適応障害について ②

適応障害は症状の原因となったストレスがはっきりしていることが特徴です。少し考えてみれば「最近ショッキングなできごとや環境の変化があった」と症状の原因に思い当たります。あるいは、考えるまでもなく、ずっと頭を離れず、悩み気持ちがふさいでいたりすることもあります。

適応障害の診断基準(米国精神医学会による)にも、原因ストレスから三カ月以内に発症すると明記されています。

適応障害の大きな特徴に、症状は六カ月を超えないということがあります。原因となるストレスが取り除かれればすみやかに軽快します。この時間的な関係が重要なのです。ストレスが消えても六カ月以上症状が残るのであれば、別の病気、たとえばうつ病や気分障害、不安障害などが続いて発症したと考えます。ただ、ストレスの中には職場の人間関係のように、簡単に取り除けないものもあります。そのため適応障害が慢性化することもあります。

適応障害になる人は、まじめでがんばりすぎるタイプというのがこれまで多かったのですが、最近は違うタイプも増えてきています。

社会に出るまでの経験が少なく、困難な状況を乗り越えたり、折り合いをつけたりしたことがほとんどないタイプ、多くは20代から30代です。少し注意を受けただけで非難されたと受け取り、それに耐えられない、うたれ弱い人たちです。こうしたタイプは、ストレスとなった環境を変えてもなかなか改善していきません。治療にある程度の時間をかけて、じっくり取り組んでいきます。本人が、病気を誰かのせいにしたり、誰かに治してもらおうと頼ったりせず、自分で治そうと強く思うことが重要です。

 

参考 現代臨床精神医学 金原出版株式会社 大熊輝雄

適応障害のことがよくわかる本 講談社 貝谷久宣

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適応障害について ①

適応障害という言葉を聞いたことはありますか?

聞いたことはあってもよくわからないという方がほとんどだと思います。

適応障害は睡眠障害やパニック障害、うつ状態、非定型のうつ病とよく似ているとがあります。ポイントは、ストレスが原因かどうかです。

適応障害は、就職、進学、結婚や離婚などのストレスに適応できずに生じる病気です。そのため、会社や学校、家庭や近隣など、社会生活に支障が出てきます。環境の変化にうまく適応できなくても日常生活はなんとかできる人も多くいます。一方、本人が環境の変化に苦痛を感じていて、健康な生活ができないなら、病気の範疇に入ります。

適応障害は、いわば病気と健康の境目にある「状態」です。

適応障害は特徴のない病気です。

適応障害の精神症状は不安、抑うつ、焦燥感、過敏、混乱など多彩です。また、倦怠感、頭痛、腹痛などの身体症状や遅刻、欠勤、犯罪などの行動面にも表れます。いずれの症状も適応障害に特有というわけではありません。医師は症状からだけではなく、病歴や環境など多面的に検討します。

 

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認知症患者の徘徊について

また、徘徊も大きな問題になります。家族・介護者が一番驚かれるのが、普段ほとんど歩かなかったり、数分歩くのを嫌がるような患者様であっても、自宅から5キロ、10キロほど離れた場所で見つかることもあるからです。また、徘徊で問題になるのが、患者様が事件、事故に巻き込まれる可能性が高いからです。一番衝撃が大きかった事件としては、平成19年12月7日愛知県大府市で徘徊症状のある男性が電車にはねられ死亡。男性は当時「要介護4」の認定を受けていた。事故後、JR東海と遺族は賠償について協議したが合意に至らず、平成22年JR側が「運行に支障が出た」として遺族に720万円の支払いを求めて控訴した。この裁判は、平成28年3月最高裁が、男性の妻に賠償を命じた2審名古屋高裁判決を破棄、JR東海側の逆転敗訴を言い渡し、判決が確定しました。

この際に争点になったのは、認知症高齢者を介護する家族の監督義務。一審では「目を離さず見守ることを怠った」と男性の妻の責任を認定。長男も「事実上の監督者で適切な措置を取らなかった」と責任を認定。

二審名古屋高裁では「20年以上男性と別居してり、監督者に該当しない」として長男への請求を棄却。妻の責任は1審に続き認定。ただ、同居妻も「要介護1」の認定を受けていたこともあり、最高裁ではJR東海側の訴えを退ける形となった。

ここで重要なのは、もし監督責任があると認められたら、家族を喪い悲しんでいる家庭に賠償責任が発生しうるという恐ろしい事実です。こういうだれもが不幸になる事故は絶対に防がないといけません。

