アドラー心理学に欠かせない価値観として「共同体感覚」という考え方があります。アドラー心理学を学ぶ者にとって少し理解しにくい部分になりますが、それは「人は共同体への所属感・貢献感で幸せを感じる」 というものです。そして、「より大きな共同体からとるべき行動を考える」 家族、地域、会社、国、人はいろんな共同体に属していますが、それぞれは対立するものではないはずで、より広い共同体から物事を見れば「自分の役割、責任」「相手の役割、責任」など視野が広がることで、悩みが解決することがあるというものです。抽象的で一見難しそうですが これは、稲盛先生のお言葉から考えますと理解しやすく、
「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること、この経営理念を実現する」
「JALの再建では「リーダーが私利私欲に走らず、利他の心で判断すること。要は人間として正しくあることを、経営でも考えなくてはいけませんよ。」と話すことから始めました。するとエリート幹部たちは、「なんでそんな当たり前のことを教わらなきゃならんの」という顔をする。それでも私は、「知ってはいるでしょうが、自分のみについてはいないでしょう。」と懲りずに何回も話し続けました。本当に納得してもらうまでに、50回くらい塙失したと思います。」
「アメーバ経営。組織をアメーバと呼ぶ小集団に分けます。各アメーバのリーダーは、それぞれが中心となって自らのアメーバの計画を立て、メンバー全員が知恵を絞り、努力することで、アメーバの目標を達成していきます。そうすることで、現場のひとりひとりが主役となり、自主的に経営に参加する「全員参加経営」を実現しています。
「つねに前向きで建設的であること。感謝の心を持ちみんなと一緒に歩もうという協調性を有していること、明るく肯定的であること。善意に満ち、思いやりがあり、優しい心を持っていること。努力を惜しまないこと。足るを知り、利己的でなく、強欲ではないことなどです。」
以上、本当に少しだけですが、稲盛先生のお言葉を紹介させていただきました。アドラー心理学で取り上げた問題点、対人関係での悩みを、アドラーは勇気ということばで自分と周りを巻き込んで前向きに考えることで解決しようとし、その目標は共同体への貢献により幸福感を味わう事でした。それを自ら禅の教えと感謝の心、利他の精神をもって、実践し、周りに大きく影響を与え、社会に大きな貢献を果たされたのが稲盛先生であったように愚考しております。このように、日本人には馴染みがあってかつ、異文化交流が進む、オリンピック、万博前の日本に重要な考え方の指標であるアドラー心理学、を御紹介させて頂きました。 今後も、話題になった精神科関連、心理学関連をとりあげ、現代の社会問題と融合してご紹介できたらなと考えております。
参考:現代臨床精神医学 金原出版株式会社 大熊輝雄
参考:「Der Sinn des Lebens(生きる意味)」アルフレッド・アドラー
参考:嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え ダイヤモンド社 岸見 一郎
参考:勇気の心理学 Discover 永藤 かおる