このニュースは昨年から新聞に掲載されていましたが、新年に朝の情報番組で特集されてからさらに話題になりました。産経新聞 平成30年6月19日掲載記事から
超音波を脳に照射してアルツハイマー病の悪化を防ぐ新たな治療法の実用化に向け、今月中に臨床試験(治験)を始めると東北大の研究チームが19日、発表した。超音波を使った認知症の治験は世界初。軽度の患者が対象で、早ければ5年後の実用化を目指す。
人間の脳には、血液に混じって外部から異物が侵入するのを防ぐ仕組みがあり、投薬によるアルツハイマー病の治療を妨げてきた。超音波にはその制約がなく、治験で効果が認められれば革新的な治療法につながる。
治験では患者の頭部にヘッドホンのような装置を付け、こめかみ付近から左右交互に超音波を断続的に照射。患者5人で安全性を確認した後、40人を対象に3カ月ごとに照射し、1年半かけて効果などを調べる。
使うのはチームが見いだした特殊な超音波で、脳を刺激する効果がある。照射すると脳内に新たな血管が生まれ、血流が改善。アルツハイマー病の原因物質の一つとされる「アミロイドベータ」というタンパク質の生成を抑制し、症状の進行を抑えるという。
アルツハイマー病を人工的に発症させたマウスの実験では、3カ月後でも健常なマウスとほぼ同等の認知機能を維持した。手法が安価で簡易なのも特徴だ。
下川宏明教授(循環器内科学)は「少しでも有効性が認められれば、世界的な朗報だ。将来は重症な患者や、脳卒中による認知症患者にも対象を広げたい」と話している。
まとめますと軽度のアルツハイマー病患者において
超音波治療で脳を刺激→脳の血管が新たに生まれ、血の流れが良くなる
→アミロイドベータの生成を抑制→症状の悪化を防ぐ
という理論になります。
前回ご紹介したメリスロンの論文と手法は違えど、目的、理論、最終目標は同じになります。昨年度からブログで申し上げている通り、認知症は治療から予防の時代になろうとしています。平成が「認知症治療の時代」なら、新たな元号は、まさに「認知症予防の時代」になるのではないでしょうか。次回には、時代のテーマである「認知症予防」に対しての当クリニックでの新たな取り組みについてお伝えしたいと思います。
文献1)2018年6月19日 産経新聞記事
文献2)大熊 輝雄:現代臨床精神医学第12版 金原出版株式会社