今回も、認知症専門医がおススメする、デール・ブレデセン氏の著書、『アルツハイマー病 真実と終焉』(ソシム、監修者:白澤卓二氏・訳者:山口茜氏)。その中から一部を抜粋してご紹介いたします。
何度か当ブログでもエッセンスをお伝えしていましたが、この機会に、一度拝読頂ければ幸甚です。少しでも見やすく、理解しやすいように時折箸休め的な挿絵を入れております。原著にはない挿絵なのでご注意ください。
アルツハイマー病にある「3つのサブタイプ」
これだけ聞いた時点で、もう十分厳しいが、さらに根本的な問題がある。
それは、アルツハイマー病は単一の病気ではないということだ。確かに、症状からは単一の病気に見えるかもしれない。しかし第6章で説明するが、私たちはアルツハイマー病に3つのサブタイプがあることを発見した。生化学プロファイルが異なる、アルツハイマー病患者を研究してはっきりしたのは、3つのサブタイプは容易に区別でき、それぞれ異なる生化学プロセスにより引き起こされるということだ。
つまり各々、別々の治療が必要なのだ。3つの型を同じひとつの方法で治療するのは、感染症をすべて同じ抗生物質で治療するのと同じくらい、考えが甘い。
アルツハイマー病により、30年以上も、神経科学と医学の最高の知性が困惑させられてきたとはひどい話だ(病気に名前がついてから、アミロイド仮説が浮上するまでの70数年は計算に入れていない。この間、アルツハイマー病の研究はほとんど行われていないため)。
しかし、よく考えれば誰でも、私たちが間違った手法を用いていたことがわかる。特に、アミロイドを除去する前に、アミロイドが産生される原因を特定して除去するという理論が、まだ試されていないのだ。
自分が抱える遺伝子のせいでアルツハイマー病リスクが高い方、すでにアルツハイマー病の方、また愛する人がアルツハイマー病にかかった方も、この状況にひどく腹を立てて当然だ。
そして、アルツハイマー病を、絶望的でどんな治療も効かない、「全能の病」として恐れるようになっても不思議ではない。
しかし、それは過去の話だ。はっきりと言わせてもらおう。
アルツハイマー病は予防できる。またアルツハイマー病に付随して起こる認知機能の低下は、多くの場合、回復できる。
回復不可能だと長年信じられてきたが・・・
これこそ、査読を経て一流医学誌に掲載された研究で、仲間たちと一緒に私が示してきた事実だ。そして初めて、この目覚ましい結果が患者に現れたことをきちんと説明した研究である。
そう、何十年にもわたる社会通念に逆らうことになってしまうのは承知の上だ。専門家が、認知機能の低下は避けられず、回復は不可能だと長年信じてきたというのに、低下した認知機能は回復でき、実際そうしてきた患者がすでに数百人はいて、誰にでもできる手順を踏めば、認知機能の低下を防げる、と主張するのだから。
これはみなさんが猜疑心を持って当然の、大胆な発言である。しかし、早期アルツハイマー病や、その前兆である軽度認知機能障害(MCI)、主観的認知機能障害(SCI)に見られる、認知機能の低下を、我が研究所の30年にわたる研究により、初めて回復するに至ったのだ。
みなさんはこの経緯を、きっと半信半疑で読むだろう。認知機能低下の奈落の底から抜け出した患者の話も、疑ってかかるに違いない。
たとえ、「私たちが開発した個別治療プログラムで、誰でも認知機能障害を予防し、すでに兆候が出ていたとしても、その段階で精神的退化を食い止められる、そして記憶し、考える力を回復し、もう一度知的健康生活を送ることができる」と言ってもやはり、みなさんは信じられないだろう。
しかし、私が本書で解説する成果を読んで、疑いが晴れたら、現在、すでに認知機能低下の傾向がある方だけでなく、たとえまったく今はそんな兆候がない方も、どうか心を開いて自分の生活を変えることを考えていただきたい。
もちろん言うまでもなく、この本で真っ先に人生が変わると思われるのは、記憶力や認知力ですでに苦しんでいる方(と家族、介護者)だ。
これから説明するプロトコルに従えば、すでにアルツハイマー病に罹った方はもちろん、まだアルツハイマー病ではないが、認知機能障害が出ている方も、認知機能の低下を止められるだけでなく、実際に回復できることが多い。
今まで「重篤な認知症への進行は避けられない」と言われ、どの専門家からも悪い診断ばかりされて、打ちひしがれている人のために、私たちが開発したアルツハイマー病回復プロトコルが、「回復不能な、不治の病である」という絶望的な定説を、歴史のごみ箱に追いやるのだ。
今回も御一読いただき誠にありがとうございました。
文献1)デール・ブレデセン『アルツハイマー病 真実と終焉』(ソシム、監修者:白澤卓二氏・訳者:山口茜氏)
2)大熊 輝雄:現代臨床精神医学第12版 金原出版株式会社
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