ベルソムラとこれまでの睡眠薬との違い

今回は、改めて、ベルソムラの特徴を、まとめていきたいと思います。

<メリット>

• 自然な眠気を強くする

• ふらつき転倒のリスクが少ない

• 中途覚醒や早朝覚醒、熟眠障害に有効

• 入眠障害にも効果が期待できる

• 依存性が極めて少ない(やめたいときに辞められる)

• せん妄を起こしにくい

<デメリット>

• 入眠障害には効果が不十分なことがある

• 眠気が残ることがある

• ジェネリックが発売されていない(薬価が高い)

特に以前からよく使われている、ベンゾジアゼピン系/非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は高齢者に使用していますと、ふらつき→転倒→骨折→長期入院→認知症悪化 というパターンが多かったので、その悪循環のパターンがなくなるのが一番のメリットだと思います。

ただ、最初の数日間は、寝つきがそこまでよくならないので、その期間は辛抱が必要です。その辛抱があれば、その後は、「朝がすっきり目覚められる。」と感じる患者様が多いです。

今、睡眠で悩んでいるけど、副作用が強いとか、依存があるという昔からのイメージで薬の治療を諦めていた方がいらっしゃれば是非ご相談ください。

最後に、このベルソムラは、2年ほど前に「ガッテン!」というNHKの番組で取り上げられ反響を呼んだので、その事にも少し触れたいと思います。以下は、ベルソムラの販売元である、MSDのホームページからの抜粋です。

【2017年2月22日放送NHK「ガッテン!」に関して】

2017年2月22日放送のNHK「ガッテン!」にて「最新報告!血糖値を下げるデルタパワーの謎」という特集がありました。

その中で、弊社の不眠症治療薬であるオレキシン受容体拮抗薬を服用し、熟睡することで糖尿病が改善するという内容の放映がありました。

今回の番組はNHKが独自で企画・取材したものであり、MSDからNHKへ情報提供などは行っておりません。

ベルソムラは不眠症治療薬であり、糖尿病治療薬としての適応はございません。

今回も御一読頂き誠にありがとうございます。

参考

 現代臨床精神医学 金原出版株式会社 大熊輝雄    

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MSD connect 日経メディカル 2014/10/14の記事

榎本みのり 認知症の睡眠障害. 老年医学 45:739-743, 2007.

三島和夫 高齢者・認知症患者の睡眠障害と治療上の留意点. 精神医学 49:501-510, 2007.

独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター(精神保健研究所・精神生理部)

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スボレキサント(ベルソムラ)

以前にこのブログでもご紹介したスボレキサント(ベルソムラ)について詳しくお話ししたいと思います。

まず、日経メディカルの記事を提際させて頂きます。

2014年9月26日、不眠症治療薬スボレキサント(商品名ベルソムラ錠15mg、同錠20mg)の製造販売が承認された。適応は「不眠症」で、1日1回20mg、高齢者には1日1回15mgを就寝直前に経口投与する。  

不眠症は日常の生活の質を低下させ、うつ病の危険因子であることが明らかになっている。また、不眠症患者は健常人と比べて糖尿病や高血圧の有病率が高いことが報告されており、これらの発症を助長する危険因子としても注目されている。日本では、成人の3人に1人が「寝つきが悪い」「睡眠中に何度も目が覚める」など何らかの不眠症状を有しているといわれている。  

現在、不眠症治療の中心となるのは薬物療法である。使用される睡眠薬としては、ペントバルビタール(商品名ラボナ)などのバルビツール酸系の依存性の強い睡眠薬から、より忍容性の高いトリアゾラム(商品名ハルシオン他)などのベンゾジアゼピン系、ゾルピデム(商品名マイスリー他)などの非ベンゾジアゼピン系、ラメルテオン(商品名ロゼレム)のメラトニン受容体作動系の睡眠薬に移ってきている。  

