認知症を分類すれば、大脳皮質に起因する変性疾患と脳血管性認知症の大きく2つに分類され、さらに大脳皮質に起因する変性疾患には、アルツハイマー病(AD)、レビー小体病、さらに前頭葉側頭葉型(FTD)があり、脳血管性認知症とは、大脳に血液を送る動脈が脳内出血か脳梗塞により半身麻痺を生じ、且つ特に左右脳が先述の様になった状態をそう呼称する。日本では現在、上記4疾患の中でも、FTDの診断が増え続けている。
認知症の治療法は変性疾患に関しての対処療法のみであり、原因療法は世界的にみても未だ無く、特にFTDでは対処療法も無い。現在、医薬品で発売されている認知症薬は4種類であり、何れの薬剤も進行を抑えるものであり、早期に物忘れに気付いても効果には個人差があり、またそれぞれの薬剤には効果だけでなく必ずや副作用を伴うものである。
基本的に何れの疾患であれ、患者を90人とすれば、著効例は30人、無効例が30人、そしてほどほどに効くのが30人と云う前提がある。ましてAD患者には上記の法則は通用しない。例えば、ADに関して云えば、薬の効果がある人でも進行を抑えるが精一杯であり、効果がない場合は、やむを得ず介護施設か特別養護老人ホームに入るかどうか苦渋の決断を迫られることもある。施設に入るには月々の費用が必要であり、認知症患者の家族にとっては大きな負担となることは間違いないであろう。
話を戻すと、認知症の場合、薬だけで患者に対応するには限界がある。一体何をすればよいのか。ヒトの大脳皮質には前頭前野、運動前野、運動野があり、この連合野には会話とか書字を行う神経細胞の数が圧倒的に多い。ただ、早期では会話とか書字能力が守られている。薬剤のみに依存することなく、私見ではあるが、笑うことや認知症を悪化させるストレスを患者に与えないことも進行を抑える要因であろうと考えている。晩期に至るまで患者の気持ちは常に不安感を抱いているだろう。
梅雨の風と雨の強い日2012年 今川正樹