愛情と医療の狭間

今川クリニックの院長ブログ

認知症に罹患する数は、平均寿命の上昇と少子高齢化の影響で、日本に於いても年々増加の一途にある。また実情として、70-80代の高齢者が二人暮らしであるケースも多く、認知症患者のサポートを家族のみで行うことが困難になってきている。
ところで、認知症の中でも変性疾患ではアルツハイマー病型認知症(AD)がトップを占めているのが2011年12月10日時点での状況である。なぜ、この疾患が社会問題としてクローズアップされるのか。

【1】いまだに、病因が確定されていない。
【2】この疾患に侵される人数が右肩上がりにあり、高齢者だけでなく65歳以下の若年の人にもADになる人数が増加している傾向が報告されている。
【3】早期発見が難しい。患者や家族と交流の深い人が、現在の社会環境から見て少ないことが問題である。
【4】ADに至るまでに軽度認知障害の段階があるが、それ以前の4-5年前の時期に、周囲の人が年齢相当の物忘れだと思い、受診にまで至らないケースも多い。また、仮に医療機関を受診しても、画像検査や心理テストの結果、医師から大抵問題ないとの返事が返ってくることも少なくない。
【5】癌とか糖尿病などの知識に関しては知っていることが多いが、ADの場合、本人に自覚症状がない(病識がない)。周囲が気付いた時には、症状が日常生活における行動の変化に現れている。
【6】仮にADだと医師から言われても、原因不明のため、市販されている薬剤の効果が対症療法程度しかない。見通しは暗い。

考えて見れば、人は新生児から子孫を遺せる段階すなわち壮年期までの期間に、人の各臓器はフル回転しており、年を重ねるごとに臓器疲労が生じ、人は何らかの病気にかかっているだろう。医療技術の発達と予防効果の成果が、日本人の平均寿命を世界一にした。ただADと云う病は、患者の数、発病から死に至る期間が長く、終末期段階では嚥下機能が困難になることなど、それまでのケア、費用、人的資源などを想定すると重篤な病と云わざるを得ない。患者とのそれまでの人間としての愛情が深ければ一分一秒まで生存して欲しいと願うのは自然な気持ちであろう。私のクリニックには、終末期段階の患者が多く来院されている。これも家族の愛情の故であろうと考えている。

2011年12月10日 月食が見れた夜  今川正樹

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