軽度認知障害(mild cognitive impairment:MCI)

今川クリニックの院長ブログ

軽度認知障害とは、正常加齢と認知症の限界領域であると定義されている。

近年MCIも注目されており多くの臨床的、疫学的研究が国内外で実施されている。

厚生労働省の平成23年度科学研究費による班研究(主任研究者:朝田 隆 筑波大学教授によれば、65歳以上の高齢者における認知症の有病率は推計15%であり、2012年度の人口推計から認知症高齢者の推計値は約462万人と報告されている。年代別にみると75歳未満が10%未満なのに対し、75歳以上の後期高齢者になると有病率は急増する。

85歳以上では40%を超え、95歳以上では80%以上となることが推計されている。

そして、MCIの推定有病率は13%であり、約400万人がMCI高齢者と推計されると報告されている。別の研究では、MCI高齢者の約半数は5年以内にアルツハイマー病(AD)に移行することが明らかにされており、正常高齢者とは明らかに異なる高い発症率を示している。一方でMCI高齢者のなかには、正常認知機能に回復するものも含まれ、いわば予後の多様性がひとつの特徴とも言える状態であろう。現時点のADの根本治療法のない状況では、可塑性が大きいとされるMCIの早期診断と早期介入によるAD発症予防あるいは発症先送りが認知症予防の視点から極めて重要である。現時点ではその具体方策としては薬物療法ではなく非薬物療が一般的には推奨されているが、確立したものはまだ提唱されていない。このような状況であるからこそ、当クリニックでは、MCI高齢者に対処療法として鉄剤ビタミンの投与を採用しており、この治療法は英国の医学雑誌「Lancet」に掲載され注目を集めた。実際に臨床の現場で鉄剤ビタミン療法に携わっていると特にその効果を実感したご家族から感謝されることが多い。ビタミン剤は、特に副作用もなく、尿が黄色くなり独特の匂いがあるくらいであるが、鉄剤は便が黒くなる、便秘になりやすい、定期的な採血によるコントロールが必要になるなどの一面もあるが、そのデメリットを上回るメリットを感じられているご家族が多いのだと推察している。

重ねて申し上げるがMCI高齢者に対する鉄剤ビタミン療法は、対処療法であり、認知症発症の先送りである。がしかし、その先送りされた数年がご家族にはとても重要である。数年の間に住宅事情、同居なども含めた環境調整、介護保険などの書類申請、その後デイサービス、ショートステイなどの利用準備、あと特に大事な心の準備である。

これらすべてに、先送りされた数年はとても大きな役割を果たすことになります。

またこの期間に認知症予防への気づきと生活習慣の変容をもたらすことから、不利益より利益がはるかに大きいと判断されているのだと推察している。

文献1)島田 裕之:基礎からわかる軽度認知障害 医学書院
文献2)大熊 輝雄:現代臨床精神医学第12版 金原出版株式会社
文献3)一宮 洋介:認知症の臨床 最新治療戦略と症例 メディカルサイエンスインターナショナル

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