中で、私たちは伝統中国医学(TCM)やアーユルヴェーダ認知症を食い止める第1章医学のような東洋医学の核心に近づく可能性がある。

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アーユルヴェーダの体質論

これら伝統治療を行う古代の医師たちは、特定の病気の分子生物学的な詳細は、何も知らなかったが、「高血圧」のような単一の病気に的を絞る代わりに、人間を丸ごとひとつの存在として治療する専門家だった。新しい医学―21世紀の医学は、近代西洋医学と東洋の伝統医療の粋を結集し、分子メカニズムの知識を、1人の人間全体の理解へとつなぐものである。

新しい医学により、問題が「何」であるのか単に問うことを超え、問題が「なぜ」あるのかを問うことが可能になった。なぜかと問うことは、アルツハイマー病の予防と治療でもわかるとおり、状況を一変させるのだ。

デール・ブレデセン『アルツハイマー病 真実と終焉』第一章を中心に抜粋した文章とイラストでお話しして参りました。この続きが気になる方は是非、ご一読ください。タメになることが多く載っております。

ここでとりあげられたリコード法、当院でもその考えの元、食事指導、サプリメント、など当院のエビデンスに基づいた治療を行っております。また、漢方や東洋医学に基づいた治療もさせて頂いております。

ご興味ある方は是非当クリニックにお電話ください。

今回も御一読いただき誠にありがとうございました。

文献1)デール・ブレデセン『アルツハイマー病 真実と終焉』

(ソシム、監修者:白澤卓二氏・訳者:山口茜氏)

2)大熊 輝雄:現代臨床精神医学第12版 金原出版株式会社

3)幻冬舎 GOLD ONLINE 新刊書籍を試し読み

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今だからこそ読んでほしい、認知症専門医がおススメする名著⑤ 『アルツハイマー病 真実と終焉』

今回も、認知症専門医がおススメする、デール・ブレデセン氏の著書、『アルツハイマー病 真実と終焉』(ソシム、監修者:白澤卓二氏・訳者:山口茜氏)。その中から一部を抜粋してご紹介いたします。

何度か当ブログでもエッセンスをお伝えしていましたが、この機会に、一度拝読頂ければ幸甚です。少しでも見やすく、理解しやすいように時折箸休め的な挿絵を入れております。原著にはない挿絵なのでご注意ください。

認知機能の回復のほか、改善の維持へと導く治療法

この本は、私の結論を裏付ける科学的エビデンスを掲載しているが、学術書ではない。その代わり、早期アルツハイマー病と、その前段階である軽度認知機能障害(MCI)と、主観的認知機能障害(SCI)における、認知機能の低下を予防、回復、維持する、実践的で使いやすい段階的なマニュアルを掲載した。

本書はまた、ApoE4遺伝子を持つ〔白色人種は14%、日本人は9%が持っていると言われている〕7500万人のアメリカ人たちが、DNAに記された運命から逃れるためのガイドブックでもある。これを達成するためのプロトコルは、2014年に発表した世界初の研究の科学論文につながった(その後の2015年と2016年の3本の論文により、2014年の最初の研究が裏付けられた)。

この論文はアルツハイマー病や、その前段階にある患者10人のうち9人が、認知機能の低下が回復したことを報告したもので、この成果は数十年にわたるアルツハイマー病の神経生物学的研究をベースとした最新の個別化プロトコルによる成果だった。

認知機能の低下(COgnitive DEcline)の回復(Reversal)にちなんでReCODE(リコード法)(このメソッドは当初MEND:metabolic enhancement for neurodegeneration/神経変性に対する代謝促進、と呼んでいたが、内容が古くなったため、より進化した「リコード法」に置き換えた)と名づけた、このプロトコル(治療法)によって、アルツハイマー病とその前段階の患者の認知機能が回復しただけでなく、改善が維持されたのだ。誰もが不可能だと思っていたことだった。

現行のリコード法による治療を受けた、まさに「患者第1号」は、本書の執筆時点で治療5年目に突入している。彼女は73歳という年齢だが、認知機能は健康なままで、世界中を旅し、フルタイムで仕事している。そして、その後の大規模研究により、何百人という患者で、患者第1号が決して特別ではないことが証明された。

2014年の研究を出版して以来、成功を収めたプログラムの詳細が知りたいというEメールや電話が世界中から数千件入り、医師やその他の医療従事者、可能性のある患者や家族たちがアメリカ、イギリス、オーストラリア、アジア、ヨーロッパ、南米各地から訪ねて来た。論文を発表した『Aging』という雑誌のスタッフが電話で知らせてきたことによると、長年にわたって発行してきた何十万本もの論文の中で、私たちの論文は、インパクトと関心を測定する測定基準システムで最高点の2本であったそうだ(99.99パーセンタイル順位)[パーセンタイルとは全体を100としたとき、下から何%にいるのかを表わす]。

最初の論文にはプロトコルの細かい段階的な解説は入れていなかったので(科学雑誌には論文一報につき、ページ制限がある)、本書にはそれを掲載した。

また、リコード法のプロトコルを開発した経緯を詳しく説明し、その科学的基盤を解説した。付録には、食品やサプリメント、そしてリコード法のその他の要素の情報源だけでなく、リコード法に関する知識が豊富で、みなさんや、みなさんの愛する人が実生活でリコード法を行う手助けとなってくれる医師とその他医療従事者へのリンクも掲載した。

