認知症治療に必要なキョウヨウとキョウイク③

以前の当ブログで、日本にはデイサービスやショートステイという介護の良質なシステムがあるのに、イメージがあまりよくなく、宝の持ち腐れ状態ではないかとお話ししました。もちろん、制度的にも改善すべき点は多々あります。

ただそれ以上に、利用開始にあたり、当クリニックの患者様のなかにも、躊躇する方が多数いらっしゃいます。その多くが「みんなで集まって体操してご飯食べる、お年寄りが行くところ。それやったら家で毎日歩くから大丈夫。まだいかなくてよい。」とおっしゃっています。

しかし、アルツハイマー病の進行抑制ではなく、治療の新薬が発売されるのであれば、デイサービスなどの考え方も変えていき、「軽度認知障害の方が気軽に行ける学校や、サークル、ジム的なところ」が必要になってくるのではないでしょうか。

その役割を、デイサービスが果たせればベストですが、もしかしたら新たにそういった業種が生まれてくるかもしれません。肉体改造ジム RIZAPの成長、認知が広がるとともにジムなどのイメージが変わったような変化が出てくるかもしれません。

その一つの形態としては、今年になって、フジテレビのホンマでっか!TVやワイドナショーそのほか多数のテレビ、メディアに取り上げられているカジノ型デイサービスです。

お年寄りを引きこもりにさせない、特に外に出たがらない男性をどう引き込むかの取り組みとして、注目されています。また、諏訪東京理科大 脳科学の篠原教授のお話では、 「麻雀が脳の一部を活性化させ認知機能を高めるという研究結果はいくつかある。リハビリや機能訓練は、楽しみがなければ続かず、その効果も高まらないので、ゲームによるドキドキ感を一律に否定する必要はない。重要なのは、食事や体調管理、運動などとの複合的な取り組み。」であるとされています。

実際に、埼玉県の和光市は、10年以上前から高齢者対策に乗りだし、アミューズメント・カジノとよばれる、カジノを取り入れたデイサービスや特別養護老人施設を市を挙げて設立し、「和光モデル」とよばれる独自のノウハウを確立、成果をあげています。介護を必要とする状態の人がどれぐらいいるかを示す「要介護」認定率は、2014年のデータで和光の場合は10.2%と、全国平均の17.4%を大きく下回っています。

麻雀はMリーグというプロリーグも今年10月に新設され、マインドスポーツとして、オリンピック競技への採用を目指すとされています。

デイサービス、麻雀、などが持つ既存のイメージが変わり、ポジティブなイメージに変われば、高齢者の引きこもりを防ぐ効果的な対策として注目されるようになるのではないでしょうか。

文献1)大熊 輝雄:現代臨床精神医学第12版 金原出版株式会社

2)東洋経済オンライン:2014年2月28日掲載記事介護が少ない街、和光市の秘密

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認知症治療に必要なキョウヨウとキョウイク②

前回のブログと同じような考え方で、より耳障りの良い、知的センスあふれる表現が、2013年7月14日朝日新聞「天声人語」にありました。

以下に引用させていただきます。

体が引き締まり、日に焼け、すこぶる元気そうである。すこし前に退職した会社の先輩と先日偶然会い、立ち話をした。日々の暮らしぶりを楽しげに語ったが、そこには秘訣があるらしい。▼「キョウヨウ」と「キョウイク」なのだという。教養と教育かと思いきや、さにあらず。「今日、用がある」と「今日、行くところがある」の二つである。なるほど何も用事がなく、どこにも行かない毎日では張り合いがあるまい。かつての同僚から聞かされて実践しているという。▼その同僚も誰かから聞いたというから、かなり流布している教えなのだろう。調べてみると、『頭の体操』で知られる心理学者の多湖輝(たごあきら)さんの著書に行き着いた。一昨年に出した『100歳になっても脳を元気に動かす習慣術』で紹介している。▼多湖さんも100歳に近い大先輩に教わったのだそうだ。「ボケないための頭の使い方」を実に巧みに表現した言葉だと絶賛する。老後をどう生き生きと過ごそうかと誰しも考える。この話はわかりやすく、納得感もあるから、伝言ゲームよろしく広がっていくのも道理だろう。▼日々の原稿に追われる身としてはまだ先の話と思いたくなるが、山登りや畑仕事に忙しい件(くだん)の先輩に諭された。「いまのうちから考えておけ」。たしかに定年を迎え、突然訪れた空白の時間の大きさに心身の失調をきたす人もいると聞く。▼生来のものぐさ向けのボケ防止策はないものか。多湖さんも勧めるようにせめてよく笑うことにしようか。

この、今日行くところ、今日行く用事、ある意味小学校的な存在を適切に利用することが、今後認知症予防で重要な観点になると考えています。

文献1)2013年7月14日朝日新聞「天声人語」

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認知症治療に必要なキョウヨウとキョウイク①

認知症診療に携わらせていただいて、すごく実感していることの一つが、「お年を召されていくとヒトは、どんどん子供のようになっていき、やがて赤子のようになっていく」ということです。