睡眠薬の処方頻度が高まる中、高い治療効果はあるものの、一部の患者では長期服用時の依存(耐性、離脱症状、高用量投与、多剤併用)や乱用(過量服用など)が大きな社会問題となっている。  

スボレキサントは既存の薬剤とは異なる、新しい作用機序を有している。すなわち、覚醒を維持する神経伝達物質であるオレキシンの受容体への結合をブロックすることで、過剰な覚醒状態を抑制し、脳を覚醒状態から睡眠状態へと移行させる生理的なプロセスをもたらす、世界初のオレキシン受容体拮抗薬となっている。  

第3相国際共同試験(対象:日本人を含む原発性不眠症患者)では、スボレキサントの3カ月間就寝前投与により、睡眠維持効果および入眠効果が認められている。さらに、6カ月間投与における安全性および忍容性に関しても概ね良好であった。海外では、2014年8月に米国で承認されている。  

第3相国際共同試験では、20.9%に副作用が認められている。主な副作用は傾眠(4.7%)、頭痛(3.9%)、疲労(2.4%)であった。また薬物相互作用としてCYP3A4を強く阻害する薬剤(イトラコナゾール[商品名イトリゾール他]など)とは、本薬の代謝が阻害され、作用が増強する可能性があることから併用禁忌となっている。なお、食後および食直後の服用では、効果発現が遅れることにも注意しなければならない。

というわけで、大変良いお薬なのですが、次回に具体的にどこがいままでの睡眠導入剤と違うのか、ここ5年ほど数多くの患者様にご処方してきた経験も踏まえてお話ししたいともいます。

今回も御一読頂き誠にありがとうございます。

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現代臨床精神医学 金原出版株式会社 大熊輝雄

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MSDconnect 日経メディカル 2014/10/14の記事 MSD 

榎本みのり 認知症の睡眠障害. 老年医学 45:739-743, 2007.

三島和夫 高齢者・認知症患者の睡眠障害と治療上の留意点. 精神医学 49:501-510, 2007.

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認知症の睡眠問題

ここ数年で認知症と高血圧症、認知症と糖尿病、認知症と脂質異常症など、認知症と他の疾患の関連が次々報告されています。 なかでも注目が高まっているのが、認知症と睡眠の関連です。

認知症の睡眠問題

アルツハイマー病などの認知症の方では、同年代に較べてもさらに睡眠が浅く、さまざまな睡眠問題がみられるようになります。重度の認知症の方ではわずか1時間程度の短時間でさえ連続して眠ることができなくなるといわれています。認知症の方では夜間の不眠とともに昼寝(午睡)が増え、昼夜逆転の不規則な睡眠・覚醒リズムに陥るようになります。またしっかりと目が覚めきれず「せん妄」といわれるもうろう状態がしばしば出現します。このような時には不安感から興奮しやすく時に攻撃的になるため、介護の負担が増します。認知症の方の一部では、夕方から就床の時間帯に徘徊・焦燥・興奮・奇声などの異常行動が目立つ日没症候群という現象がみられます。これも睡眠・覚醒リズムの異常が関係していると考えられています。

残念ながら認知症の方の睡眠障害に有効な薬物療法は知られていません。効果が出ても一過性の場合が多く、長期間にわたり使用することは避けなければなりません。効果が出ないからといって睡眠薬や鎮静薬を使いすぎると、強い眠気や誤嚥、転倒・骨折などのために生活の質が低下し、結果的に介護負担が増加します。認知症の方の睡眠障害への対処法を下記にまとめました。即効性はありませんが根気強く続けることをお薦めします。これを参考にしながら「なるべく日中に刺激を与えて覚醒させる」「規則正しい日課で生活リズムを保つ」「夜間睡眠の妨げになる原因をなくす」ことを心がけてください。

認知症の方の睡眠を保つために

1. 就寝環境を整える(室温・照度)

2. 午前中に日光を浴びる

3. 入床・覚醒時刻を規則正しく整える

4. 食事時刻を規則正しく整える

5. 昼寝を避ける/日中にベッドを使用しない

6. 決まった時刻に身体運動する(入床前の4時間以降は避ける)

7. 夕刻以降に過剰の水分を摂取しない

8. アルコール・カフェイン・ニコチンの摂取を避ける

9. 痛みに充分対処する(気づかれていないことも多い)

10. 認知症治療薬(コリンエステラーゼ阻害剤)の午後以降の服薬を避ける

今回も御一読頂き誠にありがとうございます。

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榎本みのり 認知症の睡眠障害. 老年医学 45:739-743, 2007.