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予防と治療の必要性は、これまで以上に高まっている

患者さんの生活を改善するより大切なことはない、という思いが、数十年もの間、アルツハイマー病を予防し、回復する方法の探求へと、私を突き動かしてきた。

だが、十分な数の人がリコード法を実践すれば、その人たちは自分自身をはるかに超える数の人々を助けることになる。というのも、この文章を書いている今、65歳以上の9人に1人、あるいは5200万人のアメリカ人を、アルツハイマー病が襲うと推定されている[2060年における日本人のアルツハイマー病患者数は1150万人と予測されている]。ベビーブーム世代の高齢化により、アルツハイマー病の巨大津波が襲来する恐れがあるのだ。

この津波により高齢者向け医療保険制度(メディケア)と、低所得者向け医療保険制度(メディケイド)が破たんし、国の長期ケア施設が水底に沈む可能性がある。

その犠牲者は言うまでもなく、最愛の人をこの情け容赦ない病気に飲み込まれた何千万という家族が、その波にさらわれていくだろう。

世界的には、1億6000万もの人が2050年までにアルツハイマー病を発症すると予測されている。

これまで以上に、予防と治療の必要性が高まっているのだ。

私が見てきた何百という患者は、認知機能の低下状態から復活した。

医学の定説ではそのような回復は不可能であるにもかかわらず、持ち直したのだ。

このことで、アルツハイマー病の予防と治療は絵に描いた餅ではないことを私は確信した。

今日から、どうすればいいかみなさんにはわかるはずだ。

十分な人数がリコード法を実践すれば、その結果は国と世界に波及する。年間何十億ドルという医療費が削減され、医療保険制度の破たんを防ぎ、認知症への世界的な負担が減って、寿命は延びるだろう。すべては可能だ。

アルツハイマー病の歴史始まって以来の朗報が、とうとう舞い込んできたのだ。人生の回復を祝う喜びの物語がここにある。これから登場する患者の1人は、孫と話しているとき、もう一度未来について考えられたと語った。別の患者は、今までの30年に比べ記憶力がよくなり、あるミュージシャンの妻は、夫のギター演奏が蘇ったという。別の患者の娘は、自分が大学から戻るたびに、ゆっくりと消えかかっていた母親が、もう一度家族の一員になったと話した。

本書であなたが目の当たりにするのは、変化した世界の始まりであり、アルツハイマー病の「終焉の幕開け」である。

この先の内容を紹介しよう。本書『アルツハイマー病 真実と終焉』の第2章から第6章はリコード法へと至った科学の冒険譚だ。

この治療プロトコルの科学的基礎をなす発見、すなわち、「アルツハイマー病の全容は一体どうなっているのか、どこに由来し、なぜこれほど蔓延しているのか」を説明する。

つまりは、認知機能の低下を予防し、リスクを高める、代謝やその他の要因を特定し、認知機能の低下がすでに始まっていても回復する、初の効果的アプローチを裏付ける発見である。

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ここでとりあげられたリコード法、当院でもその考えの元、食事指導、サプリメント、など当院のエビデンスに基づいた治療を行っております。

ご興味ある方は是非当クリニックにお電話ください。

今回も御一読いただき誠にありがとうございました。

文献1)デール・ブレデセン『アルツハイマー病 真実と終焉』

(ソシム、監修者:白澤卓二氏・訳者:山口茜氏)

2)大熊 輝雄:現代臨床精神医学第12版 金原出版株式会社

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今だからこそ読んでほしい、認知症専門医がおススメする名著④ 『アルツハイマー病 真実と終焉』

今回も、認知症専門医がおススメする、デール・ブレデセン氏の著書、『アルツハイマー病 真実と終焉』(ソシム、監修者:白澤卓二氏・訳者:山口茜氏)。その中から一部を抜粋してご紹介いたします。

何度か当ブログでもエッセンスをお伝えしていましたが、この機会に、一度拝読頂ければ幸甚です。少しでも見やすく、理解しやすいように時折箸休め的な挿絵を入れております。原著にはない挿絵なのでご注意ください。

最も強力な危険因子「ApoE4(アポイーフォー)」

また本書が未来の分かれ目となる、非常に特殊な、第2のグループがいる。

それは、ApoE4(アポイーフォー)と呼ばれる遺伝子多型(対立遺伝子:アレル)を持つ人々だ(ApoEはアポリポタンパクEの短縮形。アポリポタンパクは脂質、例えば脂肪を運ぶタンパク質)。

ApoE4は、最も強力なアルツハイマー病の遺伝的危険因子として知られ、その保有者は、やがて自分に訪れると聞かされてきた悲惨な末路と、健やかで喜びに満ちた未来の分岐点に立っている。

ApoE4をひとつ保有している(つまり、片方の親から受け継いだ)場合は、アルツハイマー病にかかる生涯リスクは30%に上昇し、2つ保有していれば(つまり、両方の親から複製した遺伝子を受け継いだ人では)、優に50%以上になる(論文により50〜90%と諸説ある)。

これに対し、このアレルがひとつもない人のリスクは、わずか9%である。そしてApoE4を持つ大部分の人は、DNAに潜むこの時限爆弾について何も知らない。通常は、アルツハイマー病が発病して遺伝子検査を受け、初めて知ることになる。それは確かに仕方のないことだ。アルツハイマー病に予防法や治療法がない限り、たいていの人は、ApoEの状況を知りたいとは思わないだろう。

事実、ノーベル賞受賞者のジェームズ・ワトソン博士(DNA二重らせん構造の共同発見者)が、2007年に自身のゲノム配列を解析しているが、ApoE4を保有しているかどうかは聞きたくないと語っている。何も打つ手がないのに、なぜ衝撃的な知らせに身をさらさねばならないというのか、と。

