透明な脳 ~第三章 風景を解釈する脳 実体験と追体験②

今川クリニックの院長ブログ

小説、記録、その他のものを読むことは、実体験ではないが、体験したのと同じように脳に働きかけるのである。このことは映画についてもいえる。戦争を知らない若者が、ある戦争の映画を見たとする。そのことで若者は戦争を追体験する。それが、すでに脳にインプットされている学校で習った戦争に関する知識と結びついて、戦争に関する概念を新しく作りかえるのである。

ただ、映画と小説には次のような違いがある。映画は映像そのもの、ずばり脳にインプットするが、小説は直接映像として脳に働きかけることはない。小説は文字言葉を通して脳に作用する。つまり、読み手はいったん文字言葉で受けたものから、自ら映像を作り上げなくてはならない。これが想像力である。読み手それぞれが自分で作り上げた映像が、感情や思考をゆさぶるのである。

このように脳は実体験と追体験を織りまぜながら、ものごとの新しい概念を作る働きをする。その結果、人格の形成に影響を及ぼすのである。

自著「透明な脳」より

関連記事

  1. 今川クリニックの院長ブログ

    アドラー心理学 II ~自分を変えるのに手遅れはない~

  2. 今川クリニックの院長ブログ

    知っていますか?認知症予防の日

  3. 今川クリニックの院長ブログ

    納豆やみそは特に循環器疾患と関連がある?

  4. 今川クリニックの院長ブログ

    認知症とマスコミ

  5. 今川クリニックの院長ブログ

    今だからこそ読んでほしい、認知症専門医がおススメする名著⑥ …

  6. 今川クリニックの院長ブログ

    透明な脳 ~はじめに②

最近の記事 おすすめ記事
  1. 今川クリニックの院長ブログ
  2. 今川クリニックの院長ブログ
アーカイブ