ホルモンは認知機能の最適化に重要な役割 <リコード法の基本と尼崎療法の共通点(5)>

今川クリニックの院長ブログ

前回は、炎症反応、ストレスのお話をしました。 その際にストレスに係る、コルチゾールというホルモンについてお話ししました。実はホルモンも認知機能の最適化に重要な役割をはたしています。今回はホルモンについていくつかお話ししてきたいと思います。

多くのホルモンは特にシナプスの形成と維持をサポートすることにより、認知機能の最適化に重要な役割を果たします。ホルモンレベルが低下し、バランスがシナプスを破壊する側になると認知力は低下する。特に重要なものを以下にお話ししていきます。

アルツハイマー病(認知症、軽度認知機能障害、主観的認知機能障害)では一般的に甲状腺機能が低下している。 甲状腺機能は代謝速度にも影響し、心拍数や頭の冴えにも影響する。 なので甲状腺ホルモンの状態を知る事は必須。 甲状腺ホルモンの状態は「遊離T3」「遊離T4」「リバースT3」「TSH(甲状腺刺激ホルモン)」 のレベルを測定する事で評価できる。 方法は簡単で自分の代謝スピードは「基礎体温」を測れば簡単に測定できる。

(方法)

(1)夜寝る前に体温計をベットの隣に置いておき、起床後直ぐに測れる状態にしておく。

(2)朝起床後直ぐ(ベットから出る前)に体温計で体温を測る。

(3)体温が36.6~36.8度の間にあれば問題ないが、体温が低い時は甲状腺機能の低下の可能性がある。

以前にお話しした栄養素、炎症だけでなく、ホルモン値の測定も非常の重要です。甲状腺ホルモンの基準値を以下に示します 。

遊離T3(活性型で寿命約1日の甲状腺ホルモン):最適レベルは3.2~4.2pg/ml

遊離T4(寿命約1週間の貯蔵型ホルモン):最適レベルは1.3~1.8ng/ml

リバースT3(甲状腺の活性化を阻害):最適レべルは20ng/dl未満

TSH(甲状腺刺激ホルモン):最適レベルは2.0μIU/mL未満

多くの医師がチェックするのは「TSHのみ」。TSHだけでは甲状腺機能が低下した患者を多数見逃す。 TSH高値は甲状腺機能の低下を示す可能性があり、一般的な正常値は0.4-4.5μIU/Lであるとされているが、2.0を超えていれば、全て検討する必要がある。

しかし実際にはTSHが正常値でも甲状腺機能が低下している可能性がある為、追加の甲状腺ホルモン検査を行う必要があります。

性ホルモンのエストロゲンも、認知症の予防において決定的な役割を果たしている。 エストロゲンとプロゲステロン、エストラジオールとプロゲステロンの比率も重要。この比率が高いと「物忘れ」と「記憶力の悪さ」に関連する。

(目標値)

エストラジオール:50~250pg/mL

プロゲステロン:1~20ng/mL

エストラジオール/プロゲステロン比:1/10(症状により最適化する)

性ホルモンのテストステロンはニューロンの生存をサポートする。(男性の方がより高濃度)

テストステロン濃度が低い(全体最下位1/5に該当するレベル)

男性はアルツハイマー病のリスクが高い。

(目標値)

総テストステロン濃度=500~1000ng/dL

遊離テストステロン=6.5-15ng/dL

今回は、認知機能に係る特に重要なホルモンをお話ししました。 これらのホルモンは認知機能ばかりでなく、精神症状に係るものとして、精神科でも有名なホルモンになります。特に、甲状腺ホルモン、エストロゲンは、女性において特に更年期障害の時期に重なり、大きく変動します。ただの更年期障害とあまり気にせず放置すると将来において認知症発症のリスクを高めることにつながることもあるかもしれません。

気になることがあれば気軽に当クリニックへご相談ください。

今回も御一読いただき誠にありがとうございました。    

参考 

現代臨床精神医学 金原出版株式会社 大熊輝雄

 アルツハイマー病 真実と終焉 ソシム デール・ブレデゼン    

東洋経済オンライン2018年2月16日。5月11日

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