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高齢者に多い睡眠障害

今回は、意外と多い高齢者の睡眠障害についてお話しします。

当クリニックでも、認知症疑いで、受診された方の、約半数が中等度以上の 睡眠時無呼吸症候群であり、睡眠の質が正常以上であった方は、約2割と、 イメージよりも高齢者の方に睡眠障害は多いのです。

高齢者に多い睡眠障害

高齢者では退職・死別・独居などの心理的なストレスに加えて、不活発でメリハリのない日常生活、こころやからだの病気、その治療薬の副作用などによって、不眠症をはじめとするさまざまな睡眠障害にかかりやすくなります(「不眠症」を参照)。狭心症や心筋梗塞による夜間の胸苦しさ、前立腺肥大による頻尿、皮膚掻痒症によるかゆみ、関節リウマチによる痛みなどによる不眠などキリがありません。またそれらの治療薬によっても不眠・日中の眠気・夜間の異常行動などの睡眠障害が生じます。

高齢者ではうつ病・認知症・アルコール依存症なども多く、これらの精神疾患によっても睡眠障害が生じます。早めの専門医への受診が必要です。さらに若い頃には影響がなかった生活習慣(運動不足・夜勤など)や嗜好品(カフェインの入った飲み物やアルコール類)でも睡眠障害が生じることがあります。不眠や眠気があったら、その原因を突き止めること、原因に応じた対処を行うことから治療は始まります。

高齢者がかかりやすい睡眠障害があります。中でも睡眠時無呼吸症候群・レストレスレッグス症候群・周期性四肢運動障害・レム睡眠行動障害などは専門施設での検査と診断が必要です。これらの特殊な睡眠障害にはそれぞれの治療法があり、通常の睡眠薬では治りません。これらの睡眠障害が疑われる場合には、日本睡眠学会の睡眠医療認定医へのご相談をお薦めします。 現在日本で使われている睡眠薬は安全性が高いので、過剰な心配はいりません。ただし高齢者では若年者に較べて睡眠薬に対する感受性が高く(少量で効きやすい)、体内から排泄する力も弱くなるので、注意深く使用する必要があります。最近では体のふらつきやめまいなどの副作用が少ない睡眠薬も開発されています。当クリニックでは、睡眠外来もしており、そこで副作用が少ない新しい睡眠導入剤を数多くの患者様にご処方しております。

特にスボレキサント(ベルソムラ)というまだ日本で認可が起きてから5年以内の画期的な新しいお薬をご処方しております。また、この薬に関してはここでも詳しくお話ししていきます。ご興味を持たれた方は、是非お気軽にお声掛けください。

今回も御一読頂き誠にありがとうございます。

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榎本みのり 認知症の睡眠障害. 老年医学 45:739-743, 2007.

三島和夫 高齢者・認知症患者の睡眠障害と治療上の留意点. 精神医学 49:501-510, 2007.