しかし、今やApoE4の保有者ですら、アルツハイマー病のリスクを減らすプログラムがあるのだ。

もっと多くの人が遺伝子検査を行ってApoEの状況を判定し、症状が出るずっと以前から予防プログラムを始めていれば、認知症の有病率を劇的に減らす可能性がある。

私の切なる願いはまさにこれが起きることであり、本書で、特にApoE4保有者の方々には、状況は絶望的ではないと知っていただきたい。ApoE4を保有していたとしてもアルツハイマー病の予防対策を講じて、低下した認知機能を回復できるのだ。

「40歳を超えた人々」にも認知機能の低下の可能性が…

さらに本書で人生が変わると思う、おそらくあまり知られていないグループがいる。

40歳を超えたすべての人たちだ。

歳を重ねるにつれ最も心配になるのは、認識能力を失うことだ(そう、脳の老化についていえば、下り坂はだいたい40歳から始まる)。

愛する人からの手紙を読んで、理解すること。映画を観たり、本を読み、筋書をたどること。身の回りの出来事を認識し、世界の中で自分の居場所を意識すること。他人に頼って食事や着替えを行い、移動させてもらったり風呂に入れてもらうといった、単なる原形質の塊にはならず、日常の基本的な生活機能を果たせること。人生の出来事と、それにかかわる大切な人々を記憶にとどめること。こうした、私たちを人間として定義するものを失えば、意味のある人生を生きるという、人間としてのアイデンティティーそのものが消えてなくなってしまう。

そのようなことが将来に潜んでいるかもしれない、と強く意識している方全員にお知らせしよう。息を大きく吸って、実感してほしい。

認知機能の低下は、少なくともほとんどの人が対処できる。早い段階にいる人はなおさらだ。幸運なことに、私たちは人間らしさをこれっぽっちも失わずにすむ。これまでに何を聞かされていたとしても、アルツハイマー病は絶望的でも回復不可能でもない。その逆だ。初めて、アルツハイマー病が希望と一体になったのだ。

理由は、ある根本的な発見にある。

アルツハイマー病は、脳で行われるはずのないことが起きている結果ではない。細胞の増殖が制御不能になってがんが生じたり、アテローム性のプラークが血管に詰まって心臓病が起こるといったこととは違うのだ。アルツハイマー病は、脳の拡張シナプスネットワークに本来備わっている健全な退縮プログラムから生じる。しかし、このプログラムは暴れまわっているような状態だ。

1940年のクラシック映画『ファンタジア』の『魔法使いの弟子』の部分で、ミッキーマウスが箒(ほうき)に魔法をかけて、水の入ったバケツを運ばせようとすると、やがて箒(ほうき)が暴れまわる事態になる。これと同じように、アルツハイマー病では、箒(ほうき)ではないが、正常な脳の清掃プロセスがおかしくなっているのだ。

当院ではここにとりあげたAPOE4遺伝子を生まれつきもっているかわかる遺伝子検査を希望の方には実施しています。保険診療外検査になります。詳しくは当クリニックまでご連絡ください。詳しい説明をさせて頂きます。

今回も御一読いただき誠にありがとうございました。

文献1)デール・ブレデセン『アルツハイマー病 真実と終焉』

(ソシム、監修者:白澤卓二氏・訳者:山口茜氏)

2)大熊 輝雄:現代臨床精神医学第12版 金原出版株式会社

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今だからこそ読んでほしい、認知症専門医がおススメする名著➂  『アルツハイマー病 真実と終焉』

今回も、認知症専門医がおススメする、デール・ブレデセン氏の著書、『アルツハイマー病 真実と終焉』(ソシム、監修者:白澤卓二氏・訳者:山口茜氏)。その中から一部を抜粋してご紹介いたします。

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 アルツハイマー病にある「3つのサブタイプ」

これだけ聞いた時点で、もう十分厳しいが、さらに根本的な問題がある。

それは、アルツハイマー病は単一の病気ではないということだ。確かに、症状からは単一の病気に見えるかもしれない。しかし第6章で説明するが、私たちはアルツハイマー病に3つのサブタイプがあることを発見した。生化学プロファイルが異なる、アルツハイマー病患者を研究してはっきりしたのは、3つのサブタイプは容易に区別でき、それぞれ異なる生化学プロセスにより引き起こされるということだ。

つまり各々、別々の治療が必要なのだ。3つの型を同じひとつの方法で治療するのは、感染症をすべて同じ抗生物質で治療するのと同じくらい、考えが甘い。

アルツハイマー病により、30年以上も、神経科学と医学の最高の知性が困惑させられてきたとはひどい話だ(病気に名前がついてから、アミロイド仮説が浮上するまでの70数年は計算に入れていない。この間、アルツハイマー病の研究はほとんど行われていないため)。

しかし、よく考えれば誰でも、私たちが間違った手法を用いていたことがわかる。特に、アミロイドを除去する前に、アミロイドが産生される原因を特定して除去するという理論が、まだ試されていないのだ。

自分が抱える遺伝子のせいでアルツハイマー病リスクが高い方、すでにアルツハイマー病の方、また愛する人がアルツハイマー病にかかった方も、この状況にひどく腹を立てて当然だ。

そして、アルツハイマー病を、絶望的でどんな治療も効かない、「全能の病」として恐れるようになっても不思議ではない。

しかし、それは過去の話だ。はっきりと言わせてもらおう。

アルツハイマー病は予防できる。またアルツハイマー病に付随して起こる認知機能の低下は、多くの場合、回復できる。

回復不可能だと長年信じられてきたが・・・

これこそ、査読を経て一流医学誌に掲載された研究で、仲間たちと一緒に私が示してきた事実だ。そして初めて、この目覚ましい結果が患者に現れたことをきちんと説明した研究である。

