睡眠障害のスクリーニング

今川クリニックの院長ブログ

診断の入り口となるスクリーニングのガイドラインとしては、

米国睡眠医学会が2005年に出版した睡眠障害国際分類第2版(ICSD-2)に記されているものが有名である。これはICSD-2の主要な疾患群であるカテゴリー分類 不眠症、過眠症、睡眠時随伴症、睡眠関連呼吸障害、睡眠関連運動障害、概日リズム睡眠障害をスクリーニングし、各カテゴリーの診断チャートに到達するために利用されている。このスクリーニングは、患者は必ずしも睡眠障害を専門としない一般医療機関を受診することが多いという事実から、睡眠専門でない一般医療機関で使用できる仕様になっている。以下に概要を示す。

①良い睡眠が取れているか必ず問診する。

→睡眠障害は多くの身体疾患、精神疾患で惹起されるうえ、睡眠障害がこれらの疾患の増悪因子となることも多い。臨床現場では折に触れて睡眠に関する問診をするべきである。

②良い睡眠がとれていない場合は、どのような睡眠の問題であるか特定し、以下の手順に従う。

③不眠に加え、食欲低下、興味の減退がある。

→うつ病の疑いがあるため、精神科受診をすすめる。もしくは精神科受診時なら抗うつ薬の処方を検討

④睡眠中に呼吸停止や強度のいびき、日中の過剰な眠気がある。

→睡眠関連呼吸障害の疑いがある。激しいいびきや無呼吸などの症状を確認し、経皮的動脈血酸素飽和度測定装置および簡易無呼吸診断装置による検査により、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の鑑別が必要になることがあります。

⑤睡眠中や睡眠の前後の異常感覚・不随意運動などの睡眠に関連した神経・運動症状がある。

→睡眠関連運動障害(RLS)の疑いがある。RLSの原因には鉄欠乏性貧血、腎不全(透析)、妊娠、関節リウマチ、脊髄・末梢性疾患、パーキンソン病などの疾患が候補にあがる為その鑑別が必要になることもあります。

⑥十分な睡眠を確保しているにもかかわらず、日中の過剰な眠気がある。

→過眠症の疑いがある。薬物やアルコールなどの物質の影響、ナルコレプシーなどの鑑別が必要になることがあります

⑦睡眠中に大声を上げたり、歩き回るなどの異常行動がある。

→睡眠時随伴症の疑いがある。レム睡眠行動障害、せん妄、睡眠関連てんかん、睡眠時遊行症、睡眠時驚愕症などの鑑別が必要になることもあり、ビデオモニタリング下での睡眠ポリグラフ検査(PSG)が必要なこともあります

⑧昼夜逆転など睡眠・覚醒できる時間帯の異常がある。

→概日リズム睡眠障害の疑いがある。2週間の睡眠日誌記録をしたうえで、夜勤の仕事、2週間以内の時差地域への飛行の有無、睡眠・覚醒パターンと社会スケジュールの慢性的不一致がないかなどの確認が必要なこともあります。

⑨不眠がある。

→以下の不眠症のタイプを鑑別。入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒、適応障害性不眠症、身体疾患に伴う不眠、不適切な睡眠衛生、薬物もしくは物質による不眠症、精神疾患に伴う不眠症、などを鑑別が必要なこともあります。

当クリニック睡眠専門外来では、以上のスクリーニングなどを行い、様々な検査を通じて、身体疾患、精神疾患なども含め総合的な観点から、睡眠障害を診断しています。

特に、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査は、入院が必要なPSGではなく、ご自宅にて簡易に行える経皮的動脈血酸素飽和度測定装置および簡易無呼吸診断装置による検査を採用しております。

特に40代以降80代くらいまでの男性で鼾(いびき)や睡眠時無呼吸を家族、親しい友人から指摘されたことがある方、鼾の自覚がある方は要注意とされています。ご自覚のある方は早めの受診をおすすめしております。

文献1)古池 保雄ら:基礎からの睡眠医学 名古屋大学出版会
文献2)大熊 輝雄:現代臨床精神医学第12版 金原出版株式会社
文献3)堀 忠雄:応用講座 睡眠改善学 ゆまに書房

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