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眠くなってから寝床に入ろう

今回も睡眠をテーマにお話しさせて頂きます。

意外と知られていない事実として、いい睡眠をとる一番のコツは、 眠くなってから寝床に入ることです。寝具にこだわる、お金をかけるのもよいと思いますが、まず一番簡単にできるこの事実を抑えていきたいです。

寝床に長くいすぎていませんか

図2: 年代ごとの睡眠時間

早寝早起きは結構ですが、眠気がないのに「やることがないから寝床に入る」ことはやめましょう。寝つきは悪くなりますし、中途覚醒が増えてしまいます。年齢を重ねるごとに実際に眠れる時間は短くなります【図2】。若い頃の睡眠時間を望むのは無い物ねだりと言えましょう。

図3: 年代ごとの入床・起床時刻

一方で寝床にいる時間はどうでしょうか。高齢者ほど寝床に入っている時間が長いことが分かっています【図3】。睡眠時間が短くなるのに寝床にいる時間が長くなる…。結果として眠れぬままに寝床でうつらうつらしている時間が増えて睡眠の満足度も低下してしまいます。

また、もちろん、寝床に入ってから、テレビ、携帯、ラジオなどはやめましょう。 睡眠の質をすごく下げます。ちょっとした生活習慣を変えるだけで、良い睡眠が取れることになります。是非試してみてください。朝すっきり起きれるようになれるでしょう。

今回も御一読頂き誠にありがとうございます。

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高齢者の睡眠

9月に入って、残暑に台風に雷、天候がころころ変わる日が続くと体調を崩しやすいです。皆様いかがお過ごしでしょうか? こう暑い日が続きますと障害されやすいもの、今回は睡眠がテーマです。

特に最近は、高齢者の睡眠、認知症と睡眠の関係が注目され、テレビや雑誌などで特集されています。これから数回にわたり、できるだけわかりやすくぜひ知っていただきたい基本的な睡眠の知識をお伝えできればと考えています。

今回は、高齢者と睡眠についてお話していきます。

まず、大前提として年齢とともに睡眠は変化します。健康な高齢者の方でも睡眠が浅くなり、中途覚醒や早朝覚醒が増加します。また睡眠を妨げるこころやからだの病気にかかると、不眠症や睡眠時無呼吸症候群などのさまざまな睡眠障害が出現します。原因に合わせた対処や治療が必要です。

年齢とともに睡眠が変化する

年齢とともに体力が落ち、老眼になり、白髪が増えます。それと同じように睡眠にも変化が生じます。

若年者と高齢者の睡眠の比較

第一の変化は、高齢者では若い頃にくらべて早寝早起きになることです。これは体内時計の加齢変化によるもので、睡眠だけではなく、血圧・体温・ホルモン分泌など睡眠を支える多くの生体機能リズムが前倒しになります。

したがって高齢者の方の早朝覚醒それ自体は病気ではありません。眠気が出たら床につき、朝方に目が覚めて二度寝ができないようであれば床から出て朝の時間を有意義に使いましょう。

第二の変化は、睡眠が浅くなることです。睡眠脳波を調べてみると、深いノンレム睡眠が減って浅いノンレム睡眠が増えるようになります。そのため尿意やちょっとした物音などでも何度も目が覚めてしまうようになります。夜中に何度もトイレに目が覚めるのを気にして、夜あまり水分を取らないなどの対処される方もいらっしゃいますが、 夏場、エアコンをつけずに、水分をあまりとらず寝てしまうと、熱中症で命の危険もあるので気を付けましょう。

今回も御一読頂き誠にありがとうございます。

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現代臨床精神医学 金原出版株式会社 大熊輝雄

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認知症の睡眠障害. 老年医学 45:739-743, 2007.

三島和夫

高齢者・認知症患者の睡眠障害と治療上の留意点. 精神医学 49:501-510, 2007.

独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター(精神保健研究所・精神生理部)

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脳梗塞・心筋梗塞のリスク検査

今回は、熱中症を重症化させないための一つの予防対策として、 LOX-index をご紹介いたします。 特に、脳梗塞は6-8月に多く、次に冬に多いので、注意が必要です。

LOX-indexとは、動脈硬化の進行リスクを測定し、将来の脳梗塞、 心筋梗塞の発症リスクを評価する検査です。将来のリスクを知ることで 予防や改善へ役立てていただくための指標であり、疾患の有無を 確定するためのものではありません。