そう、何十年にもわたる社会通念に逆らうことになってしまうのは承知の上だ。専門家が、認知機能の低下は避けられず、回復は不可能だと長年信じてきたというのに、低下した認知機能は回復でき、実際そうしてきた患者がすでに数百人はいて、誰にでもできる手順を踏めば、認知機能の低下を防げる、と主張するのだから。

これはみなさんが猜疑心を持って当然の、大胆な発言である。しかし、早期アルツハイマー病や、その前兆である軽度認知機能障害(MCI)、主観的認知機能障害(SCI)に見られる、認知機能の低下を、我が研究所の30年にわたる研究により、初めて回復するに至ったのだ。

みなさんはこの経緯を、きっと半信半疑で読むだろう。認知機能低下の奈落の底から抜け出した患者の話も、疑ってかかるに違いない。

たとえ、「私たちが開発した個別治療プログラムで、誰でも認知機能障害を予防し、すでに兆候が出ていたとしても、その段階で精神的退化を食い止められる、そして記憶し、考える力を回復し、もう一度知的健康生活を送ることができる」と言ってもやはり、みなさんは信じられないだろう。

しかし、私が本書で解説する成果を読んで、疑いが晴れたら、現在、すでに認知機能低下の傾向がある方だけでなく、たとえまったく今はそんな兆候がない方も、どうか心を開いて自分の生活を変えることを考えていただきたい。

もちろん言うまでもなく、この本で真っ先に人生が変わると思われるのは、記憶力や認知力ですでに苦しんでいる方(と家族、介護者)だ。

これから説明するプロトコルに従えば、すでにアルツハイマー病に罹った方はもちろん、まだアルツハイマー病ではないが、認知機能障害が出ている方も、認知機能の低下を止められるだけでなく、実際に回復できることが多い。

今まで「重篤な認知症への進行は避けられない」と言われ、どの専門家からも悪い診断ばかりされて、打ちひしがれている人のために、私たちが開発したアルツハイマー病回復プロトコルが、「回復不能な、不治の病である」という絶望的な定説を、歴史のごみ箱に追いやるのだ。

今回も御一読いただき誠にありがとうございました。

文献1)デール・ブレデセン『アルツハイマー病 真実と終焉』

(ソシム、監修者:白澤卓二氏・訳者:山口茜氏)

2)大熊 輝雄:現代臨床精神医学第12版 金原出版株式会社

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今だからこそ読んでほしい、認知症専門医がおススメする名著②  『アルツハイマー病 真実と終焉』

今回も、認知症専門医がおススメする、デール・ブレデセン氏の著書、『アルツハイマー病 真実と終焉』(ソシム、監修者:白澤卓二氏・訳者:山口茜氏)。その中から一部を抜粋してご紹介いたします。

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1995年の発見以来、新薬は1剤も開発されていない

映画『アリスのままで』は2014年に公開されたが、その哀れな主人公の言語学教授は、アルツハイマー病を中年までに発症するという、1995年に発見されたDNA変異の持ち主であった。

おそらくみなさんは、がん生物学者が腫瘍に関わる遺伝子を発見し、それを基に新薬が作られて、治療が一気に進歩した話を読んだことがあると思う。

では、アルツハイマー病はどうかというと、1995年の発見以来、ただの1剤も新薬が開発されていないのだ。

この恐ろしい病気は、さらにもうひとつの理由で際立っている。

ここ50年で、分子生物学ならびに神経科学分野は、勝利に次ぐ勝利を重ねてきた。

生物学者はがんにつながる非常に複雑な経路を解き明かし、結果、がん発症の阻害方法が多数考案された。

また私たちは、脳の思考と感覚の根底にある科学的、電気的プロセスの緻密な地図を創り、完璧と言えないまでも、うつ病、統合失調症、不安症、双極性障害に効果のある薬を開発した。

確かにまだ解明すべきことはたくさんあり、米国薬局方[国や地域で流通している医薬品の品質規格25認知症を食い止める第1章の基準]に収載された薬にはまだ多くの改良が必要だ。

けれども、アルツハイマー病以外の他の病気においては、研究が事実上正しい軌道に乗り、病気の基礎を理解していると感じられた。つまり、「自然はこちらに変化球を投げ続けてくるものの、試合の基本ルールは明らかにしてくれている」という強い感覚がある。

効果的な治療法だと示された「アミロイド仮説」

だが、アルツハイマー病はそうはいかなかった。

この病気では、「自然に手渡されたルールブックはまるで、消えるインクで書かれ、さらにこちらが目を離すと、邪悪なグレムリンが編集しルールをほぼ書き直してしまうかのよう」だった。

具体例を挙げよう。齧歯動物の研究で得られた、一見すると盤石なエビデンスによると、アルツハイマー病は、シナプス[ニューロンとニューロンの接合部分]を破壊する粘着性のプラーク[身体の一部または臓器の組織に見られる異常な小斑点。アルツハイマー病では、アミロイド斑と呼ばれる]が脳に蓄積したために起きると考えられた。プラークは、「アミロイドβ(ベータ)」と呼ばれるタンパク質のかけらでできている。

そして研究によって、アミロイドβが一連のステップを踏んで形成されること、またこのステップを阻害するか、アミロイド斑(わかりやすくするため、以後、「アミロイドβ」を単に「アミロイド」と記す)を破壊することが、アルツハイマー病の効果的な治療法であり、予防法であると示された。