こういった、陽性症状、徘徊への第一選択薬が漢方薬になります。第一選択薬になる理由は、副作用が圧倒的に少ないことです。陽性症状の治療の候補になる薬は、内科などで処方される薬に比べ、副作用が早く出現する、かつ頻度が多いことがあります。そのため、副作用が少ない漢方薬を進めるのですが、デメリットとしてすぐには効果を発揮せず、効き目もマイルドである事です。また、粉薬で苦く、一日三回と多いので薬をきちんと飲むことが難しい(服薬コンプライアンスが悪くなりやすい)という問題点もあります。そのため、これらのことを患者様、家族に確認し、処方いたします。

第二の候補としては、抗精神病薬をごく少量(最大用量の10分の1以下)処方する方法です。抗精神病薬とは、陽性症状、陰性症状、認知機能障害の3つの症状を特徴とする統合失調症という若年発症の精神疾患に対して作られた薬の事です。元々、幻覚、妄想という陽性症状に効果がある事をコンセプトに作られているお薬なので、一番効果を期待できる薬になります。ただ、よだれがでる(流涎)や眠気が出ることがある、長期投与することで飲み込む力(嚥下機能)が低下することがある、などの副作用が出やすいことから慎重に状態を見ながら調整することになります。また薬によっては血糖値を上昇しやすいなどの症状もあります。これら良い効果だけではなく副作用があるため、精神科専門医以外では処方の調整が困難であると言われています。当クリニックの医師は精神科の専門医であるため、安心してお気軽にご相談ください。

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周辺症状について

周辺症状についての家族、介護者からの訴えで当クリニックにおいて最も多いのがもの盗られ妄想をふくめた妄想である。

一番典型的なのは、お金、通帳などを盗られたというものであるが、他にも着物や下着、日用品、食品などいろいろな物品の訴えがあるので、家族・介護者は余計に困惑する。このもの盗られ妄想が悪化すると、警察に連絡する、カギを何度も交換するなどの行動にでて、非常に対処に苦慮するようになります。

次によく見るのが易怒性、おこりっぽくなるです。そしてこれがひどくなると、攻撃性に繋がったり、介護拒否に繋がってきます。これらを認知症における陽性症状と当クリニックでは呼称しています。これらの症状は、何よりも早期に解決しないといけません。何故なら、数日から数週間の遅れがアルツハイマー病患者と家族、介護者の間に決定的な溝を作る可能性があるからです。当クリニックでは、初めての診察の際でも特にこれらについて詳しくお話を伺います。状況によっては、認知症の中核症状に対する治療よりも優先して治療を開始します。

認知症の患者様の周辺症状に対し、家族・介護者が注意しても患者様は認知症の症状によりその具体的な内容を理解して覚えておくことができません。しかし、人間に備わった本能により怒られた事のみは記憶します。そのため、患者様としては、「私は何も悪いことをしてないのにすぐに怒られる」と認識してしまい、それを他人に伝えるようになります。これが家族・介護者のストレスを大きく増大し、溝を生じていきます。

これらを解消するために当クリニックでは陽性症状を早期発見し、早期治療を開始します。

 

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アルツハイマー病と薬

アルツハイマー病治療薬の第一選択薬は、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬である。メマンチン(メマリー)は軽度アルツハイマー病に適応がないため、早期発見、早期治療の原則からすると軽度アルツハイマー病に適応のあるアセチルコリンエステラーゼ阻害薬が選択されるべきである。これが原則にはなる。さらに、中核症状だけでなく、周辺症状の評価も治療薬選択の重要な条件となる。ただ、現在にある4種類の薬はそれぞれ特徴があるので患者個々の症状に即して当クリニックでは処方している。

ドネぺジル(アリセプト)は、もっとも古くから発売されているアルツハイマー病治療薬であり、軽度から高度までの適応をもつ日本で唯一の薬でもある。特徴としては、アパシー(無気力および感情鈍麻>や抑鬱に効果があり、賦活系のタイプの薬である。あえて乱暴な言い方をすると抗うつ薬的キャラクターの薬剤である。したがって、活気のない物忘れタイプに、より有効であると考えられる。

ガランタミン(レミニール)は不安や易刺激性に効果があり、もの忘れがあって不安で落ち着きのないタイプに有効である。乱暴な言い方で抗不安薬的キャラクターの薬物といえる。

