田舎で暮らしてきた老人が、都会へ移り住んだとたんに物忘れがひどくなったという話はよくあるが、これもやはり環境の変化になじめずに、ストレスをためこみ、それが脳を破壊した結果である。
ちなみにストレスという場合、大別して心理的ストレスと物理的ストレスの二種類がある。心理的ストレスは説明するまでもなく、心配事や怒りなど、心理的なプレッシャーが起因となっているものをいう。一方物理的ストレスというのは、単純作業など反復運動によって生じる肉体的苦痛が起因となる。
いずれにしても脳は、環境に非常に深く影響される臓器なのである。人間がさまざまな気候に順応したり、洗脳が可能になるのも、このような脳の性質によるものといえよう。可塑性こそが脳の最大の特徴なのである。
自著「透明な脳」より