今年から(研究段階であるが)ADに至る診断基準が改訂された。その内訳は、症状の進行により、ADに至る段階を次のように分けた。
まずは、症状のない段階(物忘れなどの症状が無い段階をプレクリニカルステージと呼称する。)と軽度認知障害を、FAST(記憶と認知機能の障害度による分類)の分類に基づいて進行過程を診断する。それに対応してMMSE(30点から0点までの区分)を用いる。
詳細は略すが、簡単に云えば、FAST1ステージを正常(日常生活が正常にできる段階)。2ステージは極めて日常生活に変化が観られる(MMSEでは30~28点の段階)。3ステージでは軽度の記憶と認知障害が観られる(MMSEでは27点~24点の段階)。4ステージ以降の段階になるとADと診断する。
この新たな診断基準の特徴は、これまで正常とされてきた段階でADに進行していく人を見極めることと、今までの軽度認知障害を二段階に分類した点にある。(これまではMMSEの点数が29点から24点までを軽度認知障害と呼称していた。)
問題は発症前にADになる過程の人をどう判断するのか?認知症専門の臨床医であっても現段階では極めて困難である。ましてや、患者本人が鋭敏で正常な段階でADに至る過程にあると気付くのは無理である。超高齢化社会においては急務な問題であろうが、未だADの患者を完治する薬剤が無い時期に、発症前に診断を下すことは、臨床医にとって現実的に大きな壁となるであろう。
但し、救われることはこの診断基準はまだ研究過程であり、診断基準のあり方と治療法とが並行して研究されることが重要であろう。そして、長寿することの意義を考える世紀でもある。
2013/6/16
空梅雨の日曜日 今川正樹