例えば、アルツハイマー病の初期から、衰えていく日常生活能力を順に記しますと

  1. 金銭管理
  2. 一人で買い物
  3. 新しい場所に行くのが困難
  4. 料理、食事の用意
  5. 電話(頻回にする、もしくは電話にでれない)
  6. 季節にあった服を選べない、着替えが一人でできない
  7. 入浴を嫌がる
  8. 排泄のトラブル

もちろん、患者様によって多少のずれはありますが概ね、皆さん同じ経過をたどります。逆にしていくと、赤子から小学生、思春期くらいまでの成長と一致する部分も多く見受けられます。これらを踏まえ筆者の中では、認知症とは単なる短期記憶の障害ではなく、「ヒトが仲間と一緒に暮らしていくために、サルからの進化過程で手に入れた社会性の基盤」が欠落していく疾患という風に愚考しています。

以前にもブログでお話ししましたが、アルツハイマー病の周辺症状、特に易怒性に最近よく使われる抑肝散という漢方薬などは、昔から赤子の夜泣きによく使われていたというのは非常に合点がいくところです。

以上のことから筆者は、軽度認知障害とアルツハイマー病の境界くらいからアルツハイマー病に進行するのを予防するためには、子供時期でいう小学校のような存在が必要ではないかと愚考しております。

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芸術療法のエビデンスと運動療法としてのヨガ③

この毎日続ける、つまり習慣化することが非常に大事であると、認知症予防、治療の第一人者であられる、東京医科歯科大学特任教授・メモリークリニックお茶の水院長 朝田隆医師もご講演おっしゃっていました。習慣化するためには、励ます役割、インストラクターが必要とも強調されていました。

以上より、AHNの促進と良質な習慣化が期待できるという点から「ぬり絵」も芸術療法としてお勧めしております。そのどちらも苦手な方には、男性でパズルなどのほうが得意な方には数独がよいのではないかと個人的には考えています。また、運動療法としては、ヨガに注目しています。ヨガは有酸素運動として、マラソンなどと違い膝などの関節や太ももなどの筋肉を損傷するリスクが少なく、呼吸法を意識することにより瞑想の効果も注目されています。

それを調べた研究がありますので、それをご紹介しようと思います。

瞑想について中程度の訓練を積んだ参加者の海馬や前頭前野が、(数年間の訓練を積んだ瞑想者と同様に)無言のマントラ瞑想中に活性化されるかどうかを調べた研究があります。

研究者らは、2年以下の瞑想の練習(the Kundalini yoga or Acem tradition)を積んだ人たちが実験に参加し、無言のマントラ瞑想中の脳活動をfMRIで計測しました。

これにより記憶に関連する両側の海馬と海馬傍回の活動が見られました。

その他の領域では、両側の中帯状皮質、両側の中心前皮質の活動が見られました。前帯状皮質(ACC)の活動はみられませんでした。わずかに前頭前皮質の活動が見られました。

海馬は、修行を十分に積んだ瞑想者と同様に、中程度の訓練によっても活性化(activation)することがわかりました。このような海馬の活動が、記憶の固定化に関連するのかどうかについては、さらなる研究が必要です。

当クリニックで推奨している芸術療法と運動療法をご紹介させていただきました。もしご興味があればお気軽にご相談ください。

文献1)日本生物学的精神医学会雑誌 26巻1号

2)大熊 輝雄:現代臨床精神医学第12版 金原出版株式会社

3)杏林大学医学部精神神経科教授 古賀良彦:「国際ぬり絵シンポジウム」の基調講演「ぬり絵とアンチエイジング

4)日本ブレインヘルス協会 2007年10月3日掲載記事

5)Engström, M., Pihlsgård, J., Lundberg, P., & Söderfeldt, B. (2010). Functional magnetic resonance imaging of hippocampal activation during silent mantra meditation. The Journal of Alternative and Complementary Medicine, 16(12), 1253-1258.

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芸術療法のエビデンスと運動療法としてのヨガ②

こちらに関しましては、杏林大学医学部精神神経科教授の古賀良彦氏が

御講演された内容をまとめた記事から一部抜粋させていただきます。

ぬり絵は下絵に色をぬるという、一見するとシンプルな遊びだが、実は意外に広範囲の脳を使う。例えば下絵を眺めているときは、視覚野のある後頭葉や、色や形の記憶が保存されている側頭葉を使い、「何色でぬるか」「どこからぬるか」など、作業プランを立てているときは、前頭葉にある前頭連合野が働く。もちろん実際に色をぬるときは、同じく前頭葉にある運動野によって、手の動きがコントロールされる。
古賀氏はこのことを裏づけるデータとして、脳が活動状態にあるときに出るP300という脳波に着目した。そしてぬり絵をする前とした後では、ぬり絵をした後の方が、脳のより広い範囲でP300が出現することを明らかにし、あらゆる世代のストレス対策や脳のアンチエイジングにぬり絵を勧めている。