1980年代以来、神経生物学者の多くは、「アミロイド仮説」と呼ばれる、この基本概念を定説としていた。定説の提唱者は数百万ドルの賞金を獲得し、数えきれない賞賛を浴びて、大学では名誉ある地位に就いた。

またアルツハイマー病の論文が一流の医学雑誌に発表される際には、とてつもない影響力があった(ヒント:アミロイド路線を踏襲した論文が優先された)。米国国立衛生研究所という、米国の生物医学研究では最高の支援源からの助成金が行く先も、同じだった。

しかし事実はというと、製薬企業が行った候補薬物の試験では、たとえほんのわずかでもアミロイド仮説を基礎とした場合、結果は、苛立たしいものから途方に暮れるものまで、惨憺たるものだった。臨床試験では、ヒトの脳はこうした候補薬物に対し、ルールブックどおりの反応を示さなかったのだ。

候補薬物がデザインどおりに作用しなかった可能性は考えられるが、実際にはそうではなく、素晴らしい作用を発揮してアミロイド斑を除去した化合物(通常はアミロイドに結合して除去する抗体)が多かった。候補薬物は、みなアミロイド仮説のルールブックを遵守し、開発者の意図通りに作用した。アミロイドの産生に必要な酵素を阻害するようデザインされていれば、見事にその役目を果たした。

にもかかわらず、患者は改善しないか、信じがたいことに悪化するかのいずれかであった。

こうした臨床試験からは(ちなみに試験は5000万ドル規模のものがほとんどだった)、試験管内の研究、マウスの動物モデル研究、そして理論も含めすべてにおいて、アミロイド仮説に基づく予想とは「真逆の結果」が浮上し続けた。アミロイドの標的化は、アルツハイマー病を治癒するゴールデン・チケットのはずだと考えられていたが、事実はそうではなかったのだ。

まるで、自分たちの宇宙ロケットが毎回発射台で爆発したようだった。

何かが途方もなくおかしい。

盲目的にアミロイド仮説を信奉するのと同様の悲劇は、医学界の主流が、アルツハイマー病を単一疾患だと決めつけていることだ。そういった訳で、通常はドネペジル[日本名:アリセプト]とメマンチン[日本名:メマリー]の併用、またはいずれか1剤で治療されている。

アルツハイマー病の悪化を止める方法は見つからない

前述したが、ここで再び、現在アルツハイマー病には治療法がないということについて説明したい。

まずアリセプトは、コリンエステラーゼ阻害薬(アルツハイマー病に処方されるその他のコリンエステラーゼ阻害薬は、リバスチグミン(イクセロン、リバスタッチ)、ガランタミン(レミニール)。このほか、ヒューペルジン(フペルジン)Aが栄養補助食品として販売されている)と呼ばれる薬で、特定の酵素(コリンエステラーゼ)がアセチルコリン(神経伝達物質と呼ばれる脳内化学物質の一種)を分解しないように作用する。

神経伝達物質は、ニューロンからニューロンへとシグナルを運んでおり、そのシグナルによってヒトは考え、思い出し、感じ、動く。だから神経伝達物質は記憶と脳機能全般に重要である。

原理は単純だ。アルツハイマー病では、神経伝達物質であるアセチルコリンが減少する。したがって、その分解酵素(コリンエステラーゼ)を阻害すれば、シナプスのアセチルコリン残量が増えるのだ。その結果、たとえアルツハイマー病が脳を破壊しても、シナプスは少々長く機能していられる可能性がある。

しかし、ある程度までならこの原理は機能するが、重大な注意点がある。

第1に、アセチルコリンの分解を阻害しても、アルツハイマー病の原因や進行そのものには影響がない。

第2に、コリンエステラーゼが阻害されると、ご推察のとおり、脳はさらにコリンエステラーゼを産生する。これで明らかにこの薬の効果が制限される(そして、突然薬を中止すると深刻な問題になる可能性がある)。

第3に、他の薬と同様、コリンエステラーゼ阻害薬にも副作用がある。下痢、嘔気嘔吐、頭痛、関節痛、眠気、食欲喪失、徐脈(心拍低下)などだ。

もう1剤のメマンチンという薬も、アルツハイマー病の基礎的な病態生理学にほぼ関係のない脳内化学物質や分子に作用するのだが、アリセプトのように、少なくともしばらくの間は症状を軽減する(あるいは遅らせる)可能性がある。通常は病気の後半になって使われ、コリンエステラーゼ阻害薬と併用されることもある。

メマンチンは、脳内シグナルがニューロンから次のニューロンへと、「グルタミン酸塩」という神経伝達物質を介して伝わることを阻害する。この伝達が妨げられると、グルタミン酸の興奮性神経毒性効果と呼ばれるもの(ニューロン活性化に関連した有毒作用)が減少する。しかし残念ながら、メマンチンは、記憶の形成に非常に重要な神経伝達も、阻害する可能性があり、使用当初は認知機能が減弱することがある。

最も重要なのは、コリンエステラーゼ阻害薬もメマンチンも、アルツハイマー病の根本原因を標的とするものではないということだ。

よって、病気の悪化を止めることもなければ、当然、治りもしない

今回抜粋した治療薬については、以前も当ブログでもとりあげ、

この本よりも最新情報をお話しております。

機会があれば見て頂ければ大変うれしい限りです。

今回も御一読いただき誠にありがとうございました。

文献1)デール・ブレデセン『アルツハイマー病 真実と終焉』

(ソシム、監修者:白澤卓二氏・訳者:山口茜氏)

