もし上司から近頃、仕事のミスが多く、また何度も同じことを聞く場合が多いじゃないのかと言われ、とたんに頭の中が白くなってしまった。
テレビなどで報道される若年性アルツハイマー病の始まりではないかと思い、早速、認知症専門の病院を訪ねた。
『ここは若年性アルツハイマー病の検査はしますが、若年性アルツハイマー病の治療はしておりません。それでよろしければ検査はします。』
『治療は頭からしないのですか。』
『結果が決まればそれを専門にしている病院を紹介致します。』
頭が混乱している彼にしてみればお先真っ暗である。そこの職員の話によればアリセプトという名の薬しか日本ではないそうである。これが効かなければ終わりということになる。
若年性アルツハイマー病は65歳以上の老人に発症する老年型アルツハイマー病と同じく脳が進行性に壊れていく難病である。彼の心中を巡る数々の失敗が走馬灯のように光る。どうすればいいのだろう?未だ30代の身でありながら路上に座り込み頭を抱えてしまった。