透明な脳 ~第五章 消えていく脳④

今川クリニックの院長ブログ

脳にある海馬が一時的に記憶を蓄えた後、それを長期保存するために、脳のほかの部分へ情報を伝達することはすでに述べたが、海馬が機能を失ったとなると、記憶を一時的に保存することすらできなくなる。

たとえば、アルツハイマー病になって海馬が機能しなくなると、初対面の人は記憶に残らない。そのためその人に再会しても、すでに面識がある人だと分からない。本人はそのことに気付いていないので、会うたびに「はじめまして」と挨拶をしたりする。また、自分が食事したことも忘れて、食後すぐに「ご飯はまだか」と食事を要求することもある。

海馬が損なわれると、脳に入ってきた情報がそこで遮断されてしまうので、新しいことが覚えられない。そのためにある時点から、時間がストップしたような状態になってしまう。実際には海馬が徐々に衰えていくから、それに従って段階的に記憶力も劣っていくことになるのだが、完全に新しいことが記憶できなくなれば、世界そのものの受け止め方が変わってしまう。

自著「透明な脳」より

関連記事

  1. 今川クリニックの院長ブログ

    アルツハイマー病とストレス及びうつ病

  2. 今川クリニックの院長ブログ

    認知症の病と闘っている患者と家族の苦闘

  3. 今川クリニックの院長ブログ

    愛情と医療の狭間

  4. 今川クリニックの院長ブログ

    ホルモンは認知機能の最適化に重要な役割 <リコード法の基本と…

  5. 今川クリニックの院長ブログ

    アルツハイマー病治療の行き詰まり

  6. 今川クリニックの院長ブログ

    なぜ、マスコミは認知症を取り上げることが多いのか

最近の記事 おすすめ記事
  1. 焼き鮭、豆腐、ゆで卵、ヨーグルト、牛乳などのたんぱく質を含む食材
  2. 石けんで丁寧に手を洗う様子
  3. こころとからだ 疲れていませんか?
  4. 高齢者とてんかん
  5. 在宅生活をサポート 精神科訪問看護のご紹介
  1. 今川クリニックの院長ブログ
  2. 今川クリニックの院長ブログ
アーカイブ