2)大熊 輝雄:現代臨床精神医学第12版 金原出版株式会社

3)幻冬舎 GOLD ONLINE 新刊書籍を試し読み

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今だからこそ読んでほしい、認知症専門医がおススメする名著①

新型コロナウィルスの感染拡大に御協力頂いている皆様。

誠にありがとうございます。皆様は、お家で過ごすことは、

何気ない日常ではなく、感染拡大防止への多大な貢献をしていると思って頂ければと思います。大変な努力を頂いている皆様に、医療従事者として厚く御礼申し上げたいと思います。

そんな、ご家庭にいる時間を皆様はいかがお過ごしでしょうか?この際に、精神疾患や、認知症に関わる名著を読んでいただければ幸甚です。まずお勧めできるのは、当ブログでも何度か取り上げましていまだに質問の多い、デール・ブレデセン氏の著書、『アルツハイマー病 真実と終焉』(ソシム、監修者:白澤卓二氏・訳者:山口茜氏)。その中から一部を抜粋してご紹介いたします。少しでも見やすく、理解しやすいように時折箸休め的な挿絵を入れております。原著にはない挿絵なのでご注意ください。

まずは、著者の紹介から。

MPI Cognition 最高医療責任者

アルツハイマー病などの神経変性疾患の世界的権威。カリフォルニア工科大学を卒業後、デューク大学メディカルセンターでMDを取得。カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)で神経学のチーフ・レジデントを務めた後、ノーベル賞受賞者のスタンリー・B・プルシナー博士に師事し、プリオンとアルツハイマー病の関連性について多くの研究を行う。
UCSF、UCLA、カリフォルニア大学サンディエゴ校で教職を歴任。バーナム研究所にて高齢化プログラムを指導後、1998年、加齢専門研究所であるBuck Instituteの創業時社長兼最高経営責任者(CEO)に迎えられる。現在数百人の医師に「リコード法」の教育・普及を行うMPI Cognitionを創立、最高医療責任者を務める。

米国アルツハイマー協会の「厳しい見解」

「アルツハイマー病」というぞっとする響きからは、誰も逃れられない。

不治の病で治療はほぼ不可能、確実な予防法もない。

この数十年、世界一と言われた神経科学者たちが、この病に打ちのめされてきた。

政府機関や製薬企業、バイオテクノロジーの専門家たちにより、この治療薬の開発と試験には莫大な費用がつぎ込まれた。しかし、99.6%は見るも無残に失敗し、試験段階を終えることすらなかった。

市場に出た0.4%の薬に期待して、「結局、効果がある薬が1剤あればいいじゃないか」と思った人は、もう一度考えてほしい。

なぜなら米国アルツハイマー病協会の見解は、『本当に新薬と言えるアルツハイマー病治療薬は2003年以来、承認されておらず、現在承認されているアルツハイマー病治療薬には、病気の進行を止めたり、遅らせる効果はない』であり、今日使用できるアルツハイマー病治療薬4剤については『物忘れや混乱症状は軽減されるかもしれないが、その効果は期間限定的』だという厳しいものだからだ。

米国食品医薬品局[FDA:保健福祉省に属する米国の政府機関。食品添加物の検査や取り締まり、医薬品の認可などを行う]が、アルツハイマー病の新薬を最後に承認した際の記事を覚えているだろうか。そこには、「2000年から2010年にアルツハイマー病治療薬として、244剤の試験が行われ、唯一、メマンチンだけが2003年に承認された」とある。後述するが、その効果はせいぜい穏やかなものでしかない。

実に恐ろしい病だ。アルツハイマー病とだけは診断されたくないとみな思って当然だろう。

アルツハイマー病の妻と、長く意思疎通できないでいる男性は、首を横に振り、落胆して言った。「治療薬を開発中で、病気の悪化を遅らせることができるだろうと繰り返し聞きますが、そんなことどうしてやる人がいるんですかね。毎日アルツハイマー病を抱えて生きるなんて、はっきり言って、最悪ですよ」

この20年、他の医学療域は驚異的な進歩が見られたが

アルツハイマー病は世相の一部となった。ニュース記事、ブログ、ポッドキャスト、ラジオやテレビ、ドキュメント映画にフィクション映画。不幸なことに、次々と見聞きするアルツハイマー病の話は、みな悲劇に終わる。

アルツハイマー病の恐怖は、他の病気への恐怖とはまったく違う。これには少なくとも2つの理由がある。

第一に、米国人の一般的な死因の上位10位中、アルツハイマー病には唯一、繰り返すがただひとつだけ、効果的な治療法が存在しない。しかもこの「効果的な」という表現はハードルをかなり下げたものだ。薬や治療介入でアルツハイマー病患者が少しでも改善したら、治癒するかどうかなどおかまいなしで、私は誰かれかまわず、触れ回るだろう。愛する人がアルツハイマー病の人、アルツハイマー病リスクがある人、そしてもちろん、すでにアルツハイマー病にかかっている人はみなそうだ。

しかしそんな薬は存在しない。主観的認知機能障害[SCI:認知機能の低下を本人が自覚しているが、客観的には認知機能の低下が認められない状態]や軽度認知機能障害[MCI:23認知症を食い止める本人および第三者から認知機能の低下に関する訴えがあるが認知症の診断基準を満たさず、基本的な日常生活は保たれている状態。複雑な日常生活機能の障害は軽度にとどまる]の患者が、本格的なアルツハイマー病を発症しないようにする治療すらないのだ。

