人間が笑ったり、泣いたり、怒ったり、驚いたりするのは、すべて脳の働きなのである。脳を解明することが、人間を解明することだといっても過言ではない。特に心理学の分野においては近年、脳科学との関連のなかで人間の心理や知能の発達を捕えていく傾向が顕著になっている。心や意識の発生源が脳である事実があきらかになった以上は、当然のことである。
本書はだれにでも理解できるように、専門用語を極力さけて、やさしく書き下ろした脳についての本である。特に発達心理学との関連のなかで、人間の知能に関して考察した。人間の知能というものは、遺伝によってのみ決まるのではなくて、いかに外界と交わるかで発達もすれば、停滞もする。脳は外界に順応する可塑性を備えている。また、脳を総合的に理解できるように、脳が崩壊する過程がみえるアルツハイマー病や、脳の最高の活動である芸術についても言及していく。
自著「透明な脳」より