透明な脳 ~第五章 消えていく脳⑥ アルツハイマー病の症状

今川クリニックの院長ブログ

アルツハイマー病の症状として、すでに退職して数年経っている人が、ある朝突然ネクタイを締め鞄を下げて会社へ向かうというようなことも珍しくない。会社を退職したという記憶が脳からすっぽりと欠落していて、しかも海馬が機能していない場合こういうことが起こり得る。しかし、家を飛び出してみても会社へ行き着く道順が分からない。結局、道に迷って家族や警察に保護されることになるのである。

さらにアルツハイマー病の症状が進むと、「異食」や「不潔行為」が現れることがある。「異食」というのは、生ゴミや輪ゴムなど、食品ではないものを食べる行為である。「不潔行為」というのは、トイレではないところで大便をして、それを自分の身体に塗ったりする行為である。ここまで病状が進行すれば、家庭での介護は難しい。

アルツハイマー病の症状をあげれば、それだけで一冊の本が書けそうだが、病状のメカニズムは同じだ。すなわち正常な脳が徐々に崩れていくことによって、人間としての特性を失っていくのがこの病気である。記憶力は言うまでもなく、記憶力に依存している思考力や判断力、観察力、想像力など人間の根本的な能力が喪失してしまうのだから、見方によっては非常に残酷な病気だ。

自著「透明な脳」より

関連記事

  1. 今川クリニックの院長ブログ

    ケトフレックス 認知症予防食の注意点

  2. 今川クリニックの院長ブログ

    新年早々の大ニュース「眩暈の薬で認知機能改善」

  3. 今川クリニックの院長ブログ

    日本人に多い認知症5疾患のまとめ<認知症予防のため知っておき…

  4. 今川クリニックの院長ブログ

    透明な脳 ~第三章 風景を解釈する脳 実体験と追体験①

  5. 今川クリニックの院長ブログ

  6. 今川クリニックの院長ブログ

    爆発

最近の記事 おすすめ記事
  1. 新生活

    2024.04.17

  2. 新年に寄せて

    2024.01.9

  3. 今川クリニックの院長ブログ
    新年のご挨拶

    2024.01.1

  1. 今川クリニックの院長ブログ
  2. 今川クリニックの院長ブログ
アーカイブ