この20年、がんやHIV/エイズ、嚢胞性線維症、心血管疾患を考えると、他の医学領域では、信じられないほど驚異的な進歩が見られた。しかしアルツハイマー病は、2017年現在の執筆時点でも治癒できないばかりか、確実に予防し進行を遅らせる方法すらない。

ご承知のとおり、天使のような子どもたちや、聖人のような父母たちが勇敢にがんと闘う午後のテレビ特集や伝記映画は、「最新の特効薬のおかげで、どうせエンドロール前に完璧に健康を回復するのだろう」と、批評家たちに物笑いの種にされる(確かに感傷的だ)。

だが、アルツハイマー病に関わる人間なら、この病気が完治するというハッピーエンドが描かれれば、たとえあまり現実味がなくても、喜んで感傷に浸るだろう。

アルツハイマー病がこれほど恐れられる第二の理由は、単なる「命取り」では終わらないためだ。致命的な病気はたくさんある(古くさい冗談では、人生こそ命取りだが)。アルツハイマー病は命取りよりたちが悪い。死神が扉を開けるまで、何年も(ときには何十年にもわたって)犠牲者の人間らしさを奪い、家族を脅かす。記憶、考える力、自立した生活を満足に送る能力―すべてが失われた患者は、精神の奈落へと、容赦なくつき落とされていく。

もはや愛する人のことも、自分の過去も、この世界のことも、自身もわからなくなるのだ。

次回も引き続き、『アルツハイマー病 真実と終焉』から

抜粋してお話ししたいと思います。

今回も御一読いただき誠にありがとうございました。

文献1)デール・ブレデセン『アルツハイマー病 真実と終焉』

(ソシム、監修者:白澤卓二氏・訳者:山口茜氏)

2)大熊 輝雄:現代臨床精神医学第12版 金原出版株式会社

3)幻冬舎 GOLD ONLINE 新刊書籍を試し読み

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WHOの認知症予防ガイドライン、ビタミン療法の位置づけとは?

今回も前回に引き続き、WHOが初めて公開した認知症予防ガイドラインについてお話ししたいとおもいます。

ビタミンBE、多価不飽和脂肪酸、マルチビタミンのサプリメントは、認知症予防の観点からは推奨されない
(推奨グレード:強)
過度のアルコール摂取を習慣としている人には、認知症予防の観点から、飲酒量を減らすか断酒が勧められる
(推奨グレード:条件付き)
社会的な交流と支援は人生を通じて健康や幸福に強く関連している。生活において社会的な関わりは必要だ

 認知症のよる社会的・経済的な損失は大きく、治療ケアの不足は世界中で課題になっている。一方で、認知症の危険因子を減らすために取り組めることは多い。WHOは各国に認知症対策の政策を立ち上げることを求めている。

以上のように、ガイドラインではビタミン療法は推奨されていませんでした。ただ、捕足したいのは、まず、ガイドラインでは高いお金をかけて予防することはないという内容であったことです。当院は保険診療内で、ビタミン療法をしております。また、WHOの検討になかった、ビタミンBと鉄剤を当クリニックでの研究結果に沿って組み合わせています。

また、定期的に血液検査をすることにより、比較的安価で安全に施行できますので、ご安心ください。

頭部MRIや脳血流SPECTなどの画像検査や、血液検査、心理検査と組み合わせてビタミン、鉄剤の補充療法をさせていただきますので、ただ、予防的にサプリメントを飲むのとは効果が違う可能性が高いことをここでお伝えしたいと思います。

今回も御一読いただき誠にありがとうございました。

文献1)2019年5月30日 生活習慣改善協会 

2)大熊 輝雄:現代臨床精神医学第12版 金原出版株式会社

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WHOの推奨する生活習慣とは?

今回も前回に引き続き、WHOが初めて公開した認知症予防ガイドラインについてお話ししたいとおもいます。

肥満や過体重のある人では、介入して適正な体重にコントロールするで、認知症のリスクを低下できる可能性がある
(推奨グレード:条件付き)
肥満の人には、栄養バランスの良い食事で、体重を減らすことが勧められる。「グリセミック指数」(GI)は、ブドウ糖を摂取した後の血糖上昇率を100として、それを基準に、同量摂取したときの食品ごとの血糖上昇率をパーセントで表した指標。GIの低い食品は体重コントロールに有用という報告がある。
ウォーキングなどの運動を毎日の生活に取り入れ、座ったままの時間を減らすことも勧められる。
高血圧のある人は、WHOのガイドラインに従い適切な治療を受けるべき
(推奨グレード:強)
高血圧を放置していることが認知症の原因になることが、研究で明らかになっている。高血圧は、健康的な食事、適正体重の維持、運動を十分に行うなど、生活習慣を改善することで予防・改善が可能だ。降圧薬による治療を受けることで血圧をコントロールできるので、治療を受けることが重要。
糖尿病のある人は、適切な治療を受け生活スタイルを改善するべき
(推奨グレード:強)
詳しいメカニズムはまだ分かっていないが、糖尿病の人が血糖コントロールを適切に行わないでいると、認知症のリスクが上昇するという報告ある。血糖コントロールの不良は、認知機能の低下と関連がある。糖尿病腎症、網膜症、聴覚障害、心血管疾患といった合併症は、認知症のリスクを上昇させる。
血糖コントロールを改善し、高コレステロールと高血圧を治療すれば、認知症のリスクが低下する可能性がある。
喫煙は身体の健康を害するだけでなく、認知症と認知機能低下のリスクにもなる。たばこを吸う人は禁煙が勧められる
(推奨グレード:強)