加えて古賀氏は、NIRS(近赤外線スペクトロスコピー)という、脳血流中の酸化ヘモグロビン濃度を計測する特殊な装置を用いて、ぬり絵をしている最中の脳の活性状態も捉えている。酸素は血液によって運搬されるが、血液中では酸素は酸化ヘモグロビンの形で存在している。脳が活発に活動している部分ほど、大量の酸素を必要とするので、酸化ヘモグロビンを多く含んだ血液が集まってくるが、NIRSではその集まり具合を測定する。
ぬり絵開始直後から30秒後までのNIRSの画像を見ると(中略)ここでは主に前頭部を中心に見ているが、ぬり絵を始めてわずか15秒後には脳に変化が現れ、30秒後には酸化ヘモグロビンが集まっている部分、すなわち脳が活発に働いて、酸素をよく消費している部分がかなり増えている。古賀氏は認知症の人にぬり絵を継続的に行ってもらうことで、記憶や認知といった脳の高次機能に、どのような変化があるかも調べている。
実験では東京都内の病院に入院中の中程度~重度の認知症患者6名に、1ヵ月間、週に4回程度ぬり絵をしてもらい、ぬり絵を始める前と1ヵ月後に、認知症の診断に一般的に用いられる知能検査「改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)」を実施した。その結果、被験者の平均得点はぬり絵開始前は12点だったのに対し、1ヵ月後の検査では14点に上がっていた。これは統計学的な有意差には及ばないがぬり絵を行わなかったグループ(同じく中程度~重度の認知症患者)では、1ヵ月の間に13点から12点へと得点が低下し、認知症の症状が進行していることがうかがえる。古賀氏は「病院など外部からの刺激が少なくなりがちな環境では、どうしても認知症が進行してしまうケースが多いが、1ヵ月間ぬり絵をしただけで、このような変化が見られたのには非常に驚いている。認知症に対する治療法が確立されていない現在、認知症患者に対するぬり絵の可能性は、十分に期待できる」とその効果を高く評価している。
また被験者のワーキングメモリも改善された。ワーキングメモリは、人間の知的活動のベースとなる重要な脳の機能で、例えば人が何かを考えて行動しようとするとき、過去の記憶の中から必要な記憶だけを引き出して、参照したり判断したりするのは、このワーキングメモリの働きである。実験では「知っている野菜の名前をできるだけ多く言ってください」という問いに対し、野菜の名前をいくつ答えられるかを調べた。ぬり絵を行ったグループは、ぬり絵を始める前の回答数は6個以下で、1点にも満たなかったのに対し、ぬり絵を1ヵ月間行った後では1. 85点と得点が伸びていた。一方、ぬり絵を行わなかったグループは、1ヵ月間でワーキングメモリが低下した。
古賀氏御本人もおっしゃっているように、結果に有意差がないですが、

ぬり絵の一番お勧めできるところは、ぬり絵そのものの効果に加え、準備や片づけが簡単なぬり絵は、負担が少なく毎日続けやすい。古賀氏は「脳のアンチエイジングは『毎日続けること』がとても大切。その点でもぬり絵は奨励できるとされています。

 

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芸術療法のエビデンスと運動療法としてのヨガ①

当クリニックの前院長 今川正樹が提唱した『芸術療法』について説明させていただきます。芸術療法その目的は、「海馬の可塑性:成体海馬神経新生(AHN)」にあります。詳しく説明しますと、「海馬」は、学習・記憶、空間認知機能を担う脳部位です。特に歯状回では生涯にわたり新しい神経細胞が生まれる(神経新生)など、他の脳部位とは一線を画しています。Cajalの提唱(1928)以来、成体の脳の神経細胞は増殖しないと考えられてきましたが、1965年のAltmanの仮説を証明するGageらの研究でヒトの海馬歯状回、脳側室下帯においても神経新生が起こると報告されました。海馬で新たに生まれた神経細胞は増殖、分化、生存期を経て新たに神経ネットワークに組み込まれ記憶形成に関するなど重要な役割を果たすと考えられています。これを「海馬の可塑性:成体海馬神経新生(AHN)」といいます。

このAHNは加齢やストレスにより減少し、認知症やうつ病を招くとされています。AHNは、運動や豊かな環境、ストレスの少ない精神状態、抗うつ薬などで促進されます。うつ病治療においては、低下したAHN改善を標的とした治療薬の開発が進んでいますが、認知症治療においては、先日このブログ「アルツハイマー病の新薬について」でご紹介したエーザイの新薬の記事にあるように、脳内のアミロイドβを減少させることが主眼で、AHNについての効果は不十分、不透明です。ですから当クリニックでは、非薬物療法である「芸術療法」に取り組んでいます。