検査方法は、日本国内で行われた約2500名を11年追跡した研究 成果がベースとなっており、血液中に存在する“sLOX-1(LOX -1の血中濃度)“と”LAB(参加変性したLDL)“の2項目を測定 し、その積をLOX-indexとして評価しています。

リスク評価は、 高リスク、中高リスク、中リスク、低リスクの4段階となります。 リスクの設定方法は大阪府の吹田市で行われた吹田スタディに基づき、 パラメトリック法を用いて評価を行っています。

脳梗塞もしくはラクナ梗塞のリスクをあまり気にせず放置すると、熱中症時の重症化のリスクになるだけでなく、将来において認知症発症のリスクを高めることにつながることもあるかもしれません。

気になることがあれば気軽に当クリニックへご相談ください。

今回も御一読いただき誠にありがとうございました。    

参考 

現代臨床精神医学 金原出版株式会社 大熊輝雄    

DSM-5 医学書院 日本精神医学学会  

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世界初の「熱中症ガイドライン」の御紹介(2)

今回も、日本が世界に先駆けて提唱した熱中症ガイドライン2015を解説している日経メディカルの記事から重要なところを抜粋してお話ししたいと思います。

表1 日本救急医学会熱中症分類2015「付記」(熱中症診療ガイドライン2015より)

熱中症の重症形である「熱射病」の3主徴「意識障害、体温40℃以上、発汗停止」の有無に固執するあまり、病状を過小評価し対応が遅れることを防ぐ狙いがあり、同分類では、暑熱環境にいる、あるいはいた後の体調不良は全て熱中症の可能性があると認識し、対応することを求めている(表1)。

「暑熱曝露が短いほど予後がいいことは明らかであり、熱中症は早期発見・治療が不可欠。現場対応でよいI度と、医療機関の受診を要するII度の見極めは一般市民が行う必要があるため、分かりやすいシンプルな分類となっている」。

ガイドライン執筆者の一人である都立多摩総合医療センター救命救急センター長の清水敬樹氏は、こう説明する。

一方、II度とIII度は医療現場での判断となる。

中枢神経症状、肝・腎機能障害、血液凝固異常などの臓器障害を呈するIII度は入院加療が必要だ。ただし、中枢神経障害はGCS(Glasgow Come Scale)で評価できるが、そのほかは血液検査結果を見なければ判断できない。採血結果がすぐに分からない診療所などでは、「意識レベルや歩行の可否、脈の状態、食事の摂取状況など患者の全身状態から入院治療の必要性を判断してほしい」と三宅氏は話す。

中でも、高齢者に多い非労作性熱中症の場合、「独居や寝たきり、悪性腫瘍や心疾患、精神疾患といった基礎疾患の既往、降圧薬・利尿薬・向精神薬の服用歴などがあれば、入院や死亡のリスクが高いため注意が必要だ」(三宅氏)。

清水氏も、「オーバートリアージでも構わないので、意識レベルが普通でない時点で中枢神経障害を疑い、入院施設のある医療機関に紹介してほしい」と念を押す。

 III度は38℃台まで速やかに冷却

多摩総合医療センターでは、多い年で1シーズンに120人ほどの熱中症患者をERで受け入れている。来院時、意識障害があればIII度と判断し、なければ採血し肝機能腎機能凝固系を確認する。その間に脱水補正のための輸液を行い、採血の結果、異常を認めなければII度と判断し、体調回復を待って帰宅させる。臓器障害が疑われる場合や、II度であっても高齢独居など自己管理が難しそうな場合は、入院させる――というのが大まかなフローだ。

III度熱中症患者の治療についてガイドラインでは、病院到着後は直腸温をモニタリングし、深部体温が38℃台になるまで全身管理の下で冷却処置を効果的に行うことが後遺症を生じさせないために重要、としている。HsSのデータを基に、III度の患者を死亡または中枢神経障害などの後遺症を生じた群と後遺症なく生存できた群に分けて検討したところ、38℃に下げるまでの冷却時間が前者で有意に長いことが示されたためだ。

