透明な脳 ~第五章 消えていく脳⑦

今川クリニックの院長ブログ

「老人になると幼児に戻っていく」などとよく言われるが、アルツハイマー病などにより、脳が学習によって身に付けた習慣や知識を失っていくと、きわめて幼稚な行動が現れることがある。精神医学では退行現象と呼ばれるもので、口に指を近づけると、自然にそれをくわえたり、歩行が困難になった時に、背中を丸めて小さくなってしまうといった行動様式がそれである。これらは霊長類のもっとも原始的な姿にほかならない。

記憶が生活のなかでいかに重要な役割を果たしているかを知るには、アルツハイマー病で海馬が機能しなくなった人の行動様式を観察すればことたりる。皮肉なことに、私はアルツハイマー病を研究するなかで、人間がもともと持っている能力の素晴らしさを再認識した。精巧な脳の万能性を見せつけられたとでも言おうか。

自著「透明な脳」より

 

関連記事

  1. 今川クリニックの院長ブログ

    アドラー心理学と稲盛和夫先生の考え方の共通点

  2. 今川クリニックの院長ブログ

    認知症予防の3つの柱 プラス TWO(睡眠編)

  3. 今川クリニックの院長ブログ

    透明な脳 ~第二章 記憶と実生活 対象への関心と記憶の定着①…

  4. 今川クリニックの院長ブログ

    生きる

  5. 今川クリニックの院長ブログ

    科学技術の変遷と進化

  6. 今川クリニックの院長ブログ

    リコード法について改めて注目が集まっています

最近の記事 おすすめ記事
  1. 新生活

    2024.04.17

  2. 新年に寄せて

    2024.01.9

  3. 今川クリニックの院長ブログ
    新年のご挨拶

    2024.01.1

  1. 今川クリニックの院長ブログ
  2. 今川クリニックの院長ブログ
アーカイブ