そのうちの一つが、「季節に沿ったお題を出し、絵と文章もしくは俳句などを作成いただく」ことになります。認知機能において重要な見当識(時間、場所)を意識したうえでいわゆる「絵日記」を書いていただきそれについてお話しすることで、童心に返っていただき、心豊かな様態を再現し、AHNの促進を期待しています。これは、心理検査の一つであるバウムテストの結果が改善している患者様が大勢いらっしゃることからも効果を期待できると愚考しております。ただ、やはり絵日記のような創造性が高いものは苦手になっている患者様も大勢いらっしゃいます。思い返せば、筆者も夏休みの宿題の絵日記はいつも後回しにしておりました。(筆者に絵心がないことも大いに関係しますが。)そういった方のお気持ちが非常にわかるので、最近取り組んでおりますのが「塗り絵」をしていただく「芸術療法」です。

 

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リコード法と当クリニックの非薬物療法・生活指導~その共通点と相違点について~

早期アルツハイマー病の治療や予防といえば、「世界一受けたい授業」という番組でも取り上げられ話題になったリコード法が最近話題になりました。このリコード法については、東洋経済オンライン2018年2月17日の記事で既に取り上げられていました。ご紹介させていただきます。

『40代から始める認知症を防ぐための生活習慣 まずは食事・運動・睡眠を見直そう』

最新の研究によると、認知症を起こす原因の6割以上を占めるアルツハイマー病は、食事や運動、睡眠といった生活習慣を40代から見直し、必要なサプリを補うことなどで、予防できる人が多いという。さらに、認知機能を維持するために食べるべき食品、避けるべき食品も明らかになった。(中略)

これまで多くのアルツハイマー病患者を救ってきたデール・ブレデセン医師は著書『アルツハイマー病 真実と終焉』で、その詳細な治療と予防の方法を紹介している。(中略)

アルツハイマー病は、混合型も含め4つのタイプに大別できる。(これは、デール・ブレデセン医師の学説で、諸説あります)

炎症性アルツハイマー病
脳の炎症が原因で起き、食事も深く関与している

萎縮性アルツハイマー病
脳機能の維持に必要な栄養素やホルモンの欠乏で起こる

糖毒性アルツハイマー病(炎症性と萎縮性の混合型)
いわゆる糖尿病から起きる

毒物性アルツハイマー病
カビ毒や歯の治療に使われる材料に含まれる水銀などの毒素から起き、治療が最も難しいとされる

毒物性の場合は、生活の中の毒素をまず特定して除去する必要がある。毒素を除去しないままアミロイドベータを取り除く従来治療を行うと、実はアミロイドベータにより守られていた脳細胞が直接毒素にさらされ、逆に危険な場合があるという。

治療には「オーダーメイド医療」が必要

さらに、アルツハイマー病には36の要因があることも研究で明らかになった。

アルツハイマー病患者は、脳神経の増減に伴う代謝バランスが常に減少方向に傾いているという。このバランスを調節する要因が少なくとも36項目は特定されているのだ。

アルツハイマー病の症状が出ている場合、36の要因のうち、10~25項目は脳神経を縮小・減少する方向に傾いている場合が多いという。

このため、「アルツハイマー病患者の脳は、『36個の穴が空いた屋根』のようだ」とブレデセン医師は語る。

屋根に空いた穴が多いほど、雨はどんどん漏れてくる。アルツハイマー病の治療は、この穴をひとつひとつ塞いでいくことで初めて可能になる。

1種類の薬剤が塞げる穴は通常1~2個。アルツハイマー病はひと粒の薬で治るような代物ではなく、包括的な治療を集中的に行わなくてはならない。

人によって空いている穴の数も大きさも違うため、アルツハイマー病の治療には、一人一人に合わせた細やかなメニューが必要だ。

食べるべき食品、避けるべき食品

リコード法の治療プログラムは、食事、運動、睡眠といった生活習慣の指導や、脳の栄養不足を補うサプリメント、脳トレーニング、ストレス対策など、実に多岐にわたる。

食事については、「ケトフレックス12/3」と名付けられた食事法の実践が前提になっている。体のエネルギーとして脂肪を燃焼する状態を目指すもので、この状態は認知機能にとって最適だという。

この状態を促すには、次の3つを組み合わせる必要がある。

(1)糖類、パン、ジャガイモ、白米、ソフトドリンクなどの単純炭水化物食品を最小限にする(低炭水化物食…要するに糖質制限)

(2)適度な運動(早歩きやもっと激しい運動を週150分以上)

(3)毎日少なくとも12時間は絶食する(夕飯から朝食まで12時間は空ける)

認知機能にとって最適な状態を促すには、『シリコンバレー式 自分を変える最強の食事』で一躍有名になったMCTオイルをとるといい。ココナッツオイルなどの中鎖脂肪酸、オリーブオイル、アボガド、ナッツなどといった不飽和脂肪酸の摂取も有効だ。

基本的に野菜を中心とし、ジャガイモなどのでんぷん質の野菜は控えめにする。ただし、サツマイモやグリーンバナナなどの難消化性でんぷん(レジスタントスターチ)は例外で、毎日食べても構わないという。