ガイドラインには、熱中症の予防・治療として、0.1~0.2%濃度の食塩水、現実的には市販の経口補水液の摂取を推奨するなど、一般市民向けの対応も盛り込まれている。「医療現場のみならず、学校や職場、介護現場などでもガイドラインを活用してほしい」と三宅氏は話している。

ガイドラインには、予防の取り組みとして、市販の経口補水液摂取など 一般的なことを取り上げていますが、もう一歩踏み込んで夏になるまでにできる予防対策として、熱中症やその手前の脱水状態の時にいかに、 重症化させないかという観点があります。その中で当クリニックがお勧めしているのは、脳梗塞、や心筋梗塞のリスクをあらかじめ検査で把握しておくというものです。

次回には、この脳梗塞・心筋梗塞のリスク検査 LOX-indexについて御紹介いたしたいと思います。

今回も御一読頂き誠にありがとうございます。

参考 

現代臨床精神医学 金原出版株式会社 大熊輝雄    

熱中症ガイドライン2015 日本救急医学会    

【日経メディカルAナーシング pick up】2015年6月22日の記事

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世界初の「熱中症ガイドライン」の御紹介

最近本当に暑い日が続きますが皆様いかがお過ごしでしょうか? これだけ暑いと本当に怖いのが熱中症です。どれだけ恐ろしいかというと、「ひらパー」の愛称で知られる大阪府枚方市の遊園地「ひらかたパーク」で7月、着ぐるみ姿でショーの練習をしていたアルバイト男性(28)が熱中症で死亡されました。男性が着ぐるみ姿で踊ったのは日没後のわずか20分間。複数の要因が重なった事故とみられますが、今後は熱中症に対し、一人一人が正しい知識を身に着け 予防をしていかないといけません。

そこで今回は、世界初の熱中症専用のガイドラインである、日本救急学会が発行されている、「熱中症ガイドライン2015」をご紹介したいと思います。以下は【日経メディカルAナーシング pick up】2015年6月22日の記事からの抜粋になります。

2015年3月、日本救急医学会が国内外で初となる「熱中症診療ガイドライン2015」を発行した。 「わが国のひと夏(6~9月)の熱中症の発生数は、多い年で40万人。死者こそ少ないが、年間の脳卒中患者数に匹敵する数でありインパクトは大きい。一方で、治療といえば輸液など教科書的な記載しかないことから、国内外の知見を集め体系化したいと考えた」。ガイドライン作成委員長を務めた三宅康史氏(昭和大学医学部救急医学講座教授)は、発行の経緯をこう説明する。 ガイドラインは、「予防・治療には何を飲めばいいか?」「熱中症の重症度の判定は?」「新たな冷却方法の有効性は?」など、11のクリニカルクエスチョンから成る。全国の救命救急センターや大学病院などを対象に隔年で行っている熱中症の全国調査「Heatstroke STUDY」(HsS)をはじめ、国内の診療実態も反映した内容だ。

まず、大事なのは、熱中症では、大量の発汗があり、めまい、立ち眩み、生あくびなど、つい見逃しがちな初期症状があり、頭痛や虚脱感、倦怠感などがあれば、甘くみず、病院に行った方がいいという事です。特に認知症の初期症状で、体温調節がうまくできなくなり、リモコンの使い方がわからなくなった方は、エアコンをつけようとしません。夜間自宅でも、熱中症にかかる可能性があります。御家族様がよく注意してあげて、熱中症予防に取り組みましょう。

次回も、熱中症ガイドライン2015 から重要なことをお話ししたいと思います。

今回も御一読頂き誠にありがとうございます。

参考 

現代臨床精神医学 金原出版株式会社 大熊輝雄    

熱中症ガイドライン2015 日本救急医学会    

【日経メディカルAナーシング pick up】 2015年6月22日の記事

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ホルモンは認知機能の最適化に重要な役割 <リコード法の基本と尼崎療法の共通点(5)>

