透明な脳 ~第三章 風景を解釈する脳 脳が認識する世界③

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脳は大まかにみれば、左右の大脳半球、それを結合させる脳梁、さらに小脳、中脳、橋・延髄などから構成されている。もちろん、大脳ひとつをとっても新皮質の部分や古皮質の部分などに分類され、極めて複雑だ。脳は位置によって違った機能をもっていることは、すでに検証した視覚のプロセスを見ただけでも明らかになる。

かりに第Ⅰ視覚野が完全に破壊されていれば、目から入ってきた情報がそこで遮断されてしまうので何も見えない。また、第Ⅳ視覚野が破壊されていれば、視覚野のほかの領域が正常でも、物の色や形が認識できない。なにかが動いていることは認識できても、それが何であるかが分からない。さらにMT野が破壊されていれば、物の動きが認識できない。動いているはずの救急車が、遠くで静止して見えたかと思うと、次の瞬間には目の前で静止して見えたりする。まるで高速の紙芝居で画面が展開していくような状態になる。

われわれが認識している世界というのは、あくまで脳を通じてみた世界にすぎない。脳が認識している世界は、あくまで脳というフィルターを通してみたものであって、脳のフィルターが変われば、世界はまったく別の形で認識されるのである。

自著「透明な脳」より

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