今回は症例として、一人の患者の臨床経過に関し、述べてみます。
患者は、仕事上のミスを周囲に指摘されるようになり悩んでいました。また、家族も患者が忘れやすいことに気付いていたようですが、踏ん切りがつかないまま、家での行動を見ていました。ある日、このままではいけないと判断し、家族と一緒に当院に来られました。診察と心理テストから軽度認知障害と診断をしました。且つMRIと脳血流を施行し、臨床診断と合致しました。薬物療法(鉄剤とビタミンB群の併用)と家族のサポート(精神療法)から治療を開始しました。以後病状が改善し、仕事も出来、来院時の症状は消失し、10年の経過へて現在も現役で仕事をされています。
しかし、このようなケースばかりではではありません。薬物は、以前にも記載しましたが、著効例が30%であり、症状の進行を何とか抑えられるのが30%、薬物に脳(身体をも含める)が反応しないのが30%であるという現実を、患者及び家族が認識することが重要なことだと考えて、今日まで診療を行って来ました。
認知症と云う疾患、アルハイマー病はまだしも対症療法として製薬会社から4種類の薬が出ていますが、老年期の患者の場合、脳のみではなく、多臓器の機能を調べておく必要が大切なことだと私は考えています。
何度も述べていますが、若年性及び老年性認知症であれ、本人を含めて家族が「あれ?」と感じた場合、専門医(多臓器も診る医師)にかかることが大切なことです。正常に見えても、「あれ?」と感じれば、早急に専門医を受診して下さい。
ところで、今川クリニックのホームページに問診票が載っていますので、早期発見の参考にして下さい。話は変わり当院の自画自賛ですが、当院では患者の約30%が5年以上継続して通院されています。
年々、地球環境が悪化の方向に向かっている状況が示唆することは、癌、脳梗塞、特に高齢者の場合、免疫力の低下、認知症などの疾患が年齢を問わず増加傾向にあります。文明開化以来、明治時代の(地球環境を含め)社会環境と平成の時代とは大きく変化していること、それは私達の足元にあることです。
平成25年/1月/6日 今川正樹