前回は、早歩きが認知症予防にいいという研究成果がいろいろ出ているというお話をしてきました。
今回は、さらに詳細に解説していきます。今回もよろしくお願いします。
ポイントは血流に!早歩きの効果とは
早歩きが海馬の体積を増やす理由として考えられるのが、血流の増加です。普通の歩きと比べると、早歩きをしたときには運動量が増すだけでなく、脳の認知機能もより多く使われると考えられます。なぜなら、早歩きの方が周囲の人や物を避けるための注意をより多く払うからです。そのため、脳へ酸素や栄養を運ぶ血流が増加するのです。
血流が増すと脳内にBDNF(脳由来神経栄養因子)と呼ばれる物質が分泌され、神経細胞の数や、つながりが増加することで海馬が大きくなると考えられます。
では、どのくらい早歩きをしたら良いのか?番組でおすすめしたのは、一日20分の早歩きを目指そうということ。中之条での研究から、20分以上の早歩きをしている人は認知症などの病気にかかりにくいことが明らかになりました。しかも、続けて20分歩かなくてもOK!何回かに分けて、一日の合計が20分になればいいんです。
スピードはいつも歩く速度の2割増し。目安としては息が弾むくらいの速度がおすすめです。自分がどれくらい早歩きをしたかを記録してくれる活動量計も販売されています。
早歩きは、運動の強さでいえば”中強度”に当たります。実は、2019年にWHOが発表した、認知症になるリスクや認知機能の低下を防ぐためのガイドラインでも、健康的な食事や禁煙に加えて”中強度の運動”が推奨されています。
早歩きのコツ教えます!
「一日20分の早歩きをしよう!」といっても、毎日続けるのはなかなか難しいもの。どのように習慣化したらいいのか、その知恵も今回、中之条の住民から発見しました。
いつも通る道を時間短めに歩く
自分がいつも通る道は、だいたいどのくらいの時間がかかるかわかるもの。その時間を少し短めに歩くことを意識してみて下さい。
≪目安≫
5分→4分ちょっと?10分→8分半15分→12分半?20分→16分半
一日8000歩を目指して歩く
之条で20年間住民の活動を記録したデータから、多くの人に共通する特徴が明らかに!
一日に8000歩を歩く人の多くが、20分の早歩きを達成していました。つまり、意識して8000歩を歩こうとすれば、自然に20分ほど早歩きをするようになるというのです。
今、歩数は万歩計・ウェアラブル端末・携帯のアプリでも簡単に調べることが出来ます。また、歩数を計測する機械を持っているだけで、「一日の歩数が2000歩増える」という研究結果もあります。ぜひ自分の一日の歩数を意識してみて下さい。
※早歩きをするときは無理はせず、転倒や交通事故などには十分注意して下さい。
最後にまとめとして、ポイントをおさらいしましょう!
ここがポイント!
★一日20分の早歩きをすると、認知症をはじめ、さまざまな病気になりにくいことが明らかに
★5分ずつのこま切れでもOK!大切なのは一日に合計20分早歩きすること
★早歩きのコツ
その1.いつも通る道を時間短めに歩く(10分を8分半で歩くのが目安)
その2.一日8000歩を目指して歩くと、早歩きは自然と20分に!
コロナ禍の自粛が続き、運動不足の方も大勢いると思います。
これから運動の秋ですから、しっかり早歩きして、脳の若返りを促しましょう!
今回も御一読頂き、誠にありがとうございました。
文献1)2021年7月17日 NHK 金のベンリ堂
文献2)大熊 輝雄:現代臨床精神医学第12版 金原出版株式会社