このほか、頻繁に食べたい“青色信号食品”として、デトックス効果のあるブロッコリーやカリフラワーなどアブラナ科の野菜、ケールやホウレンソウなどの葉物野菜、タマネギやニンニクなどの硫黄化合物を含有している野菜、キノコ類、クズイモ、ネギ、キクイモなどのプレバイオティクス食品なども挙げられている。

また、天然ものの魚もいい。特にサケ、サバ、アンチョビ(カタクチイワシ)、イワシ、ニシンは水銀汚染が少なく積極的にとるべきだ。平飼い卵、キムチやザワークラウトなどのプレバイオティクス食品も“青色信号食品”に入る。

一方、なるべく食べる機会を最小限に抑えたい“赤色信号食品”としては、パン、パスタ、コメ、ケーキ、ソーダなどの単純炭水化物がメインの食品が挙げられる。

さらに穀類、加工食品、マグロ、サメ、カジキマグロなど水銀汚染リスクが高い魚類のほか、パイナップルなどの甘い果物、グルテンや乳製品など過敏性が出やすい食品なども“赤色信号食品”に入る。

チーズやオーガニックの全乳、プレーンヨーグルトはたまにならよい。

劇的に改善する場合も

しかし、生活習慣、特に食べ物を変えることは案外難しいものだ。『アルツハイマー病 真実と終焉』では、ブレデセン医師が多くのアルツハイマー病患者を診療して得た「マル秘テクニック」が紹介されている。

例えば、炭水化物を食べる時は、先にケールなど食物繊維を豊富に含む食べ物をとるようにすると炭水化物の吸収が抑えられ、腸内フローラにも良い影響がある。また、どうしてもアイスクリームが食べたいときは、ココナッツミルクのアイスクリームにするといった奥の手もある。

患者の中には、完璧にプログラムをこなしているわけではなくても、認知機能を良好に保っている人もいる。人により重要な項目がいくつか存在し、すべてとはいかなくてもいくつかのプログラムメニューを守るだけで、認知機能が劇的に改善する場合もあるという。

意外かもしれないが、欧米で高所得者が多い国では、すでに認知症の年齢別発症率が減少傾向にある。

アメリカ東海岸にあるフラミンガム町の住民を長年にわたり追跡調査している「フラミンガム研究」では、60歳以上の住民で認知症の5年発症率がこの30年で44%も低下したことが明らかにされている。

しかし、認知症リスクが統計学的に有意に減少していたのは、高卒以上の学歴のある集団のみだった。(中略) 21世紀の認知症医療では、より早期に診断し、症状が出てからというよりも、むしろ予防していくことが主軸になっていくだろう――。ブレデセン医師はこうみている。(以下略)』

こうしてみていると、今川クリニックでの非薬物療法と生活指導の類似点が多くみられる。もちろん、米国とは文化、食生活、環境、習慣など相違点が多いため、違いも多いが、まず軽度認知障害の方をアルツハイマー病に移行させないことを主眼に置くこと自体が、アルツハイマー病治療において現時点でも主流でない中、20年以上前から取り組んでいたところが大きく一致しているところである。そのため、多岐・多種類にわたる認知機能検査・心理検査・血液検査において精神状態、認知機能、健康状態を常に確認し、オーダーメイドな治療を心掛けているところも一致している。食事内容にも気を遣い、不足しがちなビタミンや鉄の補充を進めることや料理形態では唯一、地中海料理が認知症予防のエビデンスがあることから魚料理やオリーブオイルもすすめている点も同じである。

逆に違いとしては、日本の医療・介護制度の特性を生かし、運動療法に関してはデイサービスを利用することをお勧めしている点である。この点に関しては、明らかに米国より日本の制度がすぐ入れている点であると愚考している。ただ問題点としては、デイサービス・ショートステイの実情をあまり意識しないままイメージであまりポジティブな印象を持っていないところであろうか。所謂日本国から考えると「宝の持ち腐れ」状態になっている部分があると思われる。その問題点については次回以降にまた、お話したいと思います。

相違点の二点目は、脳の活性化につながるトレーニング、『脳トレ』が良い結果のエビデンスがあまりないのが現状なのでリコード法では大きく取り上げていないですが、当クリニックでは、『芸術療法』に取り組んでいます。次回はこの芸術療法について、お話ししたいと思います。

文献1)東洋経済オンライン2018年2月17日の記事

2)大熊 輝雄:現代臨床精神医学第12版 金原出版株式会社

3)一宮 洋介:認知症の臨床 最新医療戦略と症例 MEDSi

 

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アルツハイマー病の新薬について

最近、ネットニュースの中でも認知症関連のニュースが話題になっていることも多いですが、今年の夏から秋にかけて台風や北海道地震などの自然災害や自民党総裁選、アメリカ中間選挙、豊洲移転など重要なニュースが多い中、テレビではあまり取りあげられないこともしばしばなので、いくつかご紹介させていただきます。

まず一つ目は、『AnswersNews – 製薬業界で話題のニュースがよくわかる』 2018/7/31掲載の  「アルツハイマー 新薬登場に希望再び―エーザイ「BAN2401」製品化までの道のりは」

