前回は鉄の生命に対するプラスの観点を単純に述べた。今回は鉄が人間の老化に如何に関与するかをレドクス反応の視点から述べてみる。そもそも酸化-還元反応は生命が生きる故の化学反応である。特に、乳幼児期から青年期への発達には欠かせない化学反応である。還元鉄が酸化鉄、また酸化鉄が還元鉄となる基本は電子のやり取りであり、この化学反応が無ければ細胞、組織、個体の発達はない。
なぜ成長期を過ぎると酸化鉄(三価の鉄)が細胞内に付着し、フリーラジカルを発生させ、細胞死を招き、その結果が癌、認知症などの重篤な疾患を生み出すのだろうか。個体の成長と成熟の過程は、種の保存を存続するという地球上に生まれた生命の出現と進化の基本である。この法則に従って、生命が進化する現象となった訳である。つまり、個体は種を絶やさないために雄と雌を生み出し、脊椎動物に於いては雄雌の交尾の形を採り、種の保存を選んだのであろう。
こういう視点からみれば、種の保存、つまりヒトに於いては、交尾という行為の過程で、卵子と精子の受精により、受精卵が子宮に着床し、その後母親の胎内で受精卵は多様な分化を経て下界に現れる。その瞬間、胎児から乳児へと変化する。その第一声の鳴き声には35億年の生命誕生の重みを映しているのであろう。
酸化-還元反応(レドクス反応)は、個体の種の保存が可能に成るまで連綿と続くのである。三大栄養素、少量のミネラルとビタミンを摂取することが、個体が成長する生命の現象である。そして種の保存の役割を終えると、細胞内での活発なレドクス反応は徐々に減少し、酸化物質が沈着することで、フリーラジカルの発生が活発となり、細胞死が生まれ、この現象の結果、各臓器の癌、神経変性疾患(認知症を含む)、動脈硬化などの疾患が生じることになる。地球環境と個体の遺伝子の進化にレドクス反応が関与しているだろうと私は推察している。鉄の二価から三価、三価から二価への電子のやり取りがレドクス反応の基本であり、生命の生誕と進化は、太陽が地球に送る光量子に尽きる次第である。
残暑(酷暑)厳しい日曜日
2012/8/26 今川 正樹