肥満、高血圧症、糖尿病という生活習慣病の改善と、禁煙が

重要という事でした。当クリニックでも以前からこの観点から、

定期的に血液検査をした上で、栄養士指導、生活指導に重点を置いて、治療しております。全国に数ある認知症専門外来の中でもかなり内科疾患や生活指導が充実していると考えています。

今月からは血管年齢測定もしておりますので希望のある方は

お気軽にお声掛けください

今回も御一読いただき誠にありがとうございました。

文献1)2019年5月30日 生活習慣改善協会 

2)大熊 輝雄:現代臨床精神医学第12版 金原出版株式会社

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認知症予防にはなにをすればよいですか?<専門外来質問第二位>

今回は認知症予防についての最新のエビデンスをお伝えしたいと思います。当クリニック認知症専門外来の質問、第二位になります。2019年に世界保健機関(WHO)は認知症と認知機能を予防するための具体的な介入方法をまとめた初のガイドラインの公開を開始した。
 認知症リスクは生活習慣改善により減らせるとして、WHOは各国に対応を求めている。

 新しいガイドラインによると、運動の習慣化、禁煙、アルコール摂取の抑制、健康的な食事、血圧・コレステロール・血糖値のコントロールにより、認知症の発症リスクを減らすことができる。身体にとって良いことは脳にとっても良いことが示されている。

「今後30年間で、世界の認知症の有病者数は3倍に増加すると予測されています。認知症のリスクを減らすために、できることを今すぐ実行すべきです」と、WHO局長のテドロス アダノム氏は言う。

 認知症は、アルツハイマー病や脳卒中など、脳に影響を与えるさまざまな病気や傷害から生じ、記憶、思考、行動、理解、計算、学習能力、言語活動、判断に影響を与える。

 認知症は、世界中で5,000万人が罹患しており、毎年約1,000万例が新たに発症している。認知症を発症し、脳がダメージを受けてしまうと、元の状態に戻すのは多くの場合で困難だ。

 患者だけでなく社会が負う経済的負担も大きく、認知症による社会的費用の損失は2030年までに年間220兆円に膨れ上がると予想されている。公衆衛生上の問題として急速に拡大している。

食事と運動を改善すれば認知症リスクは減らせる

 WHOが公開している「認知症と認知機能低下のリスクを減らすためのWHOガイドライン」の主な内容は以下の通り――。

運動・身体活動には認知機能低下を予防する効果がある
(推奨グレード:強)
65歳以上の成人は、週に合計150分以上の中強度の有酸素運動をするか、週に合計75分以上の強度の高い活発な運動をするべき。有酸素運動は10分以上続けて行う必要がある。
栄養バランスの良い健康的な食事はすべての成人に勧められる
(推奨グレード:条件付き)
野菜や果物、雑穀や玄米などの全粒穀類、マメ類、ナッツ類を十分に食べ、野菜と果物は1日に400g以上を食べることが推奨される。
1日に2,000kcalを摂取している人では、糖類の摂取を5%未満に、脂肪の摂取を30%未満に抑える。脂肪の多い牛や豚などの動物性食品を抑え、食塩の摂取量を1日5g未満にするのが理想的。

ということで、まずは、運動と食事の習慣改善が重要ということでした。次回はさらに細かい生活習慣についてお話ししていきたいと思います。

今回も御一読いただき誠にありがとうございました。

文献1)2019年5月30日 生活習慣改善協会 

2)大熊 輝雄:現代臨床精神医学第12版 金原出版株式会社

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納豆やみそは特に循環器疾患と関連がある?

前回の続きで今回も、納豆やみその発酵食品が死亡率低下に関連しているという研究成果をお伝えしたいと思います。

国立がん研究センターなどの多目的コホート(JPHC)研究グループの研究で発表されたものです。詳細は前回のブログをご参照ください。

死亡原因との関連を見ると、がん死亡リスクに関しては男性、女性ともに大豆製品摂取量と有意な関連が見られなかった。その一方で循環器疾患死亡との関連は、男性において、発酵性大豆食品(納豆とみそ)の摂取量および納豆の摂取量、女性においては納豆の摂取量と有意な関連が認められた。

 具体的には、男性において発酵性大豆食品の摂取量が最も少ない第1五分位群(13.4g/日未満)に比べ、摂取量が最も多い第5五分位群(50.2g/日以上)の循環器疾患死亡のハザード比は0.82で18%リスクが低かった。同様に、納豆を摂取しない群に比べ、摂取量が最も多い群(26.2g/日以上)のハザード比は0.76で24%リスクが低かった。女性では、納豆を摂取しない群に比べ、摂取量が最も多い群のハザード比は0.79だった。

 総大豆食品摂取量は死亡リスクとの関連が見られず、発酵性大豆食品の摂取量との関連は有意という結果について、研究グループでは「発酵性大豆食品は加工の過程で、大豆に含まれている成分の消失が少ないことが理由の1つではないか」と考察している。

という事で大豆の成分が循環器系の疾患の予防によいということでした。以前このブログで、睡眠時無呼吸症候群の治療は循環器系疾患予防に重要というお話しをしました。

併せて覚えて頂ければ幸いです。

今年に入ってから立て続けに、長芋は認知症予防によい、納豆とみそは死亡率低下によいという研究成果が出たのでお伝えしました。

次回は、認知症専門外来の質問第二位

認知症予防のためには、なにをしたらいいですか?

について最新の研究成果からお話ししたいと思います

今回も御一読いただき誠にありがとうございました。

文献1)2020年2月9日 ダイヤモンドオンライン ヘルスデイニュース

2)大熊 輝雄:現代臨床精神医学第12版 金原出版株式会社

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