エーザイが、開発中のアルツハイマー病治療薬「BAN2401」の臨床第2相試験で、臨床症状の進行を30%抑制したと発表しました。失敗続きだったアルツハイマー病の新薬開発に、再び希望の光が差し込んでいます。

(中略)7月6日、エーザイは201試験の最終解析の結果、BAN2401が統計学的に有意に臨床症状の悪化を抑制し、脳内のアミロイドβを減少させたと発表。詳細なデータに注目が集まっていました。

症状の進行を30%抑制

201試験は、アミロイドの脳内蓄積が確認された856人の早期アルツハイマー病患者(アルツハイマー病による軽度認知障害患者と軽度アルツハイマー病患者)を対象に実施。プラセボと実薬投与群(5用量5群)を比較しました。

投与18カ月時点での最終解析結果によると、アルツハイマー病の症状を評価するためにエーザイが独自開発した指標「ADCOMS」による評価で、BAN2401を2週に1回10mg/kg投与した群(最高投与量群)は、プラセボに比べて症状の進行を30%抑制。一般的な評価指標である「ADAS-cog」でも最高投与量群は47%の進行抑制を示しました。

PET測定による脳内アミロイド蓄積量は、最高投与量群で投与前の平均74.5から投与18カ月時点では平均5.5に減少。最高投与量群の患者の81%が、投与18カ月後には画像診断でアミロイド陰性となりました。

条件付きでの早期承認も視野

BAN2401は、脳内のアミロイドβ凝集体に結合して脳内からこれを除去する抗アミロイドβプロトフィブリル抗体。アミロイドβの蓄積はアルツハイマー病を引き起こす要因の一つと考えられていますが、この仮説に基づいた新薬候補はことごとく臨床試験に失敗しています。

2012年には、米イーライリリーの抗アミロイドβ抗体ソラネズマブと米ファイザーの同バピネオズマブが臨床第3相(P3)試験に失敗。17年にはソラネズマブが軽度の患者を対象とした2度目のP3試験でも主要評価項目を達成することができず、今年に入ってからも米メルクのBACE阻害薬ベルベセスタットや米リリー/英アストラゼネカの同ラナベセスタットが相次いでP3試験を中止しました。

悲惨な状況が続く中、アルツハイマー病治療薬の開発に再び希望の火を灯したBAN2401。焦点となるのは今後の開発方針です。

「患者を放っておいていいのか」

7月26日の説明会でエーザイの津野上席執行役員は、「有効性を再確認する、もしくは別のポピュレーションでテストするとか、次の試験のアイデアはたくさんあると思うが、このデータをベースに条件付きで早期に承認をとるというスキームもある」とし、P2試験データに基づく申請も視野に規制当局と協議する考えを表明。「次の試験をやるとまた数年かかってしまう。その間、患者は放っておかれていいのかということを協議したい」と話しました。(中略)国際アルツハイマー病協会によると、世界の認知症患者は4700万人に上り、2050年には3倍に増える見通し。エーザイは世界に先んじて次世代アルツハイマー病治療薬を世に送り出すことができるのか。注目される今後の開発方針について同社は「年度内には方向性を明確にしたい」としています。』

少し専門的な内容が多いですが、要約すると「アルツハイマー病の新薬で、ある程度いい結果が出ているので、早めに承認してほしい。

追加の試験は発売後にしてほしい。」という内容でしょうか。このある程度がどの程度かが非常に重要なのですが、そこに一番大きく反応しているのが、エーザイの株価になります。

『BloomBerg 2018年7月26日掲載記事から

エーザイ株価は26日、一時前日比21%安と過去最大の下落率を記録し10%安の9989円で取引を終えた。これに先立ち、同社と米バイオジェンは両社が共同開発する「BAN2401」の早期アルツハイマー病患者を対象とした第2相試験で、最高用量投与群ではプラセボ(偽薬)群との比較で30%の進行抑制が示されたと発表していた。

医師や患者擁護団体は、今回の結果は勇気づけられるものだとしたが、この薬の有望性を正確に測るには、より大規模で長期の試験から情報を得る必要がある。結果は投資家の期待を下回っていたようでエーザイ株だけでなくバイオジェンの株価も25日の時間外取引で一時11%急落した。バイオジェン株は、同日の通常取引では試験結果への期待感から3年ぶり高値を付けていた。

著しい効果が示されたのは、5つの用量のうち最高用量だけだった。(中略)

ラッシュ・アルツハイマー病センター(シカゴ)のアソシエートディレクター、ジュリー・シュナイダー氏は、「勇気づけられるものだが、さらに多くの作業が必要だ」と指摘。(中略)同氏は最新データの内容を見た外部専門家の1人。今回の結果はシカゴで開催中のアルツハイマー病協会国際会議(AAIC)で発表された。』

ちなみにエーザイは平成30年9月下旬に肝細胞癌に対して10年ぶりの新薬も発表したため再び10月初旬に高騰し値動きが激しい状況になっています。(筆者は、投資などは専門外のため、用語などに誤りがある場合があります。何卒御容赦ください。)

