治療法(Ⅰ)予防と早期発見・早期治療
先にも述べた通り、早期発見は困難であるものの重要なポイントでもあります。(早期の定義として、これを満たすマニュアルは一般的にDSM-III,ICD-10が診断基準となっている)
早期にと云っても、臨床医からみると、大半晩期(65歳)以上の方が家族同伴で来られることが多いのです。若年の方では、単独にて訪ねて来られる事も多く、他者からの指摘(行動に異常が見られる・何度言われても直ぐに忘れる等)を受け来院されるのが現状です。
ADは高齢者に多いことから、加齢がこの病気を誘発する危険因子の一つであると考えられます。日本国は世界に例を観ない長寿国であり、当クリニックにおいても、100歳を超える患者が来院しています。先の件を踏まえ、癌・高血圧・動脈硬化・糖尿病、それに誘因されて心筋梗塞などの疾患を乗り越え、その果てにADになることは「疾病」なのか又は「寿命」なのかを考えさせられます。
さて、アルツハイマー病(以下AD)の発症をアミロイド仮説に従えれば、脳の側頭葉と頭頂葉の中間辺りにアミロイド蛋白質の一部が異常な形、即ち病理学所見ではAβ42が沈着することから始まると云われています。この沈着は、AD発症から遡ってほぼ15年前に始まるのです。
発病(=Aβ42の沈着)するまでにその予防策はないだろうか。
ここで、予防策を考えるにあたり、若年の人(19-64歳)と老年の人(65-85歳)とに分類して予防の対応を考えます。
若年の人が予防すべき点は、家系を辿り老衰も含めてADがあるかどうか調べることであり、もし有れば専門医に相談することが好ましいと考えます。
早期発見には、悪いストレスにさられているかどうか思い考えることが肝要であり、自己の仕事・子供も含め対人関係・睡眠・食生活に偏りがあるかないを調べることです。今後更に地球環境が悪化する中では、悪いストレスを探し、そのストレスを避ける必要があります。
AD予備軍の人柄は、実直生真面目な性格であると云えます。
現在の社会人はあらゆる面で、コンピュータ化せざるを得ない環境の中で生きています。これによりデジィタル人間が増加し、芸術家=アナログ人間が少数化され、この現象がAD予備軍を作っている。これからは、デジィタルとアナログの要素をバランス良く維持する事が非常に大切なことであると考えています。
次回は、老年期の人を含め、食生活と薬剤のことを考察します。
晩秋のビルの中で
2012年11月20日
今川正樹