生き物が地球上に生誕した限り、その存在はいつか生の終焉を向える。この現象は地球上に生命が生まれた時点からの法則である。法則とは固い表現であるが、猿人から二足歩行に進化したヒトという生き物においても、生を受けた限り死から逃れることは出来ない。
このことは、化石人類学を専門に研究している人々には知悉されている。
太陽系が生まれた頃、太陽を中心に回転する惑星は質量と重力の法則に沿い、その質量によって太陽からの距離が決定された。原始太陽系が先述の法則により時間の流れと共に変化した結果、現在の太陽系がある訳で、さらに時間が流れることで現在の太陽系も変化することは充分に理解できる。
原子・分子などの物質は、少なくとも我が銀河系の宇宙空間において生々流転を繰り返しており、それはハッブル宇宙望遠鏡からも観察されている。
話を戻すと、原子、分子の化学反応の連続の果て、たまたま地球上に生命発生の原点となる化学反応、即ちレドクス反応が生じ、その結果、原始生命が生まれ、ここから生命の進化が始まった訳である。私見に於いて、レドクス反応、即ち酸化-還元反応の繰り返しが生命の進化を促し、より複雑巧妙な生き物を生み出したと考える。その結果、現在、地球上の生き物の頂点に立つヒトが生まれたのである。ヒトはホモ・エレクトスからホモ・サピエンスを経て、現在のホモ・サピエンス・サピエンスと命名されている。つまり、ヒトが進化を繰り返し、文明を生む人に進み、人が人間社会をより高度にするシステムを生み出したと言えるだろう。その結果、人、言い換えれば個人の個性は消え去りつつあり、原子のような存在に向かっていると考えている。
こうした流れの中で、老衰で人生の終焉を迎えること、即ち寿命としての病いの象徴がアルツハイマー病であると考えている。
2012年3月8日 木曜日 クリニックにて
今川正樹