今回お話ししたいのは、いかに認知症治療が世界中の人や投資家の方から注目されているかということです。

特に先ほどご紹介したBAN2401は、今までのアルツハイマー病治療薬と違いアミロイドの脳内蓄積が確認された856人の早期アルツハイマー病患者(アルツハイマー病による軽度認知障害患者と軽度アルツハイマー病患者)を対象に実施しているので、アルツハイマー病の予防に効果があると期待されていますので、早期の承認になると影響は大きいと愚考します。

このように、アルツハイマー病が現状の進行抑制の治療だけではなく、例えば胃がんや乳がんなどのように早期発見・早期治療すれば発症以前の日常生活と変わりない生活ができるように治療するとシフトチェンジしていくなら、アルツハイマー病予防を念頭に置いた生活習慣が重要になっていきます。

次回は、そのアルツハイマー病予防について最近注目されているリコード法をご紹介させていただきます。

文献1)『AnswersNews – 製薬業界で話題のニュースがよくわかる 2018/7/31掲載記事

2)大熊 輝雄:現代臨床精神医学第12版 金原出版株式会社

3)BloomBerg 2018年7月26日掲載記事

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睡眠障害のスクリーニング

診断の入り口となるスクリーニングのガイドラインとしては、

米国睡眠医学会が2005年に出版した睡眠障害国際分類第2版(ICSD-2)に記されているものが有名である。これはICSD-2の主要な疾患群であるカテゴリー分類 不眠症、過眠症、睡眠時随伴症、睡眠関連呼吸障害、睡眠関連運動障害、概日リズム睡眠障害をスクリーニングし、各カテゴリーの診断チャートに到達するために利用されている。このスクリーニングは、患者は必ずしも睡眠障害を専門としない一般医療機関を受診することが多いという事実から、睡眠専門でない一般医療機関で使用できる仕様になっている。以下に概要を示す。

①良い睡眠が取れているか必ず問診する。

→睡眠障害は多くの身体疾患、精神疾患で惹起されるうえ、睡眠障害がこれらの疾患の増悪因子となることも多い。臨床現場では折に触れて睡眠に関する問診をするべきである。

②良い睡眠がとれていない場合は、どのような睡眠の問題であるか特定し、以下の手順に従う。

③不眠に加え、食欲低下、興味の減退がある。

→うつ病の疑いがあるため、精神科受診をすすめる。もしくは精神科受診時なら抗うつ薬の処方を検討

④睡眠中に呼吸停止や強度のいびき、日中の過剰な眠気がある。

→睡眠関連呼吸障害の疑いがある。激しいいびきや無呼吸などの症状を確認し、経皮的動脈血酸素飽和度測定装置および簡易無呼吸診断装置による検査により、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の鑑別が必要になることがあります。

⑤睡眠中や睡眠の前後の異常感覚・不随意運動などの睡眠に関連した神経・運動症状がある。

→睡眠関連運動障害(RLS)の疑いがある。RLSの原因には鉄欠乏性貧血、腎不全(透析)、妊娠、関節リウマチ、脊髄・末梢性疾患、パーキンソン病などの疾患が候補にあがる為その鑑別が必要になることもあります。

⑥十分な睡眠を確保しているにもかかわらず、日中の過剰な眠気がある。

→過眠症の疑いがある。薬物やアルコールなどの物質の影響、ナルコレプシーなどの鑑別が必要になることがあります

⑦睡眠中に大声を上げたり、歩き回るなどの異常行動がある。

→睡眠時随伴症の疑いがある。レム睡眠行動障害、せん妄、睡眠関連てんかん、睡眠時遊行症、睡眠時驚愕症などの鑑別が必要になることもあり、ビデオモニタリング下での睡眠ポリグラフ検査(PSG)が必要なこともあります

⑧昼夜逆転など睡眠・覚醒できる時間帯の異常がある。

→概日リズム睡眠障害の疑いがある。2週間の睡眠日誌記録をしたうえで、夜勤の仕事、2週間以内の時差地域への飛行の有無、睡眠・覚醒パターンと社会スケジュールの慢性的不一致がないかなどの確認が必要なこともあります。

⑨不眠がある。

→以下の不眠症のタイプを鑑別。入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒、適応障害性不眠症、身体疾患に伴う不眠、不適切な睡眠衛生、薬物もしくは物質による不眠症、精神疾患に伴う不眠症、などを鑑別が必要なこともあります。

当クリニック睡眠専門外来では、以上のスクリーニングなどを行い、様々な検査を通じて、身体疾患、精神疾患なども含め総合的な観点から、睡眠障害を診断しています。

特に、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査は、入院が必要なPSGではなく、ご自宅にて簡易に行える経皮的動脈血酸素飽和度測定装置および簡易無呼吸診断装置による検査を採用しております。

