今回は、ADの危険因子について前回の続きから述べていきます。
④高齢者の転居
ADの患者は、長年住み慣れた地域から離れることに強い抵抗を示します。例えば、子供たちが独立して家庭を持っている場合、一人暮らしの患者の身を案じて家族で相談した結果、子供たちとの同居を提案するのが当然であろう。しかし、子供たちの家庭に同居することになった場合、患者の行動は拒否的になります。つまりは病状を進行させることとなり、これはADの初期に危険因子として作用する。
⑤ストレス
日本の大都市を生活の場にしている場合、様々な環境が危険因子となる可能性が高い。戦後40年頃には、生活環境が大きく変化していき、昔よく言われた「向う三軒両隣」と云う言葉がなくなり、ことばの余韻または曖昧さの響きが消え、日常生活の会話に変化が現れた。つまり、生活様式がアナログタイプからデジタルタイプに移行する時代であった。以後平成の時代になると、世間話などのアナログタイプの話や会話はほとんど無くなり、「yes」か「no」で情報言語化されたデジタルタイプの生活に変化した。
この現象から、AD発症へ向かう危険因子である会話の内に秘める広さ(あうんとか察する言葉の響き)が無くなった。日本語の根底に在る言語の芸術性とか人情言葉が消えたことは、平成の世に高齢者が生活していく上で大きなストレスであると云えよう。
次回は、⑥糖尿病と心疾患について述べる予定です。
2013年3月17日
今川正樹