前回は、炎症反応、ストレスのお話をしました。 その際にストレスに係る、コルチゾールというホルモンについてお話ししました。実はホルモンも認知機能の最適化に重要な役割をはたしています。今回はホルモンについていくつかお話ししてきたいと思います。

多くのホルモンは特にシナプスの形成と維持をサポートすることにより、認知機能の最適化に重要な役割を果たします。ホルモンレベルが低下し、バランスがシナプスを破壊する側になると認知力は低下する。特に重要なものを以下にお話ししていきます。

アルツハイマー病(認知症、軽度認知機能障害、主観的認知機能障害)では一般的に甲状腺機能が低下している。 甲状腺機能は代謝速度にも影響し、心拍数や頭の冴えにも影響する。 なので甲状腺ホルモンの状態を知る事は必須。 甲状腺ホルモンの状態は「遊離T3」「遊離T4」「リバースT3」「TSH(甲状腺刺激ホルモン)」 のレベルを測定する事で評価できる。 方法は簡単で自分の代謝スピードは「基礎体温」を測れば簡単に測定できる。

(方法)

(1)夜寝る前に体温計をベットの隣に置いておき、起床後直ぐに測れる状態にしておく。

(2)朝起床後直ぐ(ベットから出る前)に体温計で体温を測る。

(3)体温が36.6~36.8度の間にあれば問題ないが、体温が低い時は甲状腺機能の低下の可能性がある。

以前にお話しした栄養素、炎症だけでなく、ホルモン値の測定も非常の重要です。甲状腺ホルモンの基準値を以下に示します 。

遊離T3(活性型で寿命約1日の甲状腺ホルモン):最適レベルは3.2~4.2pg/ml

遊離T4(寿命約1週間の貯蔵型ホルモン):最適レベルは1.3~1.8ng/ml

リバースT3(甲状腺の活性化を阻害):最適レべルは20ng/dl未満

TSH(甲状腺刺激ホルモン):最適レベルは2.0μIU/mL未満

多くの医師がチェックするのは「TSHのみ」。TSHだけでは甲状腺機能が低下した患者を多数見逃す。 TSH高値は甲状腺機能の低下を示す可能性があり、一般的な正常値は0.4-4.5μIU/Lであるとされているが、2.0を超えていれば、全て検討する必要がある。

しかし実際にはTSHが正常値でも甲状腺機能が低下している可能性がある為、追加の甲状腺ホルモン検査を行う必要があります。

性ホルモンのエストロゲンも、認知症の予防において決定的な役割を果たしている。 エストロゲンとプロゲステロン、エストラジオールとプロゲステロンの比率も重要。この比率が高いと「物忘れ」と「記憶力の悪さ」に関連する。

(目標値)

エストラジオール:50~250pg/mL

プロゲステロン:1~20ng/mL

エストラジオール/プロゲステロン比:1/10(症状により最適化する)

性ホルモンのテストステロンはニューロンの生存をサポートする。(男性の方がより高濃度)

テストステロン濃度が低い(全体最下位1/5に該当するレベル)

男性はアルツハイマー病のリスクが高い。

(目標値)

総テストステロン濃度=500~1000ng/dL

遊離テストステロン=6.5-15ng/dL

今回は、認知機能に係る特に重要なホルモンをお話ししました。 これらのホルモンは認知機能ばかりでなく、精神症状に係るものとして、精神科でも有名なホルモンになります。特に、甲状腺ホルモン、エストロゲンは、女性において特に更年期障害の時期に重なり、大きく変動します。ただの更年期障害とあまり気にせず放置すると将来において認知症発症のリスクを高めることにつながることもあるかもしれません。

気になることがあれば気軽に当クリニックへご相談ください。

今回も御一読いただき誠にありがとうございました。    

参考 

現代臨床精神医学 金原出版株式会社 大熊輝雄

 アルツハイマー病 真実と終焉 ソシム デール・ブレデゼン    

東洋経済オンライン2018年2月16日。5月11日

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