特に40代以降80代くらいまでの男性で鼾(いびき)や睡眠時無呼吸を家族、親しい友人から指摘されたことがある方、鼾の自覚がある方は要注意とされています。ご自覚のある方は早めの受診をおすすめしております。

 

文献1)古池 保雄ら:基礎からの睡眠医学 名古屋大学出版会

2)大熊 輝雄:現代臨床精神医学第12版 金原出版株式会社

3)堀 忠雄:応用講座 睡眠改善学 ゆまに書房

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睡眠障害について

最近、話題になったネットニュースの中で、私が特に気になったニュースの見出しが、「日本人の約半数が不眠症の疑い」というものでした。

グーグル、ヤフーなどのトップニュースにも取り上げられていたので、もしかしたら目にした方もいらっしゃるかもしれません。元々のニュースは時事通信の記事で一部抜粋すると(一部改変しています)

日本人の約半数に不眠症の疑いがあり、7割の人が睡眠に不満-。とある寝具メーカーが全国の男女を対象とした意識調査でこんな傾向があることが25日、分かった。 同社は7月、全国の18~79歳の男女1万人を対象にインターネット調査を実施。不眠症について、「寝付き」「睡眠の質」「日中の眠気」といった国際的な基準に照らし合わせた結果、「疑いあり」が49.3%に上った。「疑いが少しある」は18.2%、「心配なし」が32.5%だった。「疑いあり」は20代が最多の61.1%となり、30代(58.5%)が続いた。 睡眠の質では、「満足」が31.8%にとどまり、「少し」や「非常に」などを合わせた「不満」が7割近くに上った。「満足」は40代が最低の23.6%で、30代が次に少ない25.2%だった。同社は「働き盛りや子育て世代で満足な睡眠が得られない実態が明らかになった」としている。 睡眠時間が足りているかとの問いでも、「十分」と答えた割合は40代が最低の26.1%となり、30代の28.1%が続いた。 【時事通信社】

という記事でした。高校や専門学校、大学や大学院などで統計を専門的に学ばれた方からするとこの記事の見出しは典型的な誇張されたものだと、感じられるのではないでしょうか。どこが誇張されているかというと、まず、寝具メーカーのアンケートに答えている方は、睡眠に不満を持つ人が多いのではないかと、推定されるからです。統計学の中で、データ解析を注意すべき点の一つのバイアスにあたるのではないかと愚考しています。(ちなみに大元のアンケートをされている寝具メーカーは私も使用経験があり大変すばらしい寝具を開発・販売されていると思っております。)この記事は多少の誇張がありましたが、当クリニックでも睡眠外来をしておりますと、実際に多くの方が不眠、睡眠障害で悩んでおられます。2000年にPsychiatry Researchに掲載された論文によりますと一般人口を対象とした日本の疫学調査によると成人の21.4%は不眠を訴えているとあります。同じ年のJEpidemiolに掲載された論文では、14.9が日中の眠気を自覚し、男性の3.5%、女性の5.4%が過去一か月間に睡眠薬を服用していたと報告されています。睡眠障害は様々な形で罹患者の生活を障害するだけでなく、生活習慣病のリスクファクターとなり、医療費の増大をはじめとする社会的な損失をもたらすことも明らかになっています。適正な治療のためには、正しい病態把握と診断が必要とされますが、これらの睡眠障害の原因となる病態や疾患は多種・多彩であり、一筋縄でいかないことも多いのが実情です。

平成に入り30年で、もうすぐその年号は終わりを告げようとしていますが、この30年の間で、睡眠医学・睡眠医療は目覚ましい発展を遂げつつあります。睡眠が科学の対象となったのは古にさかのぼりますが、1929年のヒトの脳波の記録、1953年のレム睡眠の発見以後飛躍的な発展を遂げています。そして、平成以降になって睡眠障害は、不眠症、過眠症、睡眠時随伴症、睡眠関連呼吸障害、睡眠関連運動障害、概日リズム睡眠障害と六大分類され、この領域に関連する診断名は100近くに達し、病態の多様性とその解明が進んでいることを示しています。

睡眠医学・睡眠医療の発展には、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が大きな影響を与えています。SASは、精神科、呼吸器内科、耳鼻咽喉科、循環器内科、神経内科、小児科、麻酔科、歯科口腔外科など多数の領域にわたる学術的研究を必要とし、その研究に伴い、高血圧症、心疾患、脳血管障害、糖尿病など多数の病態に対して独立した危険因子となることが明らかにされてきています。SASの治療法として開発・導入されたCPAPの効果は、SASが治療しうる病態であることを明らかにし、睡眠医学・睡眠医療の進歩を一層加速させ現在に至っています。次回には、睡眠障害診断について少し述べさせて頂きます。

 

 

 

文献1)古池 保雄ら:基礎からの睡眠医学 名古屋大学出版会

2)大熊 輝雄:現代臨床精神医学第12版 金原出版株式会社

3)堀 忠雄:応用講座 睡眠改善学 ゆまに書房

4)2018年09月25日 05時13分 時事通信の記事

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