アルツハイマー病の新薬について

今川クリニックの院長ブログ

最近、ネットニュースの中でも認知症関連のニュースが話題になっていることも多いですが、今年の夏から秋にかけて台風や北海道地震などの自然災害や自民党総裁選、アメリカ中間選挙、豊洲移転など重要なニュースが多い中、テレビではあまり取りあげられないこともしばしばなので、いくつかご紹介させていただきます。

まず一つ目は、『AnswersNews – 製薬業界で話題のニュースがよくわかる』 2018/7/31掲載の  「アルツハイマー 新薬登場に希望再び―エーザイ「BAN2401」製品化までの道のりは」

エーザイが、開発中のアルツハイマー病治療薬「BAN2401」の臨床第2相試験で、臨床症状の進行を30%抑制したと発表しました。失敗続きだったアルツハイマー病の新薬開発に、再び希望の光が差し込んでいます。

(中略)7月6日、エーザイは201試験の最終解析の結果、BAN2401が統計学的に有意に臨床症状の悪化を抑制し、脳内のアミロイドβを減少させたと発表。詳細なデータに注目が集まっていました。

症状の進行を30%抑制

201試験は、アミロイドの脳内蓄積が確認された856人の早期アルツハイマー病患者(アルツハイマー病による軽度認知障害患者と軽度アルツハイマー病患者)を対象に実施。プラセボと実薬投与群(5用量5群)を比較しました。

投与18カ月時点での最終解析結果によると、アルツハイマー病の症状を評価するためにエーザイが独自開発した指標「ADCOMS」による評価で、BAN2401を2週に1回10mg/kg投与した群(最高投与量群)は、プラセボに比べて症状の進行を30%抑制。一般的な評価指標である「ADAS-cog」でも最高投与量群は47%の進行抑制を示しました。

PET測定による脳内アミロイド蓄積量は、最高投与量群で投与前の平均74.5から投与18カ月時点では平均5.5に減少。最高投与量群の患者の81%が、投与18カ月後には画像診断でアミロイド陰性となりました。

条件付きでの早期承認も視野

BAN2401は、脳内のアミロイドβ凝集体に結合して脳内からこれを除去する抗アミロイドβプロトフィブリル抗体。アミロイドβの蓄積はアルツハイマー病を引き起こす要因の一つと考えられていますが、この仮説に基づいた新薬候補はことごとく臨床試験に失敗しています。

2012年には、米イーライリリーの抗アミロイドβ抗体ソラネズマブと米ファイザーの同バピネオズマブが臨床第3相(P3)試験に失敗。17年にはソラネズマブが軽度の患者を対象とした2度目のP3試験でも主要評価項目を達成することができず、今年に入ってからも米メルクのBACE阻害薬ベルベセスタットや米リリー/英アストラゼネカの同ラナベセスタットが相次いでP3試験を中止しました。

悲惨な状況が続く中、アルツハイマー病治療薬の開発に再び希望の火を灯したBAN2401。焦点となるのは今後の開発方針です。

「患者を放っておいていいのか」

7月26日の説明会でエーザイの津野上席執行役員は、「有効性を再確認する、もしくは別のポピュレーションでテストするとか、次の試験のアイデアはたくさんあると思うが、このデータをベースに条件付きで早期に承認をとるというスキームもある」とし、P2試験データに基づく申請も視野に規制当局と協議する考えを表明。「次の試験をやるとまた数年かかってしまう。その間、患者は放っておかれていいのかということを協議したい」と話しました。(中略)国際アルツハイマー病協会によると、世界の認知症患者は4700万人に上り、2050年には3倍に増える見通し。エーザイは世界に先んじて次世代アルツハイマー病治療薬を世に送り出すことができるのか。注目される今後の開発方針について同社は「年度内には方向性を明確にしたい」としています。』

少し専門的な内容が多いですが、要約すると「アルツハイマー病の新薬で、ある程度いい結果が出ているので、早めに承認してほしい。

追加の試験は発売後にしてほしい。」という内容でしょうか。このある程度がどの程度かが非常に重要なのですが、そこに一番大きく反応しているのが、エーザイの株価になります。

『BloomBerg 2018年7月26日掲載記事から

エーザイ株価は26日、一時前日比21%安と過去最大の下落率を記録し10%安の9989円で取引を終えた。これに先立ち、同社と米バイオジェンは両社が共同開発する「BAN2401」の早期アルツハイマー病患者を対象とした第2相試験で、最高用量投与群ではプラセボ(偽薬)群との比較で30%の進行抑制が示されたと発表していた。

医師や患者擁護団体は、今回の結果は勇気づけられるものだとしたが、この薬の有望性を正確に測るには、より大規模で長期の試験から情報を得る必要がある。結果は投資家の期待を下回っていたようでエーザイ株だけでなくバイオジェンの株価も25日の時間外取引で一時11%急落した。バイオジェン株は、同日の通常取引では試験結果への期待感から3年ぶり高値を付けていた。

著しい効果が示されたのは、5つの用量のうち最高用量だけだった。(中略)

ラッシュ・アルツハイマー病センター(シカゴ)のアソシエートディレクター、ジュリー・シュナイダー氏は、「勇気づけられるものだが、さらに多くの作業が必要だ」と指摘。(中略)同氏は最新データの内容を見た外部専門家の1人。今回の結果はシカゴで開催中のアルツハイマー病協会国際会議(AAIC)で発表された。』

ちなみにエーザイは平成30年9月下旬に肝細胞癌に対して10年ぶりの新薬も発表したため再び10月初旬に高騰し値動きが激しい状況になっています。(筆者は、投資などは専門外のため、用語などに誤りがある場合があります。何卒御容赦ください。)

今回お話ししたいのは、いかに認知症治療が世界中の人や投資家の方から注目されているかということです。

特に先ほどご紹介したBAN2401は、今までのアルツハイマー病治療薬と違いアミロイドの脳内蓄積が確認された856人の早期アルツハイマー病患者(アルツハイマー病による軽度認知障害患者と軽度アルツハイマー病患者)を対象に実施しているので、アルツハイマー病の予防に効果があると期待されていますので、早期の承認になると影響は大きいと愚考します。

このように、アルツハイマー病が現状の進行抑制の治療だけではなく、例えば胃がんや乳がんなどのように早期発見・早期治療すれば発症以前の日常生活と変わりない生活ができるように治療するとシフトチェンジしていくなら、アルツハイマー病予防を念頭に置いた生活習慣が重要になっていきます。

次回は、そのアルツハイマー病予防について最近注目されているリコード法をご紹介させていただきます。

文献1)『AnswersNews – 製薬業界で話題のニュースがよくわかる 2018/7/31掲載記事
文献2)大熊 輝雄:現代臨床精神医学第12版 金原出版株式会社
文献3)BloomBerg 2018年7月26日掲載記事

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