ADの基本的な病態は、頭頂葉と側頭葉の接する部位にアミロイドが沈着すること、神経内の微小血管に在る微小細管にリン酸化タウが多く沈着することである。この二種類の物質が沈着することにより、脳の細胞が死滅する。この病理学所見からアルハイマー病と呼称されている。
一方、脳血管性認知症について述べると、まず脳に血液を送る血管は3タイプに分類される。内頚動脈が前大脳動脈と中大脳動脈に分かれ、椎骨動脈から後大脳動脈に分類される。これら3動脈が脳へグルコースと酸素を送り、神経細胞の新陳代謝を行う。
しかしながら、65歳以上になると大半にアテローム性動脈硬化がみられ、血管の内空が狭くなっているため、脳へ血流が充分行き届かなくなる。酸素を最も必要としている脳の神経細胞が酸素欠乏状態になり、神経細胞死に至る。
これらの疾患を鑑別することは時々困難を伴うことがある。例えば、中動脈が梗塞あるいは脳出血を起こした場合、それは一目瞭然であろう。しかし、ラクナ梗塞は65歳以上の健康な老人にも見られる。また、ADの患者でラクナ梗塞が無い患者は極めて少ない。
認知症の診断は臨床経過によることが多いと思われる。私見によれば、脳血管性認知症のタイプで、ピーターソンの分類におけるMCI(mild cognitive impairment:軽度認知障害)の段階であれば、薬剤の反応が速く初診時から比較すると認知機能の改善が観られるのが特徴であると考えている。
しかしながらADは根治する治療法が無いため、如何に進行を止めるかにある。何れにせよ、高齢化が認知症の危険因子であろうと私は考える。
2013/7/16 異常気象であろうか
今川 正樹