リバスチグミン(リバスタッチ)は日常生活動作の改善効果が示されており、実行機能障害を改善するキャラクターの薬物といえる。物忘れがあって、身の回りのことがうまくできないタイプに有効と考えられる。

また、不整脈や消化器潰瘍があるためにアセチルコリンエステラーゼ阻害薬の投与がためらわれる症例の場合には、メマンチン(メマリー)が第一選択になりうる。メマンチンは興奮や攻撃性に効果がある鎮静系のタイプである。これも乱暴ない方で抗精神病薬的キャラクターの薬物といえる。したがって、にぎやかなタイプの物忘れにより有効であると考えられる。ただし、一部賦活化される方もいるので注意が必要である。

上記のように、薬を決定するためには治療のターゲットとなる症状を患者様の様子、家族・介護者のお話から正確に評価することが最大のポイントとなり、次のような使い分けが有用になる。

  • 活気のないタイプにはドネぺジル
  • 不安で落ち着きがないタイプにはガランタミン
  • にぎやかなタイプにはメマンチン
  • 服薬コンプライアンスが悪いタイプにはリバスチグミンのパッチ剤。ただし、リバスチグミンも自ら進んでパッチを張るくらいの患者の方がより高い効果を得られることがわかっている。

以上を基本的な治療としながら、周辺症状にすばやく対処することを念頭に置いて薬物療法を進めています。また個々の患者様の状態を見ながら鉄剤ビタミン療法もおすすめしています。また睡眠状態にもより注意して診察をしております。

文献1)島田 裕之:基礎からわかる軽度認知障害 医学書院

2)大熊 輝雄:現代臨床精神医学第12版 金原出版株式会社

3)一宮 洋介:認知症の臨床 最新治療戦略と症例 メディカルサイエンスイン

ターナショナル

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アルツハイマー病とは

アルツハイマー病は日本における認知症患者の約6%を占め、認知症の代表的な疾患として取り扱われている。2008年の厚生労働省の調査では高齢認知症患者の55%がアルツハイマー病と報告されている。ちなみに、2位は血管性認知症で30%、残り15%がその他の疾患である。また、某高齢者医療センターの認知症治療病棟における臨床統計(2008年)では、入院患者の58%がアルツハイマー病であった。

1970年代頃までは、日本の認知症の主な疾患は脳血管性認知症であった。しかし、1990年を境にアルツハイマー病が認知症領域で一位になり、以降ずっとトップの座を占めている。それは、公衆衛生活動の充実から脳血管障害の危険因子が減少したこと、生活様式や食生活が欧米化したこと、など色々な要因が挙げられるが、一番の要因はなんといっても高齢化である。アルツハイマー病の最大の危険因子は加齢といわれている。そもそもアルツハイマー病とは1906年にドイツの精神科医アロイス・アルツハイマーが報告した症例に由来する。それは51才で認知症を発病し、4年あまりの経過でなくなった女性症例である。剖検脳を調べると老人班と神経原線維変化とよばれる通常の脳にはない組織が見られた。このことからアルツハイマー病と呼ばれている。

病理所見の特徴は、びまん性の大脳萎縮で、通常1,400gある脳重量が1,000g以下となる。神経病理学的には(顕微鏡で見ると)神経細胞脱落、老人班、神経原線維変化の出現を認める。最近の研究で、老人班として沈着するアミロイドはβ(ベータ)蛋白からなることがわかっており、神経原線維変化はリン酸化されたτ(タウ)蛋白からなることが判明している。当院のMCIスクリーニング検査は、この老人班に関わるアミロイドβ(ベータ)ペプチドを排除する機能を持つ3つのタンパク質を調べることでMCIのリスクを判定するものである。

文献1)島田 裕之:基礎からわかる軽度認知障害 医学書院

2)大熊 輝雄:現代臨床精神医学第12版 金原出版株式会社

3)一宮 洋介:認知症の臨床 最新治療戦略と症例 メディカルサイエンスイン

ターナショナル

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軽度認知障害(mild cognitive impairment:MCI)

軽度認知障害とは、正常加齢と認知症の限界領域であると定義されている。

近年MCIも注目されており多くの臨床的、疫学的研究が国内外で実施されている。

厚生労働省の平成23年度科学研究費による班研究(主任研究者:朝田 隆 筑波大学教授によれば、65歳以上の高齢者における認知症の有病率は推計15%であり、2012年度の人口推計から認知症高齢者の推計値は約462万人と報告されている。年代別にみると75歳未満が10%未満なのに対し、75歳以上の後期高齢者になると有病率は急増する。

85歳以上では40%を超え、95歳以上では80%以上となることが推計されている。

そして、MCIの推定有病率は13%であり、約400万人がMCI高齢者と推計されると報告されている。別の研究では、MCI高齢者の約半数は5年以内にアルツハイマー病(AD)に移行することが明らかにされており、正常高齢者とは明らかに異なる高い発症率を示している。一方でMCI高齢者のなかには、正常認知機能に回復するものも含まれ、いわば予後の多様性がひとつの特徴とも言える状態であろう。現時点のADの根本治療法のない状況では、可塑性が大きいとされるMCIの早期診断と早期介入によるAD発症予防あるいは発症先送りが認知症予防の視点から極めて重要である。現時点ではその具体方策としては薬物療法ではなく非薬物療が一般的には推奨されているが、確立したものはまだ提唱されていない。このような状況であるからこそ、当クリニックでは、MCI高齢者に対処療法として鉄剤ビタミンの投与を採用しており、この治療法は英国の医学雑誌「Lancet」に掲載され注目を集めた。実際に臨床の現場で鉄剤ビタミン療法に携わっていると特にその効果を実感したご家族から感謝されることが多い。ビタミン剤は、特に副作用もなく、尿が黄色くなり独特の匂いがあるくらいであるが、鉄剤は便が黒くなる、便秘になりやすい、定期的な採血によるコントロールが必要になるなどの一面もあるが、そのデメリットを上回るメリットを感じられているご家族が多いのだと推察している。

重ねて申し上げるがMCI高齢者に対する鉄剤ビタミン療法は、対処療法であり、認知症発症の先送りである。がしかし、その先送りされた数年がご家族にはとても重要である。数年の間に住宅事情、同居なども含めた環境調整、介護保険などの書類申請、その後デイサービス、ショートステイなどの利用準備、あと特に大事な心の準備である。

これらすべてに、先送りされた数年はとても大きな役割を果たすことになります。

またこの期間に認知症予防への気づきと生活習慣の変容をもたらすことから、不利益より利益がはるかに大きいと判断されているのだと推察している。

文献1)島田 裕之:基礎からわかる軽度認知障害 医学書院

2)大熊 輝雄:現代臨床精神医学第12版 金原出版株式会社

3)一宮 洋介:認知症の臨床 最新治療戦略と症例 メディカルサイエンスイン

ターナショナル

平成30年7月20日

院長 福本 素由己

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熱中症

今年も梅雨の時期を迎え、気温や湿度の上昇により熱中症のリスクが高まってきました。

認知症(アルツハイマー病)の患者の多くに、低体温症の傾向が観られます。なぜそうなるか。その原因は脳にあり、脳の視床下部の体温調節中枢が巧く働かないことにあると考えています。低体温、水分不足により体感が低下することで熱中症を起こしやすくなるのです。

今年の夏も酷暑と予想されますが、認知症(アルツハイマー病)の患者の介護にあたる方々は、室内の温度調節やこまめな水分補給に気を配り、熱中症に十分に注意してください。

これは簡単ですが、しかしとても重要なことです。

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少子高齢化

厚労省の調査によれば、2025年には65歳以上の5人に1人は認知症になると言われています。今後も高齢化が急速に進む中、認知症患者も予想の域をはるかに越えて急増すると私は考えている。

認知症患者が増加すれば、若い世代に経済的且つ大幅な介護の負担がかかることとなり、日本の将来は方途に迷うことになる。現実的な問題として、介護職の処遇改善が図られなければ、今後益々介護の担い手が減少していくであろう。

少子高齢化の現実が日本の将来の現実像を示している。日本人としてこの現実を厳しく受け止め、将来を見据えて考えていかなければならない。

 

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透明な脳 ~第七章 鉄剤療法の作用機序

かつて脳の神経系統は、血管網のように綿密に繋がっていると考えられていたが、今日では、ニューロンという脳細胞の単位に分かれていて、神経伝達物質の分泌によって必要な部分が連結されることが分かっている。その神経伝達物質の生合成に必要な補酵素がビタミンB6である。また、そのエネルギー源となるのが、コエンザイムQ10とクエン酸第一鉄である。

ちなみにビタミン剤の大量投与は、これまでもアルツハイマー病患者に対して行われてきたが、著しい効果が報告されたことはない。わたしが考案した療法の特徴は、これまで一般的だった投薬に加えて、クエン酸第一鉄を投与することである。

自著「透明な脳」より

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