現在の地球上に於いて鉄不足の地域がある。アフリカの赤道部やインドでは鉄不足の為に脳の発達障害が増えている。また日本に於いても同様に、鉄不足が増加傾向にあるという。なぜそういう報告があるのだろうか。もし人体に鉄がなければ、種の保存どころか個体そのものが生きられない。
動物の進化の過程に於いて、海生動物が陸上に棲息する試みが行われた。陸上にはすでに酸素が大気圏に満ちていた。この酸素を利用しなければ、陸上動物の存在と進化はなく、陸上に上がろうとする試みが果てしなく続いただろう。進化の過程の結果、海生動物は陸上に生きる方法を生み出した。重要な点は、陸上で動物が棲息する為には、海生動物と異なり重力に耐える陸上動物の細胞内での新陳代謝とエネルギーが必要であったと言える。
陸上動物の血液、特に赤血球の一部を構成するヘモグロビンには鉄とヘム色素との結合が何より必要であり、この結合がヘム鉄となり、酸素との結合率が海生動物より格段と上がった。
この進化が陸上動物の進化をさらに加速した。ヘモグロビン即ち重力に耐え抜くには鉄が必要不可欠である。この進化が四足動物から二足歩行への可能性を生み出した。
ところで、人体が必要とする鉄の量は、赤血球内のヘモグロビン構成する重要な物質、ヘム鉄が人体の中で40~60%であり、他は肝臓、筋肉、心筋などに配分されている。ここでいかに鉄が肺と末梢での酸素のやり取りが重要であり、細胞内のミトコンドリアでエネルギーを生み出し、そのエネルギー(ATP)が新陳代謝に利用されることで陸上動物の進化がさらに進み、二足歩行が出来る人類の進化の果てに現在の私達人類が存在している。
表題にもあるように鉄の特性には還元鉄と酸化鉄がある。還元酸化の化学反応(レドクス反応)は老化が始まる時点より細胞内で減少することから、老化が進むにつれ、酸化鉄(三価鉄)が細胞内に沈着するようになる。次回は三価鉄を生体がどう扱うかを述べる。
酷暑の夜 今川正樹
2012/7/22