笑いとは何かという問いは、脳の研究者のあいだで古くから繰り返されてきた。なにか滑稽なものを見たり、嬉しいことを体験すると、ひとの顔には笑みが浮かぶ。頬の筋肉が目尻の方向へ吊りあがり、口が三日月のかたちに開いて、次の瞬間に喉から、「ハハハハ」とか「ワハハハ」という声があふれでる。これが笑いと言われている現象だ。逆にひとは怒りにかられると、顔から笑みが失せて表情がかたくなる。これは脳科学の視点からみればどういうことなのだろうか。
こうした疑問を見つけ出す作業は複雑をきわめていて、現代でもはっきりとした答えは分かっていない。しかし、笑いが脳の働きによって生じ、心のバロメーターであるということは、世界中の科学者が認めるところである。脳というのは、人間がもつあらゆる機能を統括する臓器であり、その機能ははるかにコンピューターを凌いでいる。
自著「透明な脳」より