透明な脳 ~第三章 風景を解釈する脳 「記憶する能力」と人類の進歩②

今川クリニックの院長ブログ

たとえば太平洋戦争の末期に、米軍が海上から近付いてきて上陸する光景を目にしたひとにとっては、きらきらと光る夏の海は決して旅情をさそいはしないだろう。海面の反射すら炸裂する黄燐のように見えるかもしれない。ところが戦後の豊かな社会で育った世代にとって、青い海は楽園として映る。マスコミを通じて、脳の中にインプットされた観光地と海岸のイメージが記憶として定着しているからだ。

もちろん沖縄戦の経験者であっても、戦後、沖縄の海と海岸は観光地としてのイメージを植え付けられているから、海を見てどう感じるかという問題に対して、明確な一線を引くことはできない。あるひとは太陽の反射を美しいと感じた瞬間、すぐその後に恐怖感に見舞われることもありうる。

自著「透明な脳」より

関連記事

  1. 今川クリニックの院長ブログ

    生命と老化(4)

  2. 今川クリニックの院長ブログ

    アルツハイマー病の早期発見と最適な治療法2

  3. 今川クリニックの院長ブログ

    透明な脳 ~第二章 記憶と実生活 対象への関心と記憶の定着②…

  4. 今川クリニックの院長ブログ

    リコード法の基本と尼崎療法の共通点(3)

  5. 今川クリニックの院長ブログ

    ホルモンは認知機能の最適化に重要な役割 <リコード法の基本と…

  6. 今川クリニックの院長ブログ

    WHOの認知症予防ガイドライン、ビタミン療法の位置づけとは?…

最近の記事 おすすめ記事
  1. 新生活

    2024.04.17

  2. 新年に寄せて

    2024.01.9

  3. 今川クリニックの院長ブログ
    新年のご挨拶

    2024.01.1

  1. 今川クリニックの院長ブログ
  2. 今川クリニックの